戦争阻止編 第11話 前 素でございますか?
そう、選ばれし魔法使いしか使えないという混合属性魔法、氷魔法。でも私にとって氷魔法はバナナの皮の代わりでしかない。
いつものコンボで着地狩りよ。氷魔法で地面を滑りやすくして、後頭部の運も抜く。そしたらどうなると思う? ゴンってすごい痛そうな音が響いた。ヘルメットでも被るべきだったね。即気絶した。
「アサ、五体満足にしてあげて」
「わかった」
「みんな、アサの援護お願いね」
「おう」
「何をする気? あの女を止めろ」
あの女性、確かエマと言ったな。ありえないスピードで矢をうってくる。二秒で矢三本は飛んてきてると思う。チャーリーはそれらを難なく叩き落とす。その隙にアサはあの気絶してる敵の鼻と口を手で覆って、水の魔法を発動した。うわー、エグいな。肺の中に大量の水を入れて溺死させるつもりだ。いや、確かに四肢欠損させないでって言ったのは私だけどさ……。
まあいい。ここからは私の仕事だ。エマにこの魔法を知られたくないけど、知らされたからには……。かと言ってエマを殺したらチャーリーの信頼を失いかねない。ちょっと細工しなければね。上手くいくかどうかはわからないけど。
「リリアちゃん、それは……」
「死霊術! ほら、チャーリー、見たか? やはりこの女は悪だ! あんたは騙されたのよ」
「……違うの、これは……」
どう説明すればいいでしょ……めんどくさいな。仕方ない。悲し顔をしながら顔を逸そう。
「チャーリー、それには深いわけがある。今はまず戦闘に集中しよ」
ユアンさん? あ、そっか。ユアンの中では私は無理やり魔族にされた設定だった。ユアンナイス!
いや待ってよ。ユアンの中では私は魔族された人間で、チャーリーの中では私は獣人。例え後でユアンが説明してくれたとして、私がチャーリーを騙したことに変わりはない。こうやって信用は失っていくんだよ。
……だって仕方ないじゃないか! 怖かったんだよ! いつか誰かに裏切られるのかわからないから! 素の自分を出すのは何より怖いのよ! 自分の素性なんて明かせるわけないじゃないか! アサや桜子は私のことすごい人だと勘違いしてるようだけど、私はそんなに立派な人間じゃない。
「あの女は危険すぎる。生け捕りはもういい! あの女を優先的に殺せ!」
知ってた。こうなるのは知ってたよ。対策を考えたとは言っていない。が、それで私を入れて6対7だ。だいぶ楽になるはずだ……と思った時期が私にもあった。ゾンビが聖なる槍を握る瞬間に手がちょっと明るい、黄金色?の炎に焼かれて右手がないなった。




