ピースフルケルベロス編II 第10話 後 分かりあうでございますか?
「そんなことはございません! あのね、認めたくはないけど、リリーナが魔界に行って、ちょっとだけではあるけど、明るくなったよ。先人魚姫の話をした時も、ほんの一瞬だけど笑顔を見せてくれた。これに関しては、桜子に……感謝……しなければ、ならない……っ」
「そっか……でも、桜子に感謝するなら、アサ自身にも感謝してね。アサだって、私の笑顔を取り戻せた功労者の一人なんだから」
「リリーナ〜!」
「で、アサ。私ね、4回ほど生を受けて、一回も恋したことないのよね。それでも、私は私なりに精一杯アサのことを考えて、出した結論がアサと家族になることよ。以前も説明したように、冷めない恋はないし、冷めた後にその恋を家族愛に変えられるかどうかが、関係が長続きするかの基本だと私は思う。もちろん恋人のような触れ合いは可能な限り受け入れるし。私からの愛情表現も、まあ、気分によっては……。だからね」
「もう大丈夫だよ。私、リリーナの気持ちを知って良かったと思ったし、尊重したいとも思った。言い訳になるかもしれないけど、リリーナのことを信じてないわけではない。ただ、あの女司祭の言葉には……どんな魔法なのかはわからないけど、その言葉には力があった。リリーナが他の人と一緒にいる時に湧き上がるあのドス黒い感情と、私の心にあった抑えられない嫌な気持ちも全部見透かされたような……」
全部アサが悪いというわけではないことはちゃんとわかってる。それでも私を信じ切っていなかったアサと、結局人を信じてしまってまだ裏切られる愚かな自分にイラだってしまい、ついアサに自分の感情をぶつけって。でも、私だって感情を持つただの人間、人に当たることもある。
「ううん。私も言い過ぎた。ごめんね、アサ」
「いいえ! リリーナが謝る必要なんてないわ。それに、リリーナが抱えた秘密を打ち明けてくれてとても嬉しかった。今なら誰にも負けない、そんな気がする! ともにあの女司祭に立ち向かおう」
とはいうものの、あの司祭のことだし。何もせずただ私たちのことを待ってた、なんてことはまずないから。どうする? 潔く諦めて手ぶらで帰るのも手だと思うだけど。 とりあえずもっかい運チェックしておこう。
大丈夫そう。よし、行こうか。
「あらあら。アサ・オカンと仲直りしたのですね。さすがはゴースト様がもっとも警戒した人工魔人というところですか。知ってます? ゴースト様が私にこの固有魔法授かったのはあなたのおかげなんですよ」
人工魔人……、固有魔法を授ける……。




