ピースフルケルベロス編II 第8話 後 罪でございますか?
あの司祭がいる限り、アサの説得は無理。状況も悪いし、とりあえずアサを司祭から引き離しながら逃げよう。幸い、司祭の仕掛けがアサの魔法を弱めてる。加えて、アサの目的は私を捉えることなんだから、慣れない拘束系魔法を使ってる。おかげて、アサを司祭から引き離すことができた。
それにしても、アサが……。アサだけは私を裏切らないと思ったのに……。私、ちゃんと決断して、アサの告白を受け入れて、アサの気持ちに答えた……。不安させないように色々ケアしてた。何が悪かったのでしょ? アサのやつ、私の言葉より、あの司祭の言葉の方が心に響くというの? 敗北感を味わったのは、これが初めてかもしれない。あーもー! アサのやつ……簡単には許せないんだから!
ここならいいかな?
「アサ、いい加減にして!」
「リリーナ、リリーナ! リリーナっ!!!」
「アサ、一体どうしちまったの? 私を閉じ込めるなんて! 訳がわからないよ!」
「リリーナはいつもそうでいらっしゃいます! 誰にでも優しくて、誰からも愛されます! わたくしはっ……! わたくしはリリーナしかいらっしゃらないのに、リリーナは私がおりませぬとも平然とされといられます! ……わたくしだけを見てください! わたくしだけを見てもらわないと耐えられません! ですから!」
どうしてこうなった? これはもともとアサの心に隠された感情なのか。それともあの女に植え付けられた感情なのか……。いずれにしても、ちゃんとアサに向き合わないと!
「アサ……」
寿司三昧ながらアサに近ついてるけど……。
「リリーナ……」
使わないでね……! 絶対に使わないでよ! 魔法を……!
よし、手の届く距離まで近つけられた。
いった……平打ちでも打った方も手が痛いのね。
「リリーナ! どうして! わたくしを拒むのですか!」
「いい加減にして! 戦争でたくさんの人が死んでるのよ! 毎日に! 約束したじゃない?! もう忘れたの? アサは約束を守れない人? たっだの一年も待ってくれない?! まさかアサのことが嫌いになる日が来るとは思いもしなかったよ!」
「嫌い……?いや、いやーーーぁっっっ!!!」
思わず膝について泣き叫ぶアサの顔を両手で掴んだ。
「ねぇ、アサ。私を閉じ込めて、それで満足?」
「うっ……うう」
「私と旅行して、得た結論がこれ? アサ、わかってるの? 今この瞬間でもたくさんの人が戦争で自分と愛する人の命を失ってるよ!」
「存じません……わたくし、あの砦で人を沢山殺めました」
兵糧庫でのことか……。
「貴族も王族も……わたくしは全てを捨てきました! わたくしには……もうリリーナしかおりません!」
これが、アサを利用し続けた私の罪だとでも言うのか……。




