ピースフルケルベロス編II 第4話 前 天使の笑顔でございますか?
「リリーナ。大丈夫だよ。きっとうまくいくと思うよ。だからね、お願い。そんな不安そうな顔しないで。リリーナにそんな顔されたら、私……」
不安ってほどじゃないけど。孤児として孤児院に潜入するには私達の年齢はちょっと高いと思ってる。他の案もいくつ考えたんだけど、トーマスをこれ以上派手に動いで欲しくないし、身分証明もできない私達は孤児として潜入するのが一番だと結論つけた。
「リリーナあんまり表情に出ないけど、私はリリーナの表情を読めるよ。誰よりも長くリリーナの側にいたし、誰よりもリリーナのことをよく見てるから」
問題はこの世界、あっ、世界じゃない……この大陸の国々の成年年齢は15歳。私とアサはもう13歳。働いでもおかしくない歳なんだ。
「桜子よりもね!」
子供のフリは人間に詳しくない魔人に通じても、人には通じない。
「大丈夫だよ。今回は私がついてるからね。最悪の場合私があの孤児院を襲撃してあの人達から情報を引き出せばいい」
とりあえず難民のフリをして、あっちから来るのを待つしかない。その方が自然だと思う。あの孤児院が本当に人間を魔人にする組織なら私達を放ってはおけないはずだ。
「だからね、笑って。私、リリーナの笑顔が大好きなの」
このボロボロな服、靴はロッティに用意させてもらった。本物の難民の子供から買ったものだけど……。
「……」
前世、アイとニーナの記憶を持て、カビパンのあの生臭い味を覚えてる私はそのボロ服に抵抗はあんまりなかったけど、すずしろの知識を持つ私はそのボロ服を着ることはできなかった。
「やはり私はリリーナを笑顔に出来ないのかな」
皮膚病が怖いから。だから私はロッティに強いお酒を用意して貰った。服を洗うことなく、アルコールの中に入れて、何時間をかけて消毒だけして、熱で乾かしてまた砂を被らせた。
「リリーナ、もしかして……私の話……聞いて、なかった?」
「ううん。ちゃんと聞いてるよ。アサは私だけを見てることはちゃんとわかってるよ。だからね、私、笑うのが苦手だってこともちゃんとわかってくれると思ったんだけど……」
ちょっとアルコールの匂いがするかもしれないけど、この世界の人は菌に関する知識がないはずだから、消毒という概念もないと思う。酒の匂いはいくらでも誤魔化せる。
「あっ……あの、リリーナ、私……」
「仕方ないなぁ……」
「リ……リリーナ!?」
指笑顔だけど、喜んで貰えるのかな?
「天使が舞い降りました……いいえ、悪魔! 小悪魔よ!」
喜んでもらえて何よりだ。




