戦争阻止編 第7話 後 雄弁でございますか?
「なるほど。話は分かった。クレスとはそんなに長い付き合いではないんだけど、こんなことを思い付く子じゃないことは分かる。リリーナちゃんだな」
「そうだけど」
「確かに、これくらいの戦力を揃えられたら魔王も人間も無視出来ない。が、威嚇だけでは停戦させられない場合、魔界と戦わなければならない状況になってしまう。お前は魔界を敵に回る覚悟はあるのか?」
「ある!」
「私はないな。魔王様の体が奪われる前に、私は魔界の最高責任者みたいなものだ。私は常に魔界のことを第一に考えなければならない。例えこんな状況になっても、魔界と敵対することはしない!」
「でも戦争を止めないと!」
「そのために魔族と敵対したら本末転倒だって言ってるのよ!」
「でもっ!」
もー! すずとすずの母さんは頑張ってるのに私だけが結果出せないなんて……。
「私はあくまでも魔族の被害を減らすだけ。戦争を止めるのはあくまでも手段であって目的ではない。お前はどうだ、クレス」
すず、助けて! 私はすずのように雄弁じゃない! そうだ、すずに電話して……。
そうだ。私がセレンを説得するなんて最初から無理だったんだ。
……でも、すずに頼ってばかりじゃあすずの母さんには勝てない……。でもなー、今戦争中なんだよな。私情を挟むのもどうかと思う。いやいやいや、こんな時こそ、私が成長しないと。すずならどんな風に説得するのか。
「じゃあ、魔王をこのまま野放しするか? あいつ、魔人が最後の一人になるまで戦争する気なんだぞ」
「……そうね。でも、今、人間との戦争中に、魔族と敵対するのは良くない」
「す……リリーナは勇者二人を仲間にしようとして人間界に行った。人間でも魔界との争いを望まない人沢山いる。我々魔族は人間と分かり合えるはずだ。そうすれば……」
「分かり合える? 言葉も通じないのに?」
「言葉の壁なんて時間さえあれば解決できる。リリーナもいるし」
「だとしてもだ! 私は魔界の利益を第一にしなければならない。魔族と人間が手を取り合うなんて所詮空言、とまでは言わないが、戦争を止めるために、人間と共同するのは違うと思う」
「どうして?」
「クレスこそ、接触した人間はリリーナちゃんくらいでしょ。どうして人間を信じられる?」
どうしよう? 前世のこと言えないし。
「逆にセレンはリリーナを見て何も思わなかったか?」
「魔族でもいい魔人と悪い魔人がいる。いい魔人だけを見て魔人全員いいやつと思ってしまうのはただのバカだ。それにリリーナちゃんは元人間で今は魔人だ」
すず、助けて……!




