戦争阻止編 第7話 嫌悪感でございますか?
「わかりました。リリーナ様に会う前に、誰一人私のことを一人の魔人として認めてくれる魔人はいませんでした。リリーナ様は私の人格を認めてくれて、居場所までくれたからこそ、今の私がある。リリーナ様のご命令であれば」
ご命令……命令ではなく、事情を話してお願いしたつもりだったけどな。ソニアといい、アサといい、私を理解してくれる人なんて……。
ソニアは努力したと私に言った。人間のことをわかろうとした。でも好きになれなかったって言った。その気持ちはわかる。私も、すずしろだった頃、バイト先に黒いマニキュアしてる男性バイトさんがいた。別にそういう偏見は持ってないし、女々しいとかそういうの全く考えていなかった。そういうのは本人の自由だと分かっている。頭は理解している、つもりだけど、気持ちが……。なんというか、理屈じゃない。生理的に無理というか……。気持ち悪いから見ないようにした。それでも、目に入ってしまう。ううん、気が抜いたらまた目で追ってしまう。そして、爪を見る度にその人への嫌悪感が増して行く。自分は理性的で客観的な方だと思っているけど、黒い感情は心の底から湧いてきて止められない。
納豆嫌いな人に納豆のよさ、ゴキブリ怖い人にゴキブリのよさを伝えようとしても嫌われるだけ。だから、私がどんなにソニアに、人間皆悪いわけではないって言っても無駄というのは分かっている。
はぁ、私の言葉を基本的に鵜呑みしてしまうソニアでさえこのざまだ。前途多難だな。
セレンは桜子に任せるとして、私は魔王派をどうにかできるかを考えてた。説得するためにまずは相手を知る必要がある。私はアンケートを作り、ソニアに頼んで魔王派にアンケートを答えさせた。
アンケートを持って来たソニアの表情を見れば内容は予想できた。でも、内容は私の予想の上に行った。
アンケートは開いた質問多めにした。どの程度勝算があるのか、勝てるとして、どの程度の犠牲を予想してるか、など。しかし、得た回答は魔王様がいれば負けない、魔界は不滅みたいな希望的観測ばかりだった。中には、人間を滅ぼせるのならどんな犠牲を払っても厭わない、魔族が力不足というなら滅んでも仕方ないという輩がいる。説得は無理だ。説得ところか、こっちが戦力を揃ったところで結局武力介入しなければならなくなるかもしれない。
この戦争を止めるために、私はいくつも策を講じた。しかし上手く行った策は一つもなかった。そもそもこの戦争は私みたいな信念がないやつが止めていいのか? 他人のために、だと思ってしたことが無意味で、破滅に向かったアイの二の舞を踏まなければいいけど。




