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ピースフルケルベロス編 第9話 後 天災でございますか?

この女の子は、同じ楽団の……。

 「何者だ。何をしてる!」

 「それより、話を聞かせてもらった!」

 それより? それよりの一言で済ませる気?

 「ミシェル、あ、ミシェルって偽名よね。本名はアイか。それともリリーナ?」

 なんだこいつ……。状況わかってる?

 「ミシェルだけど」

 「惚ける気? まあ、いいけど。ミシェルって、バカなのね。まっ、そこもかわいいだけど」

 なんなのこの人……。

 「おい! お前今なんつった!?」

 「ミシェルはかわいいって言ったよ」

 「お前今アイちゃんのことバカにしたのか!? ああ!?」

 「ロッティ落ち着いて」

 「止めないで! こいつが!」

 「怒ってくれてありがとう。嬉しいよ。でも大丈夫だから、ね。それで、私のどの辺がバカなのかな? 教えてくれる?」

 「私ね。昔結構ヤンチャだったんだ。それでよく親に打たれるんだ」

 「何言ってんだこいつ」

 「黙れ! 私はミシェルと話してるんだ」

 「こいつ!」

 「ロッティ、いいから。えっと、続けて」

 「ありがとう、ミシェル。で、打たれたあとはしばらく大人しくするけど、痛みを忘れたらまた調子を乗ってしまう」

 なるほど、話が見えてきた。

 「つまり、人間は、ううん」

 この子が私達の話を聞いていたら通じるはず。

 「知生は戦争という痛みを忘れているから調子を乗ってる。だから戦争を阻止するべきではないと?」

 これってあれよね。厨二病ってやつ。

 「あっ、ミシェルって頭いいのね! 先バカって言ってごめん」

 「本当に何言ってんだこいつ。何人が死ぬと思ってるんだ」

 「それは天災も同じだ。人間は戦争の痛みを忘れたらまた調子に乗る。ミシェルが先も言ったように、人は他人をバカにすることで優越感を覚える。差別する。種族なんて関係ない。魔族を滅ぼしたあとは人間同士で争う。今回も、止めることが出来たとしてもまた別の些細なことが新しい戦争の火種になる。戦争は天災みたいなものだ。止めるだけ無駄だし、戦争で死ぬのは地震や津波で死ぬと同じだ。そして人は学び、短い平和がやってくる。歴史もそう語ってる。戦争は人にとっては不可避なものであり、必要なものでもあるんだ」

 厨二臭いだけど、ほんの少し、本当にほんの少しだけ説得力を感じた自分がいた。

 「概ね同意だけど」

 「アイちゃん?」

 「でも、あなたは天災が起きたら何もしないの? 津波が来たら私は無駄だと分かってでも家族を連れて高いところに行こうとするけどね。もちろん、止める可能性が少しでもあれば防波堤とか一所懸命作るけどね」

 「ボウハテイ?」

 あっ、この世界はないんだった。

 「土を盛って壁を作ること」

 「そっか。それも一理ある」

 「で、話戻すけど、あなたは誰? 私の部屋で何してた?」


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