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ピースフルケルベロス編 第1話 責任でございますか?

戦争阻止編 番外編2 呪いでございますか?も投稿したので是非読んでくださいね。

 剣の勇者が先に起きた。さすが勇者歴が長い剣の勇者さん。私の顔を見て死ぬほど驚いだけど。

 「どうしたの? 幽霊でも見た顔をしちゃって」

 「……リリーナ、ちゃん? だって……」

 「死んだはず」

 一度こんなセリフ言いたかった。

 「その前に」

 「やぁ」

 「ヴァン!」

 ちょっと刺激強すぎたかな? 

 「これは……リリーナちゃん。死霊術ってのはすごいだね」

 親友の生首を見た感想ってそれなの? まあ、それよりまずは誤解を解かないと。

 「いや。先輩は死んでるけど、私はまだ死んでないよ。あの時死んだのは私が魔法石で作ったクローンで、私は背後から敵を襲うつもりだった。クローンにもちゃんと魂があるから二度この魔法石を使わないと決めたけどそれを許す状況ではなかった」

 言うかどうかは迷ったけど。これ以上信用を落としたくなかった。話した方が楽になるとかじゃなくて、最悪の場合、私を信じてくれなくても自分の正義を信じてって言うしかない。

 「……リリーナちゃんのこと、もっと教えてくれない?」

 「いいよ。何が聞きたい?」

 「リリーナちゃんが僕に教えなければならないこと全て」

 「ずるいね、その聞き方」

 「そうだろう〜勇者だからって何もかも堂々とするとでも思った?」

 「……ありがとう」

 気持ちがだいぶ楽になった。勇者ってすごいのね。何もかも話たくさせられた。でも……。

 「そうね。どこから話すべきか。まず、あのクエストでユアンさん達と出会ったのは単なる偶然、ではないよ」

 「……」

 「それに、私は修道女ではなかった」

 「えっ!?」

 「えっ?」

 驚くところ?

 「あ、いや。続けて」

 「修道女の格好してたのは角を隠すためで、私は最初から魔界側の要請でユアンさんに接触しに来た」

 「僕を騙したと言うわけか。ヴァンをゾンビにしたのも」

 「ちょっと違う、かな? 私が受けた要請は魔界に立ち入ったユアンさんの目的を探って、可能であればユアンさんをあの魔獣を討伐させるように仕向けることだけ。それに、私は魔界のために働いてるけど、そこそこ自由なのよ。戦争を止めるためにユアンさんを誘ったのも、魔界と関係なく私自身の意志。だって、私も最初は人間だったから。考え方も人間のままよ」

 「そう、だったのか」

 「あと、魔王が復活したことはもちろん知ってるよね」

 「ああ」

 「正確に言えばそれは魔王ではなく、魔王の体を奪った、人間を憎む魔人だったの。で、そのことを知ってるのは魔人の中でもごく一部だけ。そう、セレン派とでも呼ぶか」

 「リリーナちゃんもそのセレン派なのか?」

 「一応はね。だから、魔人か人間かどうかは関係なく。私は、私達は平和を願っている」

 「分かった。リリーナちゃんは悪い人じゃないことは分かった。リリーナちゃんを信じよう」

 「いいの? そんな簡単に信用しちゃって。これから同族である人間と戦うことになるかもしれないよ」

 「そうならないようにリリーナちゃんが頑張ってくれると信じてる」

 「だからどうしてそんな簡単に人を信用できる!」

 「それはまあ、リリーナちゃんずっと苦しそうな顔してるからさ。勇者としても、一人の男としても、何をせずにはいられないだよ」

 「え?」

 いや、私そんな顔してた?

 「それに……」

 「それに?」

 「いや……あ、そうだ。もう一つ聞きたい。ヴァンのことなんだが。ヴァンは……ヴァンはまだ死ぬ前のヴァンだったか? 今は首しかないが元に戻せるのか?」

 「残念ながらヴァン先輩はもうもとの先輩ではなく、先輩の記憶を継承した別の魂だ。あと、首をこのままにしてもいいし、別の体にくっつけることもできる。でも……」

 「そうか。分かった。ヴァンを楽にしてやれ」

 

 ユアンさんはそれでいいとして。問題は槍の勇者なんだよね。私の戦争を止めたいという言葉を信じて、命令に背いてまで戦争を参加しないと国に意志を表明した。けど結局戦争は阻止できなかった。そのせいで、それにエマさんの態度を見てチャーリーさんが国内でどんな扱いされるのが容易に想像できる。それでも、私を信じてくれた。なのに……名前は偽名だった。チャーリーさんの私への気持ちを知りながらも恋人がいることを黙っていた。チャーリーさんのパートナーであるエマさんを殺した。アサを暴走させ、結果的にチャーリー本人にも重傷を負わせた。それだけではない。謝らなければならないことが沢山ありすぎてどう謝ればいいのかわからなくなった。

あー……生理が近いせいかイライラしてて集中ができない。

 男はいいよね。本当に羨ましいよ。もし私が男だったら、アサや桜子の気持ちを受け止められたのかな? 私が男だったら……いや、やめよう。いくら考えても現実は変わらない。私は男にはなれないの。それに、自分を愛せない人は他人も愛せない。自分を愛せない人は幸せになれないよ、決して。

 はあ……とにかく、チャーリーさんのことを考えよう。チャーリーさん私のこと好きだし、もしかしたら……。いや、だから人の恋心利用するなって! この際だから隠し事を全て打ち明けて怒って貰おう、そしてその怒りを受け止めらければならない。私にはその責任がある。アサと桜子との日常を守るためにも私が変わらなくちゃ!

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