戦争阻止編 第10話 前 決断でございますか?
策? 珍しいね。アサは基本的私を頼る傾向があるから、何も考えず私の指示を待つのが普通なんだけど。
「何、策って」
「私があいつらを引き受けて、リリーナはその隙に勇者を連れて逃げなさい」
「え!? それって……」
死亡フラグじゃん。
「アサ、死ぬ気?」
「あ、いや、私があいつらを片付ける。だからリリーナは先に逃げて! ウィンドブレイド!」
「いや。それ矛盾してるよ。アサが1人で片付けられるのなら、勇者と共に安全に奴らを倒すべきだ。何より、アサが勝てるのならそもそも逃げる必要ないし」
「いいから、ここは私に任せて。私の魔力が尽きる、もしくは勇者の誰かが傷を負って戦闘出来なくなったらそこで戦線が崩壊する。私が全力出せるうちにリリーナが勇者を連れて逃げるべきだ! リリーナは世界平和のためにずっと東奔西走してた! ずっと頑張ってた! リリーナのために私はなんだってするって決めてたから!」
そうか。アサの目に私はそんな風に映ってたのか……。そうだね、アサの判断は正しいかもしれない。ここで勇者を死なせたら次の手がなくなる。今までしてきたことが全部水の泡になるかもしれない。
そもそも、ここであいつらに捕まえられたら……拷問……。考えるだけで足が震える。あんな思いはもう二度としたくない。時々思うだ、今は前世と違って前世の記憶も持っているし、お母さんと桜子もいる。何より、この運を操る力だってある。でも、もしかして今世も誰かに裏切られて残酷な死を迎える運命なのかもしれないって。
今までずっとゲーム感覚ってやってきた。アサや私が死ぬなんてこと考えもしなかった。運チェックに頼りすぎだ。だからこんな羽目になっているのよ!
この世界のためにも、この場をアサに預けるべきだ。でも、私は一応アサの恋人だ。例えアサに恋していなくても、アサの気持ちを受け止めると決めていた。……でもアサは私が逃げることを望んでいる。ここはアサに任せるべきなのでは?
そもそもアサが言ってた通り、このまま戦ってもジリ貧になるだけ。全員捕まえられるよりアサ1人を犠牲にした方がいい。こっちの方が……合理的ではある。打開策がない以上、このまま勇者2人を死なせ、私とアサが捕まえられるか、アサを見捨てるの2択しかない。でも、アサは拷問される末に私への感情が憎しみに変えるでしょね。私がかつて愛した弟や妹を憎むようになったと同じく。
「リリーナ、もう時間がないの! 早く決断して!」
私は……。




