獣人編 第10話 後 差別でございますか?
二時間くらい立てて変なおじさんしか話かけてこない。どうして? 皆子供嫌いなの? 一人何回も見かけた女性がいる。目も何回合っちゃったけど。
「…あの、君、ここで何してるんの?」
「お父さんとお母さんが…。私、腹空いたのでお金を恵んでくれる人を待っているの」
「それなら補助金もらえるよ。親がいない子供は補助金もらえるからいくら待ってもお金あげる人来ないよ」
「…そう、なのか。私、別の国の生まれて戸籍持ってないから補助金貰えないの」
「それじゃあ、お嬢ちゃん、うち来ない?」
「え?」
「私、子供出来ないからずっと誰かを引き取りたかったの。どう?」
信じていいの? 信じるかどうかは置いといて、誰もお金くれないのは事実。運チェックもしたし。
「いいの?」
「いいの、いいの。来て。料理の腕に自信があるから。お嬢ちゃん、名前は?」
「リリ…」
あ、本名はまずいよね。
「リリアって言うの」
「リリアちゃんか。いい名前だ。これからよろしくね」
「うん。よろしく」
迎えが来るまで、だけど。もうセレンと連絡しておいた、近いうちにアサが来てくれる。
「あなた! あなた!」
「どうした? いい歳してこんなにはしゃいじゃって。なんだ? 誰だ?この子」
「リリアと言うの。この子外国から来たんだ。親はもういないみたい。ねぇ、この子、うちの子にしない?」
「うちの子って…」
しゃがんで私の頭を撫でた。やめて、お団子で隠してる角がバレるから。
「リリアちゃん、だね。この家に来てくれてありがとう。これからよろしくね」
「う、うん」
いい人、かも? けど、関係ない。アサが来たら、ここともさよならするから。
「おい! 豚! 豚、早く来て」
豚? 出て来たのは豚の獣人だ。
「おい、豚。この子が俺達の新しい家族だ。リリアちゃん、うちの奴隷だ。好きに殴っていいよ。反抗したら奴隷商人に返品するから」
先まで優しかったのに…。本性現したか? いや、こんなに早く…。いや、違う。獣人だからかな。この国の人は皆、獣人のことを下等種だと思ってる。そう、こんな優しそうな夫婦でも。
「よし! 今日は張り切るぞ。リリアに美味しいものを作ってあげるんだから」
なんでしょうね。一番他人の反感を買うのは人によって態度を変えること。私といい関係を築きたいこの夫婦はいいところを見せたがるはず。なのに、獣人にあんな態度を取る。つまり、この国では、獣人を悪く扱うのは普通。
「美味しい」
「はは、そうか、よかった」
「頑張った甲斐があった」
嬉しそうに笑ってる。本当は悪い人じゃないでしょ。でも…。
「…あの」
「うん?」
「優しくしてくれてありがとう。本当に嬉しい。でも、会ったばかりの私にもこんなに優しくしてくれるのにどうして獣人に酷いことするの…」




