獣人編 第9話 前 侵入でございますか?
「アイちゃん、静かにして」
「え、あ、はい」
「後付けられてる」
「え?」
つけられてるって、誰に? いや、まさか、公爵? ありえない、公爵は悪い人じゃないはずだ。いや、私、騙された。
「シャーリー、捕まえられます?」
「出来なくはないが。アースロック」
流石シャーリー、簡単に行動を封じた。
「あーなーた、どちら様でしょうか?」
と、した噛んだか、毒飲んだか、とにかく死んだ。遺体に身元が分かるもの一切ない。帰ってライオンズハートの皆さんに知らせないと。
「皆聞いて、公爵は黒だ。公爵が出席する会議は罠だ」
「そうだったのか」
「そうさ。公爵はいい人ぶるけど、手下に私達の後をつけさせた」
皆が私達を褒めてる時、ロッティとナンシーが帰ってきた。
「捕まえられたけど逃された」
やばい! これはやばい!
「ロッティ、ナンシーさん、誰かに後をつけられたのですか?」
「つけられてない」
「こっちもだ」
「シャーリー、やばいです」
「ああ、この拠点がバレだかも」
「何の話?」
「皆、荷物を片付けて別の拠点に移すぞ」
「え、何故だ」
「公爵は会議を主席する情報を流して私達をおびき寄せようとしました。同時に私達が屋敷に忍び込むのを待っていました。私達を捕まり、ボスと話したいと言って私達をここに戻らせ、後をつけました。つまり、公爵は私達を根絶やしにするつもりなのです。シャーリーが気つきましたが、ロッティとナンシーさんは…」
「私達のせいってのか」
「いいえ、私のせいです」
「アイちゃんのせいじゃない。予定通り会議を襲撃したら状況が更に悪くなる。今はまた逃げる時間がある」
りんりんりん、警報だ。逃げる時間はなかったようだ。
「戦えない者は逃げ口から逃げろ! 戦える者は戦え!」
私、戦えないから。と皆で逃げ口を開けたけど、外も敵が沢山いる。すぐに引き返した。どうしよう。とにかく隠れよう。運は薄いけど黄色だ。大丈夫。かくれんぼの心得、その3、人は探したところを探さない。ここは敢えて入り口まで戻る。
「いたぞ」
やっば。とにかくこの部屋に入って鍵を閉めて考える時間を稼ごう。よし、冷静になってこの状況を打破する策を考えるんだ。私の手札は氷魔法、死霊術と運を操る能力。あとは顔と幼い見た目。
「おい、手を貸せ。この扉をこじ開けるのだ。鹿の半獣人が中にいるはずだ」
どうする? あ、そうだ。こうしよう。ごめん、もう2度と使わないと約束したけど、許して。




