戦争編 第11話 前 毒盛りでございますか?
それにしても、あの子、本当にアイちゃんじゃないのか?だって、匂いが全く同じなのよ!例え双子だとしても、匂いまで同じなわけない!でも、でもアイちゃんはもう死んだんだ!私の目の前で!私は…アイちゃんを守れなかったんだ!この手でアイちゃんの死体を燃やしたんだ!あの子はアイちゃんじゃない!
「ブルブル」
え?何?あっ、これか、あの子から貰った通信石が鳴った。あの子はアイちゃんじゃない!アイちゃんじゃないんだ!
「何の用?」
「実は、私達は敵の兵糧要塞を占領した。敵軍はそのことを気付いてない。そこで、私達は毒を盛るつもりだ」
「毒だって?だめ、獣人の兵士もいるのよ!」
「うん、それは分かってる。だからロッティさんにお願いしたいことがあるの」
「え?あ、私が出来る事なら何でも言って」
「えーとね、敵軍の拠点に潜入して敵獣人と接触してほしい」
「接触?」
「そう。毒入ってるから食べないようって。それと人間にバレないように口止めしてほしい」
「どう言うこと?」
「今回使う毒は人間にとっては無色、ほぼ無臭無味なんだけど、獣人にとってはそうじゃないの。だから、気付いた獣人が人間にバラさないように口止めしてほしい」
「なるほど。分かった、私、いや、ライオンズハートに任せよう」
そっか、あのリリーナって子、ちゃんと獣人のことを考えていたんだ。あの子はアイちゃんじゃない…。アイちゃんじゃないけど…信用してもいい、そんな気がする。
そのあと、私達ライオンズハートは敵の拠点に潜入し、仲間の説得を試みた。獣人兵達は完全に洗脳されてた。説得は簡単じゃなかった。獣人兵は支配されたというより、人間に依存してるように見えた。人間を倒して、あの国から獣人を助けて、獣人はどう生きるべきか。今までも沢山の獣人仲間を救ってた。でも今回はわけが違う。完全に人間から独立することになる。我々獣人は、人間を頼れず、生きていけるだろうか。例え奴隷として扱われても、魔力が少ない、魔物に勝てない我々は人間に頼るしかないって言われた。確かに、我々は魔界での糧食の確保が出来ないため、魔界に移住しても生きていけない。でもね、尊厳なしじゃ生きてると言えるだろうか。
こうして、リリーナの使い主の軍隊と共に、ライオンズハートは毒にやられた敵兵を一掃した。魔界軍が勝ったんだ!そう、魔界が勝った、我々獣人が勝ったわけじゃなかった…。魔界はの戦力も大きく下がった。これ以上戦争を続き、あの国に攻め込む、獣人を解放する気はなかった。




