獣人編 第10話 前 物乞いでございますか?
本当は使いたくないのだけど、仕方ない、クローンとの約束破るよ。私は服掛けにコートをかけ、その後ろに隠れて、クローンを作った。
クローン、お願いよ! 黙って死んでくれ! 私のことバラさないで!
「ロッティ、たす…クホッ」
「アイちゃんーっ!」
あ、殺されたところをロッティに見られた。これでロッティが死なない限り私がライオンズハートに居られない。でも、これ以上ここにいる必要あるの? もう壊滅寸前だよ。
ロッティの攻撃効いてる。どうして? 半獣人の魔力で、しかも公爵の精鋭に…。あ、ロッティの爪光ってる。これは、魔法バリアの魔力も攻撃に回したのか。どうして逃げないの? 私の仇を取ろうとしてるの? 捨身で? やめて、私死んでないから! どうしよう? 出た方がいいのか? ロッティが目の前に死んだら一生後悔することになるのよ! ロッティに教えるのよ!
どうしたの? 動いて、私の足! 震えてるけどそうじゃない! 私の足を止めるのは恐怖じゃない、私の理性だ。
静かになった。立ってるのはロッティだ。外も、戦いは終わったらしい。私は頭痛を我慢して周囲の運を読み、人を避けて、敵一人の死体に死霊術をかけ、拠点を離れた。
沢山の獣人が死んだ。結局私は何も出来なかった。遊び気分でここに来たが、まさか、こんな…。それに、出発する前に、皆から運を借りたけど、赤黒まで抜いてないよ。なのに…。知り合いの死顔を見て、流石に…。
「セレンさん…」
「どうしたの?」
「ライオンズハートが公爵の精鋭に攻め込まれて、ほぼ壊滅した」
「…そうか。公爵もこっちを頼ってるわけじゃない。私達が止めさせるより、ライオンズハートを根絶やしする方が手っ取り早い。仕方ないよ。ご苦労様だ、リリーナちゃん。迎えよこすから待っててね。今どこにいるの?」
「ちょっと待って。死体さん、ここは何処?」
死体は生前の記憶を持ってるから。
「じゃあ、こうしよう。リリーナちゃんがその町に行って、私が迎えをよこすのはどう」
「うん、そうしよう」
「三日で着くから待ってて」
私はあの死体の右肩乗って、街に着いた。死体を死体に戻して、髪で角を隠してた。三日か…。奴隷として潜入したからお金ないし。お金どうやって稼ごうか…。
筆があればな、以前美術部だったのだが。マッチもないし。アサいないからクエストもこなせないし。そうなると…。この服もボロいし、そうしよう。
「…あの、お金恵んでください…。お願いです」




