序章 最終話 お母さんでございますか?
これが走馬燈なのかな?あの頃に戻りたいな~
「ねぇ、お母さん、お父さんは何処にいるの?」
「お父さんはね、とっても遠い場所にいるの」
「つまり天国?」
「え、ええ・・・」
この子、賢いな。
「事故?」
「いいえ、病で」
「病気ってこと?何の病気?」
「し・・・知らない。」
「夫婦なのに?」
これを言われたら痛いな。
「お父さんとは、夫婦じゃないの。」
「え・・!?」
「しろ、聞いて。」
どうやら聞かなければならないみたい。
「お母さんね、若い頃ね、同じ時期にバイトを二つもやってたのよ」
「どうして?」
「本屋さんになりたいから」
「どうして本屋さんにならなかったの?」
「それはね、夢より大事なものが生まれて来たからよ。」
「あたしのこと?」
「そうよ」
「お母さん、ごめん」
「バカね、お母さんはあなたと一緒に居た方が幸せだよ」
「お母さん・・・大好き!」
まだ子供ね、大きくなったら、またこんな風にあたしを抱きしめてくれるかな?
「話を続けるよ、あの時ね、バイトの一つはね、夜のコンビニで働くこと、あの時ね、あの人が、毎日のように来るのよ」
「あの人って、お父さん?」
「そうよ、眠れないだってさ。いつも顔色が悪いけど、面白い人だったよ、お母さんはね、すぐに恋に落ちた、あの頃は楽しかった」
娘とこんな事を話す事を何度も想像したけど、ちょっと恥ずかしい。
「けど、ある日、彼は来なかった、代わりに彼の母が手紙を持って来た。」
あの手紙を娘に見せるのはちょっと恥ずかしい、でも、しろには見る権利がある。
「拝啓 挨拶は省略。」
「お父さん・・・」
「この手紙を読んでいる時、俺はもう死んだでしょう。実は、あなたと出会った時、俺はもう助からないと知っていた。あなたと一緒に過ごした時間は人生で一番楽しい時間だった、ありがとう、さよなら。
平成3年一月八日
山田彰
鈴川鈴奈様」
「お父さん、手紙の一つも上手く書けないの?」
「あの人らしいわね」
「つまり、お父さんは、自分がもうすぐ死ぬことを知った上で、お母さんと付き合ったことになるの?」
「そう・・・なるよね」
「そんな・・・お父さん・・・」
「お父さんを悪く思わないで、しろ、一人で、最後を迎えるのはとっても辛いことだよ。それに、あの人はあたしの腹の中にしろがいる事が知らなかったよ」
「そういえば、赤ちゃんって、どうやってできるの?」
「え!?」
どうしよう、大きくなったら教えると言ったら、この子、自分で調べるからな。かと言って、しろに嘘をつきたくない。
「男の子・・・の大事な所が・・・女の子の・・・大事な所に・・・い・・・入れたら、赤ちゃんができるのよ」
「お母さん、これは顔が真っ赤になる程恥ずかしいものなの?」
え!?嘘、あたし今、顔真っ赤なの!?
「とにかく、お父さんを恨まないで」
「分かった、お母さんと一緒に過ごすのも充分幸せだもの」
「ありがとう、しろ、お母さんはもうとっても幸せよ」
でも、あたしの一番大事な宝物、一人娘もトラックに・・・
あたしも天涯孤独の身になった、もしかして、あたしのせいなの?あたしと関わる人は皆死んでしまうの?
駄目、もう生きる気力がなくなった、待っていて、しろ、お母さんも、そっちの世界に行くよ。
砂漠!?え!?あたし、砂が靴に入る事が大嫌いだから、絶対に砂漠に行かない、じゃあ、どうして?
行列の果てに黒い半球体、皆は白い服を着ている。
成程、三途の川は聞いたのと違うのね。
そう、全て思い出した、あたし、あそこから飛び降りた。
後悔はしていない、だって、人生の目標がなくなった。
しろ・・・
あなたの友達が亡くなった時、あなたじゃなくって本当に良かったと思った、これは報いだ、きっと、あたしがこんな事を考えだせいて、あなたがこんな目に・・・
次があたしだ、あの黒い半球体の中に、裁判所・・・
自殺だから、あたし、地獄に行くでしょう。
モニターで、あたしの一生が再生している、懐かしい、両親はあたしを大切に育ってくれた、良い両親だった、二人も早死だったけどね。
あの人との時間は短いけど、幸せだった。
しろが生まれたからも幸せだったの、あたしの為にバイト何かしちゃって、バイトしなければきっともっと友達を作られるのに。
「鈴川鈴奈、残念だったな、自殺しなければ、凄い点数が貰えたのにな」
「一人にはあの部屋が広過ぎでしたから」
「鈴川、君、あの方の母親?」
あの方?え!?何?
「君は鈴川すずしろの母親かい?」
「ええ、娘の事、ご存知ですか?」
「神の加護があるから、行列から裁判所を覗き、神王様まで動かしたあの方、勿論知っているよ」
え!?何言ってるの?
「娘がどの世界に行ったのか、知っていますか?」
「勿論知っているよ、でも教えるわけにもいかないのよ、掟だから。あの方の母親だった貴女が、一番詳しいではないのかい?」
そうだな、しろならきっと、この魔力がある世界を選んだはずよ、しろがハリー・ポッターのスペルを練習してる所、まだ覚えているよ、見られた時、本当にかわいかったよ、いつもポーカーフェイスだったあの子が、顔真っ赤にして。
「あたし、魔力がある世界の人間になります。」
次回からは本編です、何卒よろしくお願い申し上げます。