戦争介入編 第11話 前 カリスマ性でございますか?
通信石の音量はそれほど大きくはないから、周りの人に聞かれる心配はないと思うけど、アサの悲しそうな表情を見る限り、アサには聞こえてるか、察したかもしれない。
はぁ……。
「ソニア、今どこにいるの?」
「本部の会議室の外にいます」
「みんなを会議室に集められそう?」
「もう集まっています」
「じゃあ、みんなにも聞こえるように、通信石の音量を上げてくれる」
「わかりました」
私も会話が周りに聞かれないように、アサの手を引いて移動した。そして、アサにも聞こえるように音量を上げた。
「みんな、ちゃんと聞こえてる?」
「ああ」
「聞こえてるよ」
「私はしばらく戻れないよ」
「「「え!?」」」
「でもリリーナがいないと」
「理由を聞いてもいいか」
「私用だよ」
「その私用というのは、戦争を止めるより大事なのか」
「うん、まあ」
なんかアサが啜り泣き始めたけど。
「リリーナ様!?」
「幻滅した?」
「滅相もございません」
「でも、別に私がいなくても大丈夫だと思うよ」
「いや、リリーナがいないと翻訳が」
「ソニア、もう人間語できるよね」
「え!? あ、はい」
「なら問題ないじゃない?」
「でも、停戦させるのに、リリーナの知恵が……」
「知恵ならもう絞り尽くしたよ。もう戦争を介入できるほどの戦力は集まった。あとは実行するだけ」
「いや、リリーナがいないと」
「甘えるんな!!」
「「……っ!」」
「誰かがいないと回せない組織なんて組織としてどうなの? 勇者! あなた達はどうして女神様に選ばれたのか、考えたことある? 強さだけで言うのならあなた達より強い人は五万といる。女神様がお二人に求めるのはなんなの? 思考放棄して私に頼ること? 違うでしょ! しっかりしなさい! お二人は人間を導く存在になるのよ!」
「人間を導く……」
「セレン、タイサ。忙しいのはわかってるけど、政務を任せられるほどの人材を育ったなかった怠慢を今責めても意味ないと思うけど、カリスマ性のかけらもないあなた達はそれで魔王に対抗できると思う? このままでいいと思ってるの?」
「カリスマ性のかけらもない……」
「確かに、貴女の言う通り、今セレン派と呼ばれてる魔人達は私の仕事ぶりを評価しただけで、別に私を慕ってるわけではない。私は本物の魔王でもない、魔王の体を乗っ取っただけの魔人に負けた。つまり私の今までの努力は魔王の名に負けた。それはわかってる。が、カリスマ性は一朝一夕でつけるものではないし、今すぐつける必要もない」
「じゃあ何時つけるつもり? ケルベロスは今回で表舞台に出るのよ! さあ、覚悟を決めて!」




