ピースフルケルベロス編 第11話 前 覚悟でございますか?
「ロッティ、私は脅かされるのが大嫌いよ」
「アイちゃん……」
耳と尻尾がしょぼんって感じ。言い過ぎだのかな。
「昔一緒に寝ることあったし。アイちゃんのお願い全部聞いてたのに私のお願いも聞いてよ」
「……とりあえず二人きりで話そう。ドロシーさん、私達の話を盗み聞き、話し合いもしたあなたなら、私達は別に悪いことしているわけじゃないことはもう分かったと思う」
「まあ」
「驚かせてごめんなさい。ドロシーさんも疲れたでしょ。部屋に戻ってゆっくり休んでくださいね」
「私まだ疲れてないよ」
こいつ天然kyか? それともツラの皮が厚いのか。
「えっと?」
「うん?」
こいつ……。
「あの、二人きりにさせてもらえないかな?」
「いや、そういうの第三者も混ざった方がお互い落ち着いていられるよ」
私、こういう人嫌いなのよね。さて、どうしようか。ちゃんと言葉を選ばないとね。
「邪魔なのがわかんないの? 今すぐに出ていけ! ぶっ殺すぞ!」
ロッティが怒鳴りつけても、ドロシーはまったく動じず、ゆっくりと席を立ち、仕方ないと言わんばかりにでかいため息をついて、部屋から出ていった。ただものではないのか、顔の厚さがただものではないのか、どっちなんでしょ……?
とにかく、ロッティと二人きりになった。なってしまった……。
「どうして?! 私のこと嫌いになった? アイちゃんは本当にアイちゃんではなくなったの?」
「そうじゃない、よ? ただ、……私に、恋人が……できたの。だから、彼女を裏切ることはできない」
うわー……恥ずい。
「彼女……? アイちゃんはあれか? 同性が好きなのか?」
「……」
わかんない。そもそも私は他人に恋心を抱けるのか。私の一番大切な人は私自身だ。私は決して私を裏切らない。ただ……最近ようやく気づいた。すずしろの記憶を持つ私は一人では寂しさに抗えない。一人じゃあ幸せにはなれない。私が目指してるのはみんなと一緒に過ごす何気のない日常。アサと付き合うのも、戦争を止めるのもその手段にすぎない。ロッティと同行し、いろんなところに潜入させ、偵察させてもらった。ロッティには感謝してるし、ロッティと過ごした日々も決して悪くない。ただ、前世の絆とは比べ物にもなれない。それに、アサと付き合うと決まった時、アサが私を裏切らない限り、私はアサを裏切らない、そう覚悟を決めた。恋心がなくても、私はアサを愛してる、はずだ。
こうして、私達の公演は終わり、私達は魔界に帰った。アサと桜子の方も色々進展があった。




