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戦争介入編 第5話 前 期待でございますか?

 僕の一番最初の記憶、それが何歳の時だったのがはわかんないけど、父と母の会話を盗み聞いたあの時だと思う。どうやら父上の人生計画の中で、僕を産む予定はなかったらしい。だから誰にも期待はされていない。

 自由に生きられて羨ましいと言う兄達からの言葉は嫌味じゃないのは分かってる。僕より可哀想な人はいくらでもいて、孤児に比べると僕は幸せだ。それも分かってる。それでも、この孤独感をどうにかすることはできそうにない。

 使用人達は仕事柄、誰に媚びるべきかをちゃんと分かってる。使用人達が僕を見るその目からは軽蔑を感じた。それ以来、僕は人と目を合わせるのが苦手になった。


  使用人が命を張って僕を守るだなんてはなっから期待してない! だから僕をそんな申し訳なそうな目で見るな! やかて僕の専属メイドも辞めて、新しい専属メイドが配属さてることになった。


 新しい専属メイドも僕の噂を聞かせれたと思う。将来的に平民になる可能性が高いことも、暴動でポーションでもすぐに治せないほどの怪我を負ったこと。さあ、軽蔑するか、憐れむ、どっちだ。


 新しい専属メイドは僕と歳が近そうな綺麗な子だった。だが、その目は、憐れむ。いや、憐れむ目は一瞬だけだった。真っ直ぐな目、透き通った眼差し。何処か遠い場所を見てるような綺麗な目だった。この子はきっと僕と違って些細なことで悩んだりしないだろうな。


 メイドはみんな優しく、丁寧に奉仕してくれる。だから僕はもう優しさに慣れてる。慣れてるはずなのに鼓動が収まらない。僕のベッドの隣の椅子に座ってる彼女が一心不乱に包帯を交換してくれると、無防備にもその細くて白いうなじを僕の目に晒してしまう。彼女の頭の上の二つのお団子と後れ毛を触りたくてたまらない。

 彼女のことを思っていると夜しか眠れない。怪我して痛み止めを飲むようになってからは日中も眠いのに。

 彼女がどこまでも優しくて、彼女の目の前で恥ずかしくも泣いてしまった。

 

 初めてだ、諦めるのを慣れてた僕が何かを欲しくなったのは。


 その日、初めて父上に自分の考えを口にした。そして、その夜、彼女は髪を解き、角を見せてくれた。彼女は人間ではなかった。

 彼女は人間かどうか僕にとって重要ではなかった。重要なのは、彼女は何か使命があって、この屋敷に長く留まらないことだ。

 いやだ! もう諦めたくない! 何か僕ができることがあったら、力になれたらなんでもするから!

 でも彼女は僕の助けなんていらなかった。それでも彼女に迫る僕はきっと醜いだろう! でも結婚したら絶対に大事にするから!

 保証が欲しい! 彼女が僕の側から離れない保障を! キスでもすれば何かが変わるかもしれない。


 「……わかりました。恥ずかしいから、目を、閉じてくださいね」

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