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戦争編 第1話 ジェットコースターでございますか?

「え、私、空で飛べるの」

「うん。良かったね、ドラゴンさん」

「え?でも私はもうここに戻らないかもしれないよ。いいの?」

「あはは…。私、クネスに怒られちゃうな」

「ずるいよ。そんなこと言われたら、ここに帰るしかないじゃない」

本当に帰ってきてくださいよ。

「ねぇ、リリーナ、乗ってみる?」

「え!? 乗るってドラゴンの背中? 一緒に空を飛ぶってこと?」

「嫌か? 何百年ぶりに空を飛ぶ喜びを、リリーナと分かちあえたいの」

「でも、本当に人を乗せて飛べるの? 落ちたら死んちゃうよ、私。それに、私の握力の弱さを考えると、スピード落とさないと、私、振り落とされるよ」

「大丈夫、クレスから鞍を借りるといい」

と言われて桜子に鞍を借りてきた。…空を飛ぶってどんな感じするでしょ。やっぱり、ジェットコースターみたいな感じなのかな? でも、ジェットコースター自体乗ったことないよ。

「じゃあ、行くよ」

あ、緊張す…。

「ギャっ!」

速いー! これが遠心力? …苦しい。

「リリーナ、目を開けて! 見て、空でしか見えない景色を」

「…うん? ワァー!」

普通…。写真で見たのと一緒で何の面白みもない。

「綺麗!」

「でしょ!」

でも、そうか…。ジェットコースターってこんな感じだったのか。昔、ずっと憧れた遊園地…。

「もうちょっとスピード出して!」

「いいの?」

「うん」

「じゃあ行くよ」

「あはははは! 私、飛んでるーっ!」

「空はいいでしょ! ありがとう、リリーナ!」

「どういたしまして。それより、ドラゴンさん、ダイビングしてすぐ急上昇出来るの?」

「おー、リリーナ、マニアック。じゃあ行くよ」

「ギャアーっ、ははははは、楽しいーっ!」

「次は?」

「回れ!」

乗ってる! 私、ジェットコースターに乗ってる!

楽しかった。まさかペットの散歩がこんなに楽しいとは思いもしなかった。


戦争が始まったから三ヶ月。やることなく桜子の屋敷、いや、今は私のお家でもあるのか、ここでダラダラしてるだけ。露骨に政に関わろうとするのもよくないし、桜子も必死に私のことを他の魔界戦隊ファイプから守ろうとするし。やることと言えばアサやドラゴンと遊んだり、ドラゴンを乗って飛んたり、料理作ったりするだけ。まあ、それほど退屈じゃなかったけど…。

「リリーナお嬢様、ちょっと来ていただけますか」

「どうしたの?」

「クネス様のお客様がいらっしゃいましたが、ご存知の通り、クネス様は今お留守で…。奥様も…」

「分かった、行くね」

桜子の知り合いらしいから私が行ったところで何も変わらないと思うけど。

「…貴女は、クネスの義理の妹か。お願い、クネスに合わせて。頼みたいことがあるの」

「リリーナと申します。知ってるとは思いますが、クネスは今時間的に余裕がないんです。妹である私も中々会えません」

「私どうしてもクネスに会いたいの。クネスしか頼れる魔人がいないの」

通信石を桜子に渡したけど、邪魔したくないと言うより、些細なことで電話かけると思わせたくない。ううん、それだけじゃない。魔人の目の前で魔法石を使うのはご法度だ。魔人に使わせるなんて…。

「そう言われましても…」

「じゃあ、クネスが戻るまでここで待つ」

…厚かましい。

「直接に会わせることは出来ないが、居場所は分かるので手紙を届くことは出来ます。それでも納得してもらえないのならお部屋用意いたしますが」

「手紙か、分かった」

彼女は手紙を書いて帰ってくれた。

「すず? どうしたの?」

「今大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「実はね、今日マモンという女性がウチに来たの。どうしても桜子に会いたいって言うの」

「マモンか。昔何回一緒に遊んだことがあった。彼女がどうしたの?」

「桜子に会うまで帰らないと言うから手紙を書かせた。今どこにいるの?」

「移動繰り返してるから手紙は届かないと思うよ。すずが手紙を読み上げてくれない?」

「いいの?」

「いいのいいの」

このマモンという魔族は恋人がいて、その恋人がマモンの家宝を無許可で借りて軍に入ったらしい。でもマモンは家宝を取り戻したいわけはなく、ただ恋人に会いたかっただけ。マジかこの女…。頭がハッピーセットなの? 裏切られた自覚ないの? そもそも無許可で借りるって何? どんだけ現実を認めたくないのよ!

「すずはどう思う?」

「どう思うって?」

「正直マモンとはそんなに仲良くないし、彼女を構う暇ないよね」

「でしょうね」

「だからさ、すずが助けてあげなよ」

桜子は私のことをお人好しだと思ってる。断りづらい。まあ、いいわ。利用させてもらう。

「暇だから別に構わないんだけれど、私が出来ることってあるの? 私、軍人であるマモンの恋人を見つけられて、マモンに会わせるのかな?」

「それなら心配いらないよ。スネーク家の一員であるすずは軍を干渉出来るほどの権限はあるよ」

「そうか。じゃあ頑張ってみるね」

軍に干渉出来る、か。いいことを聞いた。でも、まずはこのマモンというバカ女。本当に恋人に会わせるのか。うん、それがいいかも。現実を見せないと。人はね、挫折しないと成長しないのよ。ふふ。


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