ピースフルケルベロス編II 第2話 後 ため息でございますか?
「はあ……」
溜め息。誰かな?
「あ、リリーナ様」
「ソニア。どうしたの? ため息ついちゃって」
「あ、ごめんなさい。ため息ばかりして気持ち悪かったよね?」
「うん〜私は別に気にしないけどね。それに、ため息は別に悪いことじゃないよ」
「そうなんですか?」
「うん。私の故郷では幸せをつくと幸せが逃げてしまう、なんて言う人もいるけど」
「幸せが逃げてしまうの?」
「しないよ。むしろ幸せを掴む力になると私は思うな。ため息にはリラックス効果があるんだからね」
「そうだったのね。ではどうしてため息が悪いこととされるでしょう?」
「それはね、私が思うに、ため息は泣くと同じく、体の防衛機能の一種だと思う。ため息をつくことは体が、『ちょっとリラックスしましょうよ、そんなに思い詰めないで』って言ってると私は思うだぁ。泣くも同じ。自分に『悲しまないで』って言ってるみたいなもの。でもね、両方、他人から見れば一種の救援信号なんだと思う。ほら、泣いている人を見ると助けたくなるし、ため息ついてる人に、そう、私が今してるように、『どうしたの』って、聞いたくようになるでしょ」
「はい」
「でもね、みんながみんな泣いてる人を見ると助けたくなると思うわけじゃないの。『泣いたら誰かがなんとかしてくれる、助けてくれると思ってる』とか、言う人がいるんじゃないか?」
「私も昔似たようなこと言われました。そこから救ってくださったのがリリーナ様でした」
「ちょっと照れるな。で、話続くけど、ため息も似たようなものでね。『ストレスがすごくためてるの、助けてください』って体が周りの人達に言って、助けを求めてるみたいなものなの。それを聞いた心に余裕がない人は『助けを求めるんじゃないよ! 自分で何とかして! こっちだって手一杯なんだ』って思ってしまう。それとね、ため息は本人が気づかないうちに出てしまうこともあるの。何回もため息をついたら、うざいと思うわれても仕方ないと思い」
「……そうですね。なるべく人前にため息つかないようにします……」
「そういうこと言いたいわけじゃないの」
「ん ?どういうことですか」
「一人で抱え込まないで頼れる人に助けを求めようって言ってるのよ」
「リリーナ様〜でも、リリーナ様が人間界のことで手一杯ではありませんか。これ以上リリーナ様の負担を増やすわけには……」
「大丈夫だよ。相談に乗るのも上に立つ者の役割だし、私が手一杯だとしても、悩みを聞いて、アドバイスを出すことは出来るし、誰かにサポートされることもできる。何より、悩みを誰かに話したら楽になれるよ。だから、ね?」
「リリーナ様〜! 実は……」




