ピースフルケルベロス編II 第12話 前 人工魔人でございますか?
「ちょっと確認させて。人工魔人というのは、もとになる魔人の固有魔法のみならず、その身体能力や身体特徴からの能力も使えるってことで合ってるよね」
「はい。その認識で合ってますよ」
心当たりないんだけど。私、アサの叔母のから貰った魔石を体に埋められたけど、別に人工魔人にはならなかった。そもそもドラゴンさんはどっちかというと魔物であって、魔人ではないんだけど。
「もしかしてわからないのですか? 人工魔人なのに?」
もしかして煽られてる?
「魔人だって魔人のことなんてもわかってるわけではない。じゃあ、あなたは脳がどういう仕組みで働くのを説明できる? 脳みそ持ってるからできるよね」
「……。知らないようですね。では、説明させて貰います。人工魔人になれるかどうかは、その移植する部位の持ち主との関係によります」
なるほど。私とドラゴンさんが仲良くなっていたから、人工魔人になれたのね。
「つまり、人間が人工魔人になれるかどうかは、魔人が決めるのです。人工魔人は人間の固有魔法、つまり属性魔法を使える上に、魔人の固有魔法も使えるだけでなく、その固有な能力や体の特徴もえられることができます。つまり、人工魔人は人間の上位存在と言えます。要するに、醜い人間を粛清して、選ばれた人間だけ人工魔人にするのが我々の目的なのです」
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「まとめると、ゴーストは魔王の体を乗っ取らせるために、魔力が澱む土地で特定な固有魔法を持つ新種の魔人を生み出した。また、様々な新種魔人を人間と一緒に住まわせ、仲良くさせて人工魔人を作り出す研究をしていて、目的は人間を滅ぼすことです。以上を持って報告を終わります」
この場にいる魔人、人間、獣人、暫く誰も言葉を発せなかった。
「……セレンさん、魔族誕生の秘密、これで合ってる?」
「知らない。初耳だわ。それでも、私にとって一番重要なのは魔族の繁栄と安定であって、人間が醜いかどうかは気にしてない。女神様のことは女神様がお決めになり、私が心配するようなことじゃない。魔人狩りは交渉なり、必要に応じて武力で解決することも辞さないが、人間を滅ぼすなんてことは考慮に入れない」
「……それを聞いて安心した。それにしても、まさか人間が女神様の汚点になってるとは思いもしなかった。勇者は人間の代表にはなれないと思うが……うまく言葉にできない。女神様からこの聖剣を授けられた時から、ずっとその意味を考えてた。きっと人族と魔族の平和を実現するためだったと、今は思ってるよ」
「絶対にゴーストを止めよう!」
「おお!」
「で、これからどうする?」
「……」
また静かになった。




