ピースフルケルベロス編II 第5話 後 司祭でございますか?
その後、私達は賛美式に参加した。まあ、弥撒みたいなもの。……とにかく、ひたすら女神のことを褒め称えてるだけ。この人たちのこの熱意はなんだ? 宗教にハマる人は怖いという知識は持ってるけど、それでもちょっと圧倒されてる。
でもね、同じ女神の創造物だから、魔人と人間は仲良くするべきという考えは広まるべきだと思う。
それにしても、この女性の司祭様、なんかカリスマ性があるというか。みんなは女神様ではなく、この司祭を崇拝してるって言われても納得できちゃう。話すスピード、間、声の強弱、抑揚、手振り身振り、明らかにそれらを気にして話してる感じ。見習いたいぐらい。この人、一体何者? こんな村で信徒を集めて何をするつもり? ゴーストとのつながりは? この司祭を調べればゴーストや魔王達の目的を知られるような気がする。
「これにて、賛美式を終わりにします。女神様に感謝を」
「「「女神様に感謝する」」」
「そして! もう一つ、女神様に感謝しなければならないことがあります。今日はなんでいい日なのでしょ! 今日は、我々がずっと待ち望んでいたゲストが来てくれたのです」
ゲスト?
「みんなさん、礼拝堂の出口だけでなく、村の出口も封鎖してください。ゲストを逃したら大変なんですから」
あれ? これ、やばくないか?
「歓迎しますよ。リリーナ・スネークさん」
やばい……。
「リリーナ……」
「アサ、戦闘準備だ」
「リリーナ・スネークさん、いいのですか? ここにいる信徒のみんなさんは全員非戦闘員で、心から平和を望んでいますよ」
「あんた、先の子じゃないかい」
食堂のおばさん……。
「みんなさん、そこの綺麗な女の子を捕まえなさい。彼女はセレン派の尖兵で、逃したらこの村が戦争に巻き込まれてしまいます」
考えが甘かった。ここはゴーストが管理する村で、ゴーストは私の仕事の報告を何度も聞いてた。私が来ることも予想してたはず。
ダメだ。私だけならともかく、アサもいる。アサが囚われて、私のせいでひどい目に遭われたら……。あんな思いはもうしたくないし、アサにも遭わせたくない。だから!
「相手は非戦闘員だし手加減はアサの配慮で決めていい。私達の安全が最優先にして」
「わかった」
運チェックだけが私の能力ではない。私は他人から運を奪えることもできる。でも運を奪え過ぎれば取り返しのつかないことになるから慎重にすべき、まあ、余裕があれば……。
「嬢ちゃん、これはどういうことだ?」
奢ってくれた衛兵さん……。
「リリーナ、あの人も?」
「構わない。やっちゃって!」
仕方ないのよ! だって、そう決まったから!




