ピースフルケルベロス編II 第3話 前 労うでございますか?
「実は……私色々頑張ってみましたが、成果と呼べるものが……ありません。もちろん、努力を言い訳にするつもりは毛頭ありません。ですが、リリーナ様は私を信頼し、期待してくれたのに、お答えできないのが悔しい限りです」
「ソニア、ちょっといい?」
「え? もちろんです」
「ソニアぁ、信頼することはね、丸投げすることとは違うのよ。ソニアは有能だと思う。でもね、人に相談できるかどうかも能力の一つよ。だからね、いつでも私に相談していいのよ」
「どんでもありません。リリーナ様のお邪魔したら悪いですし」
「違うよ。ソニアに任せた仕事の進展を把握するのも重要だからね。報告、連絡、相談はとっても重要なの。ソニアがそれが出来ると私は信じてる。それはそうとして、ソニア、色々頑張ってくれたのね。ありがとう。とっても助かってる」
「勿体無いお言葉です」
「ううん。ところで、ソニアはため息ついたよね。そのため息はまた諦めてないけどどうすればいいのかわからないため息? それども……」
どうやって私に報告するのを悩んでいるのか。
「私は諦めてはいません。ですが……」
「うん。詳しく聞かせて欲しい」
「かしこまりました。私はリリーナ様に習って、人間と魔人との対談会を開催しようと思っていたのです。ゲストは勇者をお呼びしましたが、開催するには資源も人脈もない私にはちょっと難しかったようです。それでも一回だけ開催できました。ですが、私の話術では……」
「なるほど。魔人達がどんなこと言ってた? やはり魔石云々?」
「はい。それと魔人は実力主義なので、話し合いは無意味とも……」
そっか。やはりこれか。
「同じ手は魔界では通用しないことだけを知っても、ソニアの行動は無駄ではなかった。だからソニアは失敗なんかしてないよ。ありがとう、ソニア」
「ああ。リリーナ様。私はきっとリリーナと出会うために生まれてきたでしょう。女神様って本当にいるのですね、二重の意味で」
「ふふっ。大袈裟だな」
「大袈裟ではありません! リリーナ様の言葉で私どれほど楽になったのか! 昔の上司に比べてリリーナ様はどんなに素敵な方だったのか!」
「ありがとう。そう言ってもらえてすごく嬉しい。それで、他にも試したことは?」
「はい。スネーク様の、魔王にも劣らないと言われるドラゴンの力を披露させようと思ってお願いしてみたのですが……」
「土地も汚染しちゃう力だもんね」
「はい」
お金と強さ。人間と魔族、どっちも分かりやすくて、めんどくない。
「色々やれることを考えて実行してみたけど、なかなかうまくいかなくて、気づいたら私だけが頑張っているのようになってしまいました」
「気持ちわかるよ」
一人相撲は辛いもんね。
「ソニアはよく働いてくれた。失敗してはないと思うから気に病む必要はないよ。元々魔人の協力者は少なくないし。それに計画はもう次の段階に進んでる。そろそろ会議の時間よ、さあ、一緒に行こう」




