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ピースフルケルベロス編II 第6話 精神障害者でございますか?

 「しつこいっ!」

 あいつらずっと追ってきてる。アサには手加減するようにお願いしたからアサも殺す気で攻撃してない。風魔法で吹き飛ばすだけ。なのにあいつらすぐ起きてまた追ってくる。私達二人も体は12、13歳相当だからあいつらの歩幅が圧倒的に広い。逃げても逃げてもすぐ追い付かれる。

「ダメだ。もう走れない……っ」

「リリーナ! ほら、頑張って!」

「嬢ちゃん! もう逃げるな! 俺達の話を聞いてくれ!」

「アサ、お願い」

「嬢ちゃん、待って欲しい! 話し合えるはずだ」

 話しても無駄だと思うけどね。どうせあの司祭の言葉しか信じないし。でも、休む暇が欲しい。

「わかった。話し合いましょう。無意味だと思いますけど」

「なぁ、嬢ちゃん。こんなことはやめてこの村で平和に暮らそう。嬢ちゃんが改心するなら司祭様も、女神様もきっと許してくれるよ」

 話にならないわね。

「信じてくれるとは思わないけど、私達は尖兵でもスパイでもありません。私達は戦争を止めるためにこの村に来たのです」

「戦争を?」

「そうです。みんなさんも知ってるとは思うけど、魔王の体はある魔人に乗っ取られています。その魔人は新種な魔人で、魔界の記録を調べたところ、その魔人はこの村の出身であることがわかりました。ですから、私達はあの魔人のルーツであるこの村に潜入し、その魔人とゴーストの目的や、彼らを止める方法、この村で新種な魔人を作り出してる計画の証拠を探しにきただけです。もしあなた方が本気で平和を望むのなら、私達の協力をしなくても、邪魔だけはしないで欲しいのです」

「トミー、この子達……」

「ああ」

「かわいそうに……」

 え? ちょ、なんの話?

「セレンに洗脳されたのね」

「は?」

「司祭様から聞いた。セレンは声で生物を操り、人や魔人を洗脳する魔法を使えるって」

「いや、セレンの魔法は魔物や動物を操るだけで、人や魔人を洗脳する力はありません」

「この子自覚ないのね」

「ああ。俺が……俺がっ! なんとかしないと!」

 うわ……なぜか衛兵Aが涙声になった。

「トミー、あんたまさか娘のことを?」

「嬢ちゃん、聞いて欲しい。俺には娘がいた」

 なんか語り出した……。

「そう、嬢ちゃんくらい可愛かった」

「いや、この子の方がずっと可愛いだと思うけど」

「シャーリーも負けないくらい可愛いぞ」

「親バカが……外見だけなら嬢ちゃんの方が全然可愛いよ」

 なんか衛兵Aと食堂のおばさんが漫才始まったけど……。

「俺の娘はなぁ、悪い男に騙されて都会に行ったんだ。そして、帰ってきた時は……帰ってきた時はっ……傷だらけで、冷たくて……もう、二度と微笑んでくれなかったっ……」

「トミー……」

 知らないわよ、そんなこと。

「だから、嬢ちゃんみたいな子が悪い人に騙されるのが見るに耐えないんだ。お願いだ、嬢ちゃん。俺たちと一緒に司祭様に会いに行こう。司祭様ならきっと洗脳を解けてくれるんだ!」

 話にならない。はぁ〜話しても無駄だとわかってはいたけど……。

「嬢ちゃん。突然そんなこと言われても混乱するとは思うけど、俺たちを信じてほしい。司祭様に会って、悪夢から覚めるんだ」

 この人達と話していると、なんだが自分の精神疾患を認めたくない精神障害者のような気分になっちゃう。もういい。疲れた。付き合ってらんない。

「アサ、あそこに向かって風の上級魔法を撃って」

「うん。わかった」

 さすがはアサ、上級魔法の威力は凄まじい。アサの竜巻を目の当たりにして、あの人達は目を見開いてる。

「私達はあなた方の村を跡形なく消せるほどの力を持っています。そうしなかったのは私達が命の尊さを知っていて、平和に解決する手段を探しているからです。言葉で解決できないのはとても残念だと思っていますし、できれば手荒いことはしたくないのです。しかし、これ以上私達の邪魔をするというのなら……」

「嬢ちゃん……」

「わかったのなら早く……」

「かわいそう……」

「はぁーーっ!?」

 なんなのこの人……?

「そんな力を持っているからセレンに目をつけられたんだ。でももう大丈夫だ。司祭様が洗脳を解いてくれる。もうしたくないことをしなくてもいいんだよ」

 あーもー。頭が痒くなった。

「アサ、逃げるわよ」

「うん」

 こんなにも話が通じない人は初めて。正直ちょっとショック。


 アサもイライラしてたのかな? 手加減はしてるけど、風魔法の威力が明らかに上がってる。あの人たちもあの人達だ。アサの魔法を目にしたのに、よくも恐れずに追ってこられるわね。けど、アサが追手の誰かを怪我をさせたことで、私達は追跡を逃れることができた。

 とはいえ、結局何の成果も得られなかったから、もう一度あの村に行くことになるけど。今回は潜入ではなく、侵入。まあ、あの司祭ならそれを想定して罠を張って私達を待ち構えるでしょ。何より、私達が欲しがる新種魔人を作る計画に関する資料は司祭に隠されてるに違いない。さて、どうやって司祭を捕まって口を割らせるのか。

 いつもご愛読いただき、誠にありがとう存じます。


 この度、私の別の作品が完結いたしましたことをお知らせいたします。これにより、毎週投稿に戻ることになりました。


 皆様の変わらぬご支援に心よりお礼を申し上げます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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