ピースフルケルベロス編II 第9話 後 向き合うでございますか?
確かに、アサは興奮する時お嬢様口調に戻ってしまうし、アサの方が主人格……と言っても、アサは別に多重人格というわけじゃないと思うけどね。アサはお母さんの記憶を持ってはいるけど、アサはアサであってお母さんではない。そんなこと、ちょっと考えればわかることなのに、どうして今まで一度も考えなかったでしょ……。アサは前世の記憶を持って生まれたわけではないから、私と違ってちゃんとアサ・オカンという人格が形成されたわけだし。
でも、アサを母扱いしてたかな? 私は別にアサのことを母として扱ってたから家族になろうって言ったわけじゃない。あれはアサの気持ちを応えようとして私なりに必死に考えて得た結論なんだよ。アサには納得して貰えなかったみたいんだけど。
まあ、でもアサは桜子を探すための道具だったというのは否認できない。確かに、私はアサの強さに甘えていたかもしれない。だって、アサがお母さんの生まれ変わりだなんて考えもしなかった。言い訳をさせてもらうと、あの頃の私は人を信じていなかった。まあでも……私の前世のことなんて、アサは知る由もなかったけど。
あの頃、私、アサのことどんなふうに考えたのかな? 目的は達成したからもう用済み。でも捨てるのにちょっともったいないお化けが出てきそうだから……。
でも今は違うのよ。アサのことを大事に思ってるのは本当よ。アサと同じ気持ちにはなれないけど……。それでも私の中ではアサが一番大事な人。これだけは言い切れる。
「はあ……私の心臓に私の気持ちが書かれていれば、今すぐ心臓を抉り出して、アサに見せてあげたよ……」
「リリーナ……っ!」
あーっ! もどかしい! どうして私の気持ちが伝わらないの? 口だけなら何とでも言える、だから言っていいことは何でも口にする、というのは私のモットー。それでも言葉では伝えられない気持ちもあるし、私が手を差し伸べればアサが私の手を取ってくれることにも限界がある! そんなことはわかっていた! なのに!
仕方……ないか。向き合うというのは、そういうことなのよね。
「アサ、信じて貰えないかもしれないけど、聞いてほしい。アサは疑問に持ったことある? どうして私だけが前世の姿のままなのかを」
「え?」




