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魔界防衛編 第10話 元凶でございます

 「すず、疲れてるところ悪いんだけど。戦争が始まったの」

 「は?」

 「今朝、魔王が魔界近くに駐屯してる人間の軍隊に奇襲をかけた。人間たちも応戦してそのまま戦争に突入した」


 あ、これ、私のせいだ。何て魔王ならきっとこうやるって予想しなかったの……。無駄足、全部台無しだ。ううん、それだけじゃない。槍の勇者も、剣の勇者も私に騙されたって思ってる。私は二人を裏切った。最低だ。でも、私だってしたくてやったわけではない……。なんでだよ……被害者ぶらない、なるべく人を利用しない、裏切らないって決めたばかりなのに……。


 「セレンさんは? 何か打つ手はないのか」

 「セレンさんも頭抱えてた」

「でしょね。今更魔王の一存は我々の総意ではないと主張してもな。セレンさんが謝っても、魔王がまた何かしてやらかしたらたまったものじゃないよ。それに、変に腰が低くして人間になめられたら、更に悪い状況になってしまう。とりあえず桜子は戦いに備えて」


 私は……。私が今出来る事は……。その前に、本当に魔人になるのね、人間を捨てて……。でも、アサは……。ううん。アサの事だから種族云々より、私と一緒にいたいはず。まあ、答えはわかるけど形式上聞いて見ないとね。あっ! 思いついた。アサをオカン家にスパイとして送り込むのは……。

リリーナ・ナナリー……お前いい加減にしなさいよ! アサを大事にするって言いたばかりじゃないか! はあ、私って人は……。

 でもスパイという案は悪くない。それもオカン家だけではなく、各国の貴族や、軍人の家系にもスパイ一人潜入させてほしい。あっでも、こうすると死霊術がバレて警戒させてしまう。けれどそれも悪くない。疑心暗鬼させれるからだ。まあ、今はその時じゃない。

 とりあえず今はブレイク公爵の意見を聞いてみよう。


「ブレイク公爵、今朝の件はもう聞いたよね」

「ええ。もちろんですとも」

「何か策はないのか?」

「すでに始まった戦争を止める方法なら残念ながらございません。元々不仲な国の関係を煽り、揺さぶるのはそれほど難しくはありません。ただ、私が動きすぎると怪しまれてしまうので、他の協力者がいると助かります」

「そっか。分かった」


やはり他の国にもスパイを送り込むべきだ。


 「そういえば、魔王って昔何やらかしたの? どうして魔王目覚めたらすぐ討伐しようとしたの?」

 「歴史のことはそれほど詳しくはないが、幾つの仮説が立てられてます。まず、魔王が……、あ、魔界は眠りについたと言っていましたが、我々は魔王が勇者によって深手を負わせたと考えている。魔王は傷を癒すために隠れ、我々に復讐するために動物を魔物化したと考えています。これが最も有名な仮説です」

 「魔物は魔王がいなくなってから出現するようになったのか」

 「その通りでございます」

 「じゃあ、ゴブリンは? ゴブリンは動物じゃないよね? ドラゴンは?」

 「ゴブリンは人間の子供だったという説があります。ドラゴンはトカゲでしょうか。なにぶん私も専門家ではないのでその辺は詳しくありません」

 

 そっか……。まあ、幻想生物って実在する動物のキメラという説もあるしね。天使は人と鳩、悪魔はコウモリ、龍は確か鹿と鰐、あとは鷹と蛇?


 「様々な仮説がありますが、魔王が悪である説が殆ど、全部と言っても差し支えないでしょう」

 「そっか。じゃあこれは口でどうにかなる問題じゃないよね」

 「リリーナ様、そもそも魔王が悪かどうかはそれほど関係ないのです」

 「どういうこと?」

 「魔界の王は魔王だとして、この大陸の人間の国々を掌握しているのは誰だか、知っていますか?」

 「それはまあ、王様達、いや、民? いや、ちょっと待って、女神様、教王とか?」

 「違います」

 「多分これは私が時間かけても出せない答えだ。教えて」

 「はい。それは、資産家でございます」

 「資産家が? 世の中金が全てって言う人もいるけど、どうやって? 王様の命令は逆らえないでしょ」

 「この大陸で一番の資産家は誰でしょうか」

 「トーマスって言う魔法石商人でしょ」


 確か、大陸中の冒険者ギルドと契約してて、そのチェインストアはどんな田舎でも必ず一店舗はあるという。


 「考えてみてください。もし、彼がこの国から事業停止や撤退でもしたら」

 「国営化しちゃダメ?」

 「この国にはない魔物もいます。それに、国はトーマス企業ほどの加工技術はありませんし」

 「それはそうと、そのトーマスがこの戦争とどんな繋があるの? 黒幕はトーマスってこと?」

 「まさにその通りでございます。魔界討伐させたのはトーマスをはじめとする資産家たちだ」

「まあ、魔法石沢山作れるしね」

「それだけではありません。魔人が邪魔だということもあります。取引先にはなれない、魔法石を忌み嫌うから使わない、食事を摂る必要もありません。にも関わらず、魔界は大陸の三分の一を占めてる。それと、リリーナ様も知っている通り、魔法石は武器でもあります。戦争になれば莫大な利益を産む。加えて我が国との戦争を見て、魔界は恐るるに足る敵ではないと知った奴らに、資産家クラブ、ネアに魔王討伐の大義名分を得たとなると、攻めないわけがありません。この戦争は起こるべきして起こった戦争と言えるのです」


 うん……何しようか。暗殺?


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