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魔王覚醒編 第5話 力でございますか?

 「ロッティ、よろしくね」

 「任せて、アイちゃん。あ、リリアちゃんだっけ」

 こいつ……。

 「アイさんってロッティさんにとって大切な獣人だったんだね。私、そのアイさんの代わりにはなれないかもしれないけど、アイちゃんって呼んでいいよ」

 「ありがとう、アイちゃん!」

 ちょ、そう言う意味じゃあ。そうだね、アイちゃんはもう死んだんだね。リリーナをアイちゃんの代わりにするなんてよくないわね、みたいなのを言わせるつもりだったけど……。

 「そんなに似てた?」

 「似てると言うより瓜二つだ。匂いも同じ。同一人物としか……」

 「そう……?」

 獣人って、本当に面倒。最初から知っていたら匂いもなんとかしたのに。

 「でも前に言ったよね、そのアイさんがロッティの目の前に死んだって」

 「うん」

 「どんな方だったの?」

 「とっても健気で思いやりが出来て可愛い子だった」

 「素敵な獣人だったのね」

 「そうなんだよ!」

 ロッティと再会するなんて予想してなかった。どうするべきか。本当のこと教えた方がいいのか?

 「ねぇ、もしあのアイさんがまだ生きていたら……」

 「今度こそ守る! 絶対にアイちゃんを死なせない! そのために私は強くなったのだ!」

 いや、ダメだ。アサと付き合ってるし。ロッティと必要以上に仲良くなったら色々面倒そうなことになる。桜子2人になったらたまったものじゃないよ。

 「でもアイさんはもういない。死んだのよ! いい加減に現実を見なさいよ。アイさんだってこんなロッティを見たらきっと悲しむわ」

 「……」

 あっ、しまった! このタイミングで言うべきじゃなかった……お願い事してるのに。

 「性格までアイちゃんそっくりなのね」

 「は?」

 いやいやいや……。

 「アイちゃんもね、みんなが言えないことを悪ぶって言ってしまう子なんだよ!」

 あー、そうだった。

 「アイちゃんが言ってることはわかる。でもアイちゃんを忘れるなんて出来ないし、したくもない」

 説得は無理そうね。ロッティとは根本的に考え方が違う。だってロッティは過去に囚われることは悪いことだと思っていないから。

 「分かった。じゃあしっかり私を守ってくださいね」

 「……っ! あ、アイちゃん!」

 抱き締めてきた。耳触りたいかも。尻尾も触ってみたい。でも本当にこれでいいのかな? 自分の首を絞めているような……。

 「そろそろだ。ここからは静かにしないとね」

 私は頷いた。


 獣人って本当にすごいのね。聴力で私の運探知能力並に看守達の位置を把握している。でも別に羨ましくないかな。私、聴覚過敏だから。

 「あの魔人がセレン?」

 「うん」

 「リリーナちゃん、どうしてここに?」

 「どうしてって、セレン様に会いに来た他あります?」

 「そうか」

 「で、どうしてセレン様が牢に入れられたのですか。事情によっては脱獄のお手伝い致しますよ」

 「リリーナちゃん、来てくれてありがとう。本当に助かった。まず伝えなくちゃならないのは、今の魔王は本当の魔王じゃない。魔王の体に入った魔人だ」

 「そうだったんですね」

 「そう。昔、何回も私に魔王の体に入る許可を求めていたのだが、許可はしなかった。あの魔人は人間を嫌ってる。私も別に人間が好きなわけではないが、魔人を沢山犠牲してまで滅したいわけではない。でもあいつは違う。あいつは戦力さえ揃えばすぐ人間界を攻めにいく。例え人間を滅ぼすことが出来ても、魔獣を狩る人間がなかったら弱くなった魔人は魔獣に狙われる。人間と戦争するメリットなんてないのだ」

 「そもそもどうして魔人は人間を嫌うのです?」

 「人間だって魔人を嫌ってるでしょ。違う種族の憎み合うなんて珍しいものじゃないでしょ」

 「話はわかりました。で、どうするおつもりです? 魔王を止めるのですか」

 「そうだ」

 「どうやって止めるのです?」

 「それは……」

 ずっと囚われてたからずっと考えてたはずだ。にも関わらず……。そう、多分……。ううん、きっと! なら!

 「そう言えば、言うのを忘れました。大佐様も捕まったのです」

 「どうして大佐が?」

 「魔王にしつこくセレン様のことを聞いてたからです」

 「……っ」

 「セレン様。あなたはどうしたいのですか?」

 「魔王を止めたい! でも私じゃあ魔王には勝ってない。かと言って他の魔人を巻き込めば内戦になってしまう。そうすれば同胞が沢山死ぬかもしれないし、人間が攻めに来るかもしれない。どうすればいいのか分からないんだ!」

 「セレン様は命かけて魔王と戦う覚悟はないのです? あ、なるほどね、セレン様は友達がないのですね」

 「ち、違うし! 友達だからこそ死なせたくない! 」

 「その程度の覚悟だったんですね。まあ、セレン様はイエス! 魔界戦隊ファイブの1人ですし。偽物と言っても魔王に逆らえないもの。セレン様はずっと魔界のためにではなく、イエス! 魔界戦隊ファイブの1人として頑張ってきたのですね」

 「違う! 私は!」

 「あー、大佐は友達じゃないから死なせてもいいのですね!」

 「だから違うって言ってんだろうが! 分かった! やればいいでしょ!」

 これよ! ロッティみたいな素直なバカと違って誘導しやすくていい。

 「セレン様は一つ勘違いしています。戦闘力だけが力ではないんですよ。セレン様が積み重ねて来たものは無駄じゃないんですから」


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