ピースフルケルベロス編II 第1話 前 殺す覚悟でございますか?
「いよいよケルベロスが表舞台に出る日が来たな」
はしゃぐ声の中、勇者が恐る恐る声を上げた。
「本当にこれしか方法がないのか。リリアちゃんの巡回対談全部見た。すごく有意義だと思ったし、賛同してくれる人も沢山いる。このまま平和な方法で停戦させることはできないだろうか」
「停戦するかどうかを決めるのは王様だよ。その王様に私達は無視できない存在だと認識してもらわないとね」
「だが! 戦争を止めるために戦争をするのはおかしい」
「うん。言ってることは正しいと思うよ。正しくないのは世界の方」
「本当に他に方法はないのか。まずリリアちゃんがツーアの後半が言っていた知生? に賛同する人や魔人をもっと集めて、魔人と人間は争うことなく平穏に暮らせることを証明できれば……」
「それだけじゃ戦争を止められないんだよ。魔王の体を乗っ取った魔人は人間を憎んでいる。それを追従する魔人もだ。お前ら人間の王だって目的があって戦争を仕掛けたでしょ」
セレンは魔王乗っ取った魔人の正体を把握したようね。
「……血を流すことは避けなれないか。分かった。人間が魔族と手を取り合える日のために、僕、頑張るよ」
「……うん」
「手を取り合う……か。それは無理だね」
「セレンさん。どういうことですか」
「平和なら目指せるかもしれないけど、手を取り合える日なんて絶対来ない」
「何故言い切れる」
「歴史がそう語ってるからだ。ちょっと歴史の話をしようか。人間もいるので、詳しく説明した方がいいか。勇者よ、魔人には二種類があるんだけど、知ってる?」
「ごめん。知らないんだ」
私も知らない。
「人間が進化して魔人になるパターンと、動物や物質が知性を手に入れて魔人になる二つパターンがある」
あっ……。なるほどね。昔魔人と人間が一緒に女神の像を作った話があるから、魔人と人間が一緒に住んでた時期があったと思う。そして人間は自分と違うものを嫌う……。
「それがどうした」
「つまり、人間も魔人になることがあるってことだ。イエス! 魔法戦隊ファイブメンバー全員の祖先は人間だった。人間がどういうものが分かってて、人間と一緒に住むとどうなるかを知ってるから、すぐ魔界に来た」
「だから魔人は人間と相容れないって? 魔人達はもっとリリアちゃんの活動に感心を持つべきだ」
いや。言ってもらえるのは嬉しいんだけどさ……。
「でも、分かった。できることはやる。なるべく魔人、いや、知生と争いたくないが、やるしかないってちゃんと分かってる」
私達の戦争が……はじまる。誰にも死なせたくはないけど……。




