ピースフルケルベロス編 第7話 後 私は日本人で、地球人でございます
「台上に上がらせて」
荒らしではあるが、軽くあしらうとそもそも公開会談する意味がない。頑張ってくださいね、マモンさん。
「そんなに戦争したいのか、魔族と」
「戦争したいかどうかじゃない、もう戦争してるんだ!」
「戦争は別に始まったら止められないわけじゃない」
「そもそもこの戦争を始まったのはてめぇら魔人だろうが! ああ、分かった。魔族が負けそうだから工作しに来たんだな」
「そんなわけ……」
マモンにはちょっと荷が重かったようで、マモンから通信が入った。仕方ない。プランbに移行するか。プランbというのは、マモンに事前につけてもらった小型通信石で、私が代わりに相手と議論するというものだ。欠点としては私が席を外さなければならないこと。毎回席を外してたらマモンが急に雄弁になったら、疑う人が出てくるかもしれない。まあ、今回ばかりは仕方ないか。
「お気持ちはわかります。私達も別にこの会談でこの戦争を止めると思うほど甘くはありません。そもそも、工作しようとしても、王様が治る国に国民を説得したところで、戦場で有利な立場に立てるわけではありません」
「どうだか」
「人間と魔族の間には誤解があリます。でも誤解を解くのに適した場がありません。この会談がその場を作る第一歩になればと思っています」
「誤解、ね。そもそも、てめぇらは人間が魔人を殺して魔法石にするって言ってるんだがその証拠があるだろうな」
「ヒィっ!」
翻訳さんを威嚇しないでほしいな。
「これはトーマス主催の会談です。証拠なしでは協力してはもらえません。でもいくら密猟を禁止しても止めることは難しいのです。むしろ価値が上がって闇市とかでより高額で取引されるだけです」
「けっ! てめぇら魔人だって」
「そう。ですから話しあいが必要なのだと言っています」
「話すって、人間と魔族が分かり合えるもんか」
「人間、魔族。そう難しく考える必要はないと思います。親兄弟で家族、人集めば村、町、国にもなります。そして、人間という種族。そこで魔族や亜人族を入れて知的生命体にするのはどうですか」
「魔族なんぞと一緒にするな!」
今この人を説得する必要はない。私たちの考えを人間族に伝えて、新しい考え方を与えることができればそれでいい。今はね。
「アイちゃんお疲れ。感動したよ」
「リリーナ様、素晴らしい演説でした」
「ちょっと、ロッティ、抱きしめないで! クンカクンカしないで!」
ああ、今無性にアサの声が聞きたい。




