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ピースフルケルベロス編 第6話 幻影でございますか?

 また人間の国に行くことになった。しかも今回はこの大陸の国四つ全部回ることになる。さらに言えばアサのバカが王族殺したから私と一緒に行けない……。原因を聞いてたけど、もっと私の役に立つために強くなりたいんだって……。まあ、やってしまったことは仕方ない。私はアサを抱きしめ、連絡するねって言って出発した。

 今回の目的は人間の魔族への理解を深めること。トーマス主催、マモンをゲストとして参加する人間との公開会談。どれぐらい効果があるのかはわからないけど。

 「誤解の種はね、知らないという土地でこそ芽生えて、吹聴という環境で育ち、間違った

正義感を養分にし、暴力という実を結ぶ」

 「アイちゃん、もうちょっと分かりやすく説明してくれない?」

 「うん。人間は魔族をも魔石にするし、宗教とか色々あって、一緒には住めない。だから、魔族と出会ったことのない人間だって沢山いる。つまり、人間、いや、あなた達獣人だって、魔人のことあんまり知らない。そうでしょ?」

 「そうね。アイちゃんと出会う前に、魔人なんて見たこともないよ」

 「うん。だからみんなの魔族に対する知識は国からしか得られない。国が魔人は人を食うと言えば、魔人は人を食う。魔族は世界を滅ぼす邪悪な存在といえばみんなは信じる。魔人から作れる魔法石はお金になるし、明確な敵がいる方が国にとって色々都合がいい。国民の不満も逸らせるしね」

 「姑息なことを……」

 「どうして? 国として別に間違ってないよ?」

 「あ、あれ? アイちゃん人間の味方なの?」

 「私達はケルベロスなのよ? 人間の味方であり、魔人の、獣人の、いや、その他の種族の味方でもあるのよ。強いて言えば平和の味方、なーんて、大層なものじゃないけど」

 「アイちゃん、すごい!」

 「だからそういうのじゃないんだってば。で、話戻すけど、その間違った認識を少しでも正すために、公開会談を沢山するべき」

 「でも、信じてもらえるのかな? 魔族に対する誤解は根深いし」

 「信じてもらわなくても、疑念を持たせるだけでいい。今はね」

 トーマスは商人の国出身で、色んなコネを持ってる。放送設備や宣伝とかもお任せしていいでしょ。

 トーマスのコネで国王とかも会えるけど、交渉できるカードはあんまりないよね。殺して僕にするのも手だけど、タイサあたりは私が死霊術使えることも知ってるからな。私が人間のトップになったら魔界優勢になって、魔族達が人間界を全力で攻めると思う。だから、上手く立ち振る舞って、一方的にならないようにバランスを保ちながら種族間の理解を深めさせるのが私の計画。

 とは言え、各国のトップも一度会ってみたい。会って、どんなことを考えてるのかを知りたい。

 「アイちゃんが私が思ったよりずっと大人なんだね」

 またか……。また私の中でアイの幻影を追い求める。だからそのアイっていうのは嘘で、最初から存在しないって言ったでしょ! 大人って、私のこと、計算的って言いたいわけ? 無邪気な子供じゃなくて悪かったわね!

 「でもやっぱりアイちゃんはアイちゃんなのね」

 「え?」

 「だって、みんなのやりたがらないことを引き受けるし、芯の強いところも全然変わってないし」

 て、照れるな……。

 「あっ! 赤くなった!」

 「ちょーっと! 見ないで!」

 「え? どうして? こんなに可愛いのに?」

 「そういうのいいから! ほら、宿屋に着いたわよ」

 そう。今はロッティとの二人旅。トーマスとの関係を知られたくないからね。

 「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか」

 「ええ」

 「ご案内いたします」

 この宿屋、子供職員多くない? 5人いるし。なんか一人だけ服が古くて汚いし……。何? いじめや虐待にしたって露骨すぎない? サービス業だよ?

 「ねえ、アイちゃん。あの子」

 「うん、分かってる」

 と言っても、やれること特にないんだけどね。勇者の時は私への好意全く隠してないからだし。

 「アイちゃん、ちょっと待ってて」

 「え? ロッティ、あなたが待って! ねぇ!」

 行っちゃった。はあ、あのバカ……。


 暫くして、ロッティが綺麗な服を持って帰ってきた。

 「ロッティ、何をするつもりだ! やめなさい」

 「どうして? 美味しい食べ物だって買ったのに」

 「よく考えて。あなたが彼女に服をあげたとして、彼女はみんなの前でその服を着れると思う?」

 「そうか……奪われるか、また破られたり、汚されたりするだけか。でも! 何がしたい」

 「気持ちはわかるよ。でも、私達ができることは何もないの」

 「店主に相談して……」

 「無駄よ。見てみぬふりされてるのか、そもそもグルだったのか。じゃないと一人だけこんな格好するわけないよ」

 「アイちゃん、私達ができること本当にないのか?」

 私は青いネコ型ロボットじゃないよ。

 「私達ができることなんてないよ」

 「でも! でも!」

 「責任取れないしね」

 「……責任?」

 「一生その子の面倒を見れる? ライオンズハートに入れる?」

 「それは……」

 「これから出会う可哀想な子供達を全員ライオンズハートに?」

 「……う」

 「さあ、休もう。会談は明日よ」


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