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ピースフルケルベロス編 第13話 約束でございますか?

 「話はわかった。つまり、あの人が勝手に付き纏って、リリーナは嫌がてて、困ってる。ということなんだよね」

 「まあ、ドロシーは勘違いされやすいかもしれないけど、役に立てると思うよ」

 「でも、リリーナはあの女のことが嫌いで、困ってる、よね?」

 「だから、ね……」

 「勇者はまたわかる。でもあの女は何なの? ねぇ、リリーナ。また旅に出よう。二人だけで。私たち二人なら何処でも! 何処だって行けるよ!」

 「ダメだよ、戦争を止めないと」

 「関係ないでしょ! 私達と!」

 「関係ないって……たくさん人や魔人が死ぬよ。私のこの世界の家族、育ててくれた人だって」

 「もういいでしょ! リリーナは十分頑張った! これ以上関わるのやめようよ! 危ないし。私、すっごく心配したんだから! 変な魔人、獣人だけでなく、また変な人を引き寄せちゃったじゃない! これからもそうやって変なやつを仲間に入れるのか? リリーナ人良すぎのよ! きっといつか裏切られるよ!」

 「それは……」

 わかってるよ。でも私はみんなのために、みんなを守るために、みんなの幸せのために頑張るって決めた。

 「私一人の力には限界がある。アサを頼っても出来ないことはたくさんあると思うし」

 「だったらもう手を引くべきだ! そもそも、思慮深く賢いリリーナならわかるはずだ! 今リリーナがやってることは全部無駄だって! もしかしてしろが死んだ時また成人してないから知らなかったの?」

 「言いたいことはわかる。若い者は政治に関心がなく、もっと大人の人は諦めてる人が多い。それに、民主国家でさえ民衆が国の政策を左右するのは難しい。君主制の国なら尚更。国民に何を吹き込んでも無駄、そう言いたいよね」

 「そうだけど」

 「全く無駄というわけでもないと思うよ。兵士が戦う戦争だからね。正義だと信じることができるこそ、士気が上がるし。徴兵だってそう。国を信じてなければ国のために戦うなんて思わない。そんな人たちに、ケルベロスというもう一つの選択肢を与える私の行動は無駄じゃないと思うな」

 「もー! そういうの関係ございません! わたくしが申し上げたいのはどうしてリリーナがそうなさらなければいけませんの? リリーナは勇者でもなければ、魔王でも、イエス! 魔法戦隊ファイブでもございません! リリーナとは関係ありませんの! 危険なことにこれ以上関わって欲しくありませんの! どうしてわかってくれませんの?」

 「一旦落ち着こう、ね?」

 「あっ、ごめん。大きな声出して」

 「いいの」

 危険だとか、無駄だとか、アサは本当に私のことを心配してる。でもそれだけじゃないのよね。アサを不安させたのはドロシーだ。ううん、ドロシーだけじゃない。桜子、ドラゴンさん、ロッティ、ソニア。アサの幸せの形は私のとは違う。私はみんなと過ごす何気ない日常が幸せ。でもアサの幸せは私と二人で過ごす日常。そっか。私の幸せはアサとの幸せは両立しないのね。

 「でもね、リリーナ。考えてほしい。今私とリリーナ二人で翻訳してるけど、ケルベロスが大きくなって、人間も魔族も増えたらどうなる? 私達だけじゃ足りないよ。私は必死に覚えたけど、他の人はそう上手くいかないと思うよ」

 「そうだね。ソニアにはもっと頑張ってもらわないとね」

 「リリーナ! 私が言いたいのは……!」

 「わかってるよ」

 「わかってない! リリーナは何もわかっていない!」

 「わかってるよ。アサは私だけいればいい。私にアサだけ見てほしい。違う?」

 「わかってるじゃないか……」

 覚悟を……決めないとね。大切な人に裏切られる絶望をアサに味わせないためにも。

 「うん。いいよ。私の人生をアサに捧げるよ」

 「え……?」

 「だーかーらー、私はアサだけの側にいて、アサだけを見る。そう言ってるのよ」

 「夢……ではありません、よね? わたくし、夢を見て……」

 「夢じゃないよ。ほら、私の手、こんなにも暖かいのよ」

 アサの頬を撫でたのは遠い昔のことのような感じがする。

 「リリーナの手、すごく暖かい」

 アサの頬を撫でる私の手を自分の手で覆い被せてくれた。

 「ねぇ、抱きしめていい?」

 「……うん」


 特別なことは何もしていない。こうして二人が寄り添うだけで幸せ。そんな幸せな一時を過ごした。でもちゃんと言わなきゃダメだよね……。

 「ねぇ。アサ、聞いてほしいんだけど」

 「うん! 何でも言って」

 「えーとね。一年だけ、待ってくれない?」

 「どういうこと?」

 「今すぐ二人で姿を消したら、あまりにも無責任だと思わない? みんな心配するし、必死に探すと思うよ」 

 「それは……そうだけど」

 「ねー! だから一年だけ待ってくれないかな? 無駄かもしれないけど出来ることはやってみたいし、ちゃんと私がいなくてもいいようにしないとね。引き継ぎとか」

 「そうだね。リリーナが言ってることは理に適ってる。これ以上ワガママ言ったらリリーナに嫌われちゃうよね」

 「嫌ったりしないよ。でも私のワガママを聞いてくれるとアサのこともっと好きになっちゃうかも」

 「も〜リリーナたっら」

 一年か……。


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