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戦争阻止編 番外編 感想でございますか?

桜子とアサ今日も喧嘩してる。

 「それってあんたの感想でしょ! なんかそういうデータとかあるの?」

 それを口にしたのは桜子だった。もちろんアサは言い返せない。普段だと私はこの二人の口喧嘩に介入することはなかったけど。

 「そのフレーズ、あんまり使わない方がいいよ。バカに見えるから」

 「え!?……リリーナ?」

 「すず……?」

 二人とも鳩が豆鉄砲を食ったよう顔してる。

 「その、あなたの感想でしょってフレーズあんまり使わない方がいいて言ってるの」

 「うん。わかった。もう使わないよ」

 「どうして?」

 「え? すずがそう言ったから」

 「いや、私が言ったから使わないではなく、脳死に使うのはやめて欲しいって言ってるのよ」

 「脳死に……どういうこと?」

 「えーとね、そのフレーズは個人の感想を否定し、データを盲信してるように聞こえるから。そんなことするのはただのバカだと思う」

 「でもすず、個人の感想より、データの方が正しいじゃない?」

 これだから俗物は……。いや、天才気取りは良くない。バガにも、いや、誰にも納得できるように説明できる人こそ、尊敬される。

 「えーとね。丁半って知ってる?」

 「知ってるよ。サイコロの出る目が偶数か、奇数かに賭けるゲームのことでしょ」

 「そう。もし、連続19回偶数出たら、二十回目に偶数が出る確率は?」

 「えーと、サイコロ二つ、いやでも、奇数と偶数の確率は同じなはずだから二分の一。分かった、二分の一の20乗だ」

 「違う。何回偶数が出たとしても、次に偶数が出る確率は二分の一だ。これがデータの限界だ」

 「でも、こんなに偶数を出てるってことは、やはり偶数の方が出やすいなのでは? 偶数出やすいようにしてるとか。そんなに偶数出てるのに必ず理由があると思う」

 「そうね。出る目をコントロールできるかもしれないね。でも、それこそデータは意味ないことを証明してるじゃないの? 結局出る目は振る人の気持ち次第だし」

 「それなら、十九回偶数振ったから、二十回目も振る可能性が高いなのでは?」

 「十九回に渡り偶数を出すことで、奇数を賭ける人がなくなり、そこで奇数を出す可能性だってあるのよ」

 「二十回目でも奇数に賭ける人がいるかもしれないじゃない」

 「そう。それこそ私が言いたいことだよ。データは結局推測にしか使えないって。脳死にデータを信じるより、状況を判断して頭を使った方がいいってこと」

 「でも、実験データとかあるんじゃない」

 「人はいつか死ぬとか、そういう絶対に正しいことなんてそんなにいないよ。同じ実験を繰り返しても、全く同じ結果を出すことは決してありえないからね。誤差は絶対避けらない。だから同じ実験を繰り返して、複数の似たような結果を採用し、それらの結果とかけ離れる結果を誤差として扱うの。つまり、やはりデータは推測の域から出られず、保証の域に入れないってことだよ」

 「でも、例えば実験を千回繰り返して、一回しか違う結果が出なかったら、それはもう正しいと言えるでしょ」

 「千一回目でまた違う結果が出る可能性はある。結局絶対に大きく違う結果が出ない保証はできない」

 「まあ、そうだけど」

 「納得出来てないような顔してるね。まあ、ちょっと極論すぎたかもしれない」

まあ」

 「じゃあさ、千、いや、一万人、私のことを知らない一万人に私についてアンケート調査を取った。その一万人分のデータはアサと桜子より、私のことを正しく理解してると思う?」

 「全然思わない。この世で私よりすずのことを良く知ってる人なんていない!」

 「いいえ! リリーナのことを一番良く知ってるのはわたくしです!」

 「違うよ。私のことを一番良く知ってるのは私なの」

 「「……」」

 「あはは。で、話を戻すけど、データの一種であるアンケートの結果は恣意的な操作によって捻じ曲げることができる。例えば、広島風と大阪風のお好み焼き、どっちの好きな人が多いのかというアンケート調査を、広島にだけ行ったとして、調査する側がそれを公表しない限り、それは立派なデータだ」

 「あり得る話ね。ただでさえアンケート調査って時間もお金もかかるし。結果を操作しようとしなくても偏った結果にしてしまうことは少なくない思う」

 「あとは、そうね。桜子は裁判員で、とある専門家が百人の男性に実験を行った。美人さんと二人きりになると、美人さんを襲わなかった男性はいないという結果が出た。だから被告人も襲ったに違いないって証言した。桜子はその実験データで被告人を有罪だと決めつける?」

 「しないと思う」

 「それに、歴史、新聞報道。絶対信用出来るものなんてあるの? あとは、そうね。履歴書というデータがあるのに、面接が必要。つまり、データはあくまでも参考用で、証拠にはなれない。データを過信せず自分の頭を使って考えてから結論を出すべきだ」

 「なるほど。納得できた」

 「それに、ね。桜子はデータほしくて、アサにデータを求めたの? データ出せないと思ってそう言ったでしょ」

 「……まあ」

 「それって、喧嘩してる時、何時何分何秒地球が何回回ったと言ってる子供とどう違うの?」

 「あっ……」

 「そういうことよ。口論は別に悪いことではないよ。よりいい考え方ができるようにお互いの思ったことを言い合う行為なんだからね。だから私、一回も介入しなかたでしょ」

 「「うん」」

 「でも、相手の意見を聞こうともしないようにしたり、人格攻撃したりするのは良くないと思う。これはデータもソースもない、私のただの『感想』だよ」


第5話前も投稿しました。

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