魔王覚醒編 番外編3 悪魔でございますか?
この話は実在の人物や団体などとは関係ありません。特定な宗教を否定するものではありません。
「そういえばすず、明日私はとある貴族の666歳の誕生日パーティーに行くことになったの、すずに同行してほしいの」
「魔族でも誕生日祝うのね」
「リリーナは明日私とゴロゴロするの」
また始まった。どうにかして話を逸らさないと。
「666か」
「あー、666って悪魔の数字だよね」
「うん。まあ、実際は悪魔ではなく、キリスト教を迫害したと言われてるローマの皇帝、ネロを指す数字なんだけどね」
「そうなの?」
「その説が有力らしい。そういえばスズシロだった時悪魔について考察したことあるの。悪魔はなんのために作られたのかを。なかなか面白い説を立てた」
「超面白そう? 聞かせて」
よし、食い付いた。
「あくまでも私の考察で信憑性も根拠もないよ」
「悪魔だけに?」
こののりちょっと懐かしい。
「寒いギャグでリリーナの話の腰を折らないでくださる?」
「あ、すず、ごめん」
桜子、昔と変わんないのね。
「じゃあ、話すよ。そうね、私は癌を患った女性役、アサは神父さんね」
アサ昔試練とかよく言ってたし。
「神父さん。私、末期癌で余命一ヶ月なの」
「うん? ああ」
「どうして私はこんな目に遭うの? 私何か悪いことでもした? 主は私のことがお嫌いなの? こんなにも信仰心深いのに」
「あ、いや、その……主は……あの、えーっと、その……あ、試練、そう試練なの。これは主が与えて下さった試練よ。乗り越えれば天国に行けるよ」
そう、この言葉を待っていたよ。アサを神父役にして正解だった。
「天国になんて行きたくないわ。私は生きて家族と一緒にいたいの! そうな試練を与えるなら私はもう主を信じないわ! さて、神父さん、どう言い返す?」
「え? あ、その? どう言い返せばいいでしょ」
「誰でも死ぬとか? いい事をすれば天国で会えるとか?」
「誰でも死ぬけど、主を信じてる私はもっと長い生きするべき、そうじゃないと主を信じる意味ないじゃん。天国で会えるなら家族全員も一緒に死ね。数十年も家族を待ちたくない! 家族の誰かが悪いことをしたらもう会えなくなるの?」
「えー? あー、もう何を言えばいいのかわかんない」
「そうね、キリスト教の人たちはこう言ったと思う。貴女が癌になったのは主のせいじゃない、悪魔の仕業だ、とね」
「「あっ! なるほど。責任を悪魔に押し付けるわけか」」
「試練だと、神様のせいになっちゃう。だから神様の敵を作ったと思う。で、悪魔が悪いならどうして神様は悪魔を全部倒さないのって聞かれるはず。一神教だから神様が無敵じゃないとダメなの。でも、神様に匹敵するような悪魔が自然、かつ簡単に生まれてくるのもだめ。だから悪魔は神様よりやや弱く設定しなければならない。これが悪魔に堕天使が多い理由だと私は思うの」
「どういうこと?」
「神様によって作られたイコール神様より弱い、自然に生まれて来るわけでもないことになる。で、堕天にした理由は神様が原因にするわけにもいかないから、堕天した天使のせい
にする。一番有名なのはルシフェルが神様に嫉妬して堕天にしたエピソードじゃないかな。あとは他の宗教の神様を悪魔にした悪魔と、創作物で登場する悪魔かな? 一番有名なのはメフィストだっけ?」
「メフィストって聖書に登場する悪魔じゃなかったの?」
「うん。文学作品の中の悪魔らしい」
「へー、そうなんだ」
「まあ、私はそう考えただけ。あくまでも考察だから」
「でも十分ありえると思うよ」
「理に適ってると思うし」
「面白かった?」
「うん、面白かった」
「面白かったけど、なんかちょっと夢のない話だなって思ったの。だって、悪魔が存在しないと、魔法とかも本当はないじゃないかなって思う。まあ、今魔法のある世界にいるけど」
「女の子みんな魔法や占いとかが大好きだもんね。あ、そういえば魔女も薬をキメて箒で股間摩擦するただのヤク中という説があるの。魔女の軟膏のレシピを研究すると、魔女の軟膏には催淫作用と強い幻覚作用があるらしい」
「つまり、魔女が箒で空を飛ぶというのは……いやー、知りたくもなかった!」
「お日様の匂いの正体はダニの死骸だった的な?」
「いーやー! やーめーて〜〜!」
「あは、あはははは。大〜丈〜夫〜、ダニ死骸説はもう覆されたらしいよ」
「「……っ」」
「ちょっと! 2人して見惚れてないでよ」」
「だって、ねぇ」
「う、うん」
「2人やっぱ仲良いのね」
「良くない!」
「よくないわ!」
「あはは、じゃあ私はドラゴンさんに竪琴を聞かせに行くね」
「「行ってらっしゃい」」
明日は部屋でゴロゴロしようか。はあ……1人でいられる時間かほしいよ。でも、やはりこの2人といると楽しい。魔界に来た甲斐があったかも。




