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本編 第4話  魔界でございますか?

 「リリーナ・ナナリー、アサ・オカン、後で職員室に来るように。」


 私だけじゃないのね。どういう要件で呼ばれてるのでしょ。


「えーと、ナナリーさん、一緒に行きませんか?」

「うん。行こう」


 この人が例の貴族なのね。私と違って本物の貴族。綺麗な髪だね。ラベンダー色か、異世界ならではの色ね。しかも長くて腰まである。優しそうな顔してるけど、私は見た目だけで判断するおバカさんじゃない。


「ナナリーさん、呼ばれる理由はご存知でしょうか?」

「知りません」


 つい敬語を使てしまった。六歳、教育受けていない私が敬語を使うのは何が不自然かも。


「あら、ナナリーさんも礼儀正しいのですね、あなたとは仲よくなれそうですわ」


 何この人、馴れ馴れしい。


 職員室が遠い。ようやく着いたか。少なくとも十五分は歩いたと思う。この体でこれほど歩いたのは初めて。セレナお母さんが過保護すぎるのもあると思うけど。


「遅いよ、二人とも。これから毎日ここに来てもらうからもっと足を鍛えましょう」

「毎日って、私を委員長にするなんて言わないよね」

「惜しい。副委員長よ。委員長はアサ、あなたよ。」

「わたくしのような未熟者でよろしいでしょうか。かような大役、とっても務まりません」

「ならあなたよりも上手く務まる人の名前を言ってごらんなさい」


 これはあれだね。まずは断るふりをして、最後は仕方なく受け入れる。

 こんな歳でこのような技をすでに修得しているのか……恐ろしい子。


「では、謹んでお受けいたします」

「リリーナも勿論文句はないよね」

「なるほど。これが前に話したあの件の結論か。わかった」

「「リリーナ、あなた、本当に六歳の子供か?

 あたしの本意を見抜いたのは、大人ならともかく、六歳の子供が――それに、アサの前であの件を言い出すなんて、こんなに用心深いことは、英才教育を受けたアサでもできっこないよ。」

「オカンさんのこと詳しいなのね。知り合いか?それとも、オカンさんはそんなに有名なの」


 もう子供ぶる必要はない。お母さんとは違って、あたしが大人っぽい行動をとっても、嫌われる心配はない。だって、この人はあたしのこんな不思議なところに興味を持っているから。


 オカンさんとは長い付き合いになにそうだい。ずっと隠すのは大変そうだし。それに、彼女は多分、あたしを守るように先生から命じられているから、先生の意思に逆らうようなことはしないはず。


「アサは私の姪だよ」

「よろしくお願い致します、ナナリーさん」

「ええ、よろしく。」


 リリーナっていいって言いたいところだけど、この人とはあんまり仲良くなりたくない。だって、この人と行動をともにすると目立っちゃうから。


 リリーナはすずしろと同じ顔だから美人になるはず。いや、自分で言うのはなんだかナルシストっぽいけど、今も結構美少女。ううん、正しい自己認識も重要よ。とにかく、こんな私があの貴族と一緒にいるだけで、みんなの注目を浴びてしまう。


 あのバカ教師、私を目立たせてどうする。


「ナナリーさん、わたくしと同じ部屋ですから、ご一緒に参りませんか?」


 部屋も一緒か。貴族様だし、個室ぐらい用意されるのでは?


「ごめん、私ちょっと用事が」

「そうですか、残念です。では、ご機嫌麗しゅう」


 やりたかったことがあるの。転生の時お願いしたから、私は遠くても桜子を感られる。でも凄く遠いところにいる。まずは図書館で調べないと。


 この世界にも羅針盤のような方向を示す魔法アイテムは存在する。


 今夜は冷たいお風呂に入らなくちゃいけないみたい。

 どうしてこんなに容量が少ないんだろう、魔法石って。200MAは少なすぎる!ただでさえお湯を沸かす魔力が足りないのに。


 はぁ、仕方がないか。元々桜子を探すためにこの世界来たから。


 えーっと? この方角は、魔界……。


 ここはもう人界と魔界の境目だから……うん、間違いなく魔界ね。

 はぁ、桜子を探す道は波乱万丈だ。


 じゃあ、魔界に関する本でも読もうか。


 どれどれ三百年前、かつて人間と魔族が友好関係にあったころ、人間の王は友好の証として、人間と魔族が共に女神の像を築き上げることを試みた。しかし、うまくいかなかった。魔王と王が意見を異にしたからだ。魔王は女神を「貧乳」と主張し、けれど王は女神は巨乳でなければあり得ないと主張、最後には戦争へと至った……。


 馬鹿馬鹿しい。魔王も王もバカなの? 死ぬの? こんなことで戦争起こしちゃうの? ただの言い訳しか聞こえないけど。


 続き読もうか。魔王軍は魔王によって統べられる。その下には『イエス!魔界戦隊ファイブ』というエリート集団がある。


 闇のスネークは黒竜騎士――最強のドラゴンに乗って戦い、純粋な力で全てをねじ伏せる。

 火のゴーストは人魂を操り、鬼火で敵を焼き尽くす。

 風のプラントは魔界植物を生やして戦い、毒と根で敵を翻弄する。

 水のセイレーンは歌いながら戦い、魔物を強化し、人間を惑わす。

 最後に、土のタイサ――ネクロマンサーは屍を操って戦い、

 敵を同士討ちさせる。


 でも人間も負けていない。選ばれし者、勇者だけが持つ聖なる武器は四つある。聖剣『メカミノハネ』、聖弓『メカミノカミ』……。羽と髪? これは人間の言葉ではない。あたしはどんな言葉でも読めるから分かる。

 あとは聖槍『メカミノハナミズ』に聖盾『メカミノハナクソ』……。女神様、勇者に何を持たせのよ……。

 

 女神、王、魔王――まともな者なんていなかった。ダメだ、疲れた。帰ってお風呂でも入りたい。

 あっ、お湯沸かさないとね。冬じゃなくて本当に良かった。


「お帰りなさい、ナナリーさん。お湯が沸きましたわ。事情はおば様から聞いております。あなたの魔力のことは存じ上げておりますので、助けが要るのなら、遠慮なくお申し付けくださいね」

 貴族万歳! ルームメイト最高ぉ!

応援ありがとうございます、これからもよろしくお願いしますね。


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