戦争編 第13話 不治の病でございますか?
リリーナ、ここが気持ちいいのか!あ〜もっと、もっとかわいい声聞かせて頂戴!
「…様」
リリーナーっ!
「アサ様、お起きになってください」
え?ゆ、夢、いや、先かなり幸せな夢を見てたような。
「アサ様」
「今は話かけないください」
先の夢を思い出すのです。リリーナと!リリーナと!何をしました?思い出しませんわ!
「どうして!どうしてわたくしを起こしましたの?」
「あ、あの、リリーナ様に訪れる客人がいらっしゃったらお呼びするようにってアサ様が…」
「あ、そうでしたわ。お詫び申しあげますわ」
左様でございましたか。また虫けらが湧いて来たようですね。
リリーナがあのマモンとかいう魔人に功績を全部譲ったお蔭で、あのマモンは出世しました。それから、リリーナを訪れる虫けらが湧いてくるようになりました。リリーナを利用しようとする不届き者もいれば、身の程をわきまえず、リリーナに幻想を抱く蛆虫もいる。リリーナに虫ケラが近つかないためにも、わたくしが頑張るしかありません。
「リリーナ様にお仕えればと思って来ました」
「アサ、おはよう」
「リリーナ、おはよう」
「ゴホン、リリーナ様にお仕え…」
「アサだけで十分なの。ごめんなさい」
「アサというのはそこにいる人間のことでしょうか。お言葉ですが、人間より、自分の方が役に立てると思います」
「と、言ってるけど。アサ、どう思う?」
虫けらの分際で!
「ならこうしよう。あなたがアサと決闘しよ。あなたがアサに勝ったら私の側で働こう」
「リ、リリーナ!?」
そんな!リリーナ…リリーナにとってわたくしは何ですか?わたくしは今まで何のために…?あははは、わたくし、ただのボディガードだったのですね!許しませんわ!絶対に殺します!
虫けらを八つ裂きにしても、気分が良くなることはありませんでした。
「ねぇ、リリーナにとって私は何?」
「急にどうしたの?」
「私より強い魔人が現れたら私はもういらないの?リリーナにとって、わたくしはただのボディガードなの?」
「そんなわけないじゃないか」
「リリーナ!」
「ごめんなさい。アサの強さを示せばああいう輩が来なくなると思って」
「わたくしが何をしても、リリーナは振り向いてくれないのか」
け、軽率でしたわ。もしリリーナに、今頃気付いたのか、とか言われたらわたくしは、もう生きて行けませんわ。でも!
「私と一緒に居られることがアサの幸せなの?」
「そうよ」
「アサ、私はね、すずしろが生まれて来たことが、奇跡だと思うの」
「話逸らさないで!」
「逸らしてないよ。アサ、ちゃんと聞いて」
「…わかった」
「人はいつか死ぬ。皆はそれを知っている。けれど、明日すぐ死ぬわけではないのだから、夢と希望を持てる。でも、不治の病を患った人は違う。いつ死んでもおかしくない。寝たらもう目覚めることはないかもしれない。希望も夢も持てなくなるし、やる気もなくしてしまう。残る時間を、心残りを無くすことと、死後の準備をすることに使う。けれど、お父さんは違った。お父さんはすずな母さんと知り合って、愛し合った。すずしろだった時、お父さんのこと、身勝手な人だと思ってたけど、今は違う。今は彼を尊敬してる」
「でも、私はもうすずなじゃない!アサだ!今私が愛してるのはリリーナだ」
「そういうこと言ってるわけじゃないの。アサは知らないの。だって、アサに話してないもん。実は、リリーナとして生まれる前に、私は2回ほど転生された。その2回も、大事な人に裏切られて、悔しい思いをして、悲惨な最後を遂げた。それが原因で、私は人間を信じられなくなった。いつか裏切られるから、希望を抱かない。最初から仲良くならなければ、裏切られずに済む」
リリーナは目を細めましたわ。これは、人を拒絶し、心を閉ざす目でございますわ。
「わたくしは、何があっても決してリリーナを裏切るようなことを致しません!」
「ねぇ、アサ、私ね、お姫様だったの。私に仕えてくれた人も似たようなことを言ってた。口だけなら何とでも言える」
「では、わたくしを殺してゾンビにしてください。リリーナに信じて貰えるのならわたくしはこの命を捧げても構いません」




