ピースフルケルベロス編 第3話 後 期待でございますか?
やれることは全部やった。私の出番はもうない。これからこの世界がどうなろうと、私に責任はない。とにかく私は今疲れている。
今頃セレン達と勇者達が会議を開いてるでしょね。アサも参加させたから翻訳の問題もない。私が全部悪いってことにしてちゃんと謝ったから、みんな仲良くできるはず。私の使命はもう終わった。そうね。また行ったことのない国に行ってみたい。私の出身国は一番魔法技術が進んでいる。王族と貴族しか使えない混合属性魔法と優れた魔法石加工技術を持っている。隣国は元々獣人を従ったり、いろんな亜人種族と交流を深めてきたけど、今は他の国と組んで聖なる武器のレプリカを作ったり、色々やってて迷走してるらしい。行ったことのない国は女神教の総本山、まあ、この世界のバチカンみたいな国だ。最後は貿易国家。資源が豊富で、経済力も高い。傭兵業を生業してる人も多い。珍しい食材も色々買えるかもしれないから行ってみたい。またアサと旅に出たい。今度こそ目的がなく、目的地もなく、時間を気にすることのない素敵な旅をしたい。
「リリーナ様、お客さんがお見えです」
「え?」
誰? いや、まさか……。アサがよくやってくれてるはず……。
「リリーナ様、何をやっているのですか。早くお着替えを」
ソニアか……。
「いや、あの、アサがいるんじゃないか? アサの魔人語は完璧だったはず」
「いいえ。我々にはリリーナ様が必要です」
必要ない! いや、その期待に満ちた眼差しはやめて!
はぁ……。あんまりあの顔を曇らせたくないな。これ以上悪い人になりたくないから部屋に篭ってるのに。
そうだな。断るのを前提にして上手く言いくるめて……。いやいやいや……。それだといつもの私のやり方じゃないか……。
とりあえず状況だけでも聞いてみようかな。でも……。
「ソニア、あなた勘違いしてるよ? 私はあくまでもスネーク家の養女なだけで、別に魔界の幹部というわけではないのよ」
「いいえ! みんなリリーナ様を待っています。リリーナ様こそ唯一魔界と人間界の架け橋になり得る存在だと、このソニアが保証いたします」
ソニアは私の嫌な部分を知らないだけ。いい部分だけを見せるのも考えものね。もっと楽に生きた方が……。いや、私はもうあんな無防備ではいられなくなった。
あ、でも……どうせまた旅に出る予定だし、いっそのこと……。いや、本当、私って人は……。
嘘を突き通せば真実になる。世界のためとかじゃなく、ゲーム感覚とか置いどいて、真実を知ってもなお私を信用してくれる、期待してくれる人のためにも、ちょっと頑張ってみるというのはどう?




