戦争編 第7話 後 趣味でございますか?
上手くいかないな。絶対音感があれば前世の曲を再現できたかもしれないのに。
そう、この三ヶ月アサは時間を無駄にしなかった。それに比べて私と来たら…。竪琴みたいな楽器を習ってた時も、ドラゴンさんを乗って景色が綺麗なところで写生した時も、アサが私の側で魔人語を習ってた。僅か三ヶ月で魔人と日常会話できるようになった。うーん、でもいいんじゃないか。音楽と芸術、前世でしたくて出来ないこと。折角この立場までのぼりつめたの、少しくらい、罰は当たらないと思う。
あ、通信石が鳴った。
「例の件は?」
「情報屋から情報を聞き出して、人目につかないところで殺した」
「わかった。すぐ行くから」
ドラゴンさんって、本当に便利…。
「ドラゴンさん、載ってくれる?」
「また空飛べるのね! うん、行こう」
夜の空に飛ぶドラゴンだけど案外目立たないのよ。
「アサ、こんばんは」
「リリーナ、そこの死体が情報屋だったものよ」
「お疲れ様。今、亡骸が新しい魂を迎え入れることになるでしょう。我が意思によって生まれし魂よ、我が言葉に従え、新しい体に入り、あたしのために命を捧げよ、レイズサーヴァント!」
これでよし。
「リリーナ、最初から情報屋を殺して死霊術で蘇ば済む話じゃないの?どうしてわざわざ昼間に情報屋に会わせたの?情報屋が失踪したら疑われるかもしれないよ」
「アサ、ごめん。迷惑かけちゃったね。でも、必要はあった」
「必要?」
「そう、私はね、私専属の情報機関が作りたかったの。でも、ゾンビに頼るのはちょっと心許ないんでね。確かに、私の死霊術は他の死霊術と違って、ゾンビは自分の意志をしっかり持ってて学習もする。おまけに生前の記憶も読み取れる。けど、やっぱり出来たての魂なのよ。その知識を使えこなせないでしょ。だから、仕切る人が欲しいの」
「だからあのソニアに情報屋を会わせたのか。だったら私に任せて!私であればリリーナに…」
「いや、アサは私の側に居て欲しい」
「…り、リリーナ?」
「アサはこんな私のこと、嫌いになっちゃったの?目的のために、人の命を奪う、それでいて自分の手を汚さず、アサにだけ人を殺させる、そんな私を…」
「確かに、しろならそんなこと絶対にしないでしょうね。自分の食費を使ってホームレスに弁当作ってあげたあのしろが人の命を奪うだなんて…」
「アサ…」
「でも、私はしろよりリリーナの方が好き…」
「え…」
「だって…」




