獣人編 第5話 リーダーでございますか?
「すまん」
「アイちゃん、ボスを責めないであげて。私達はテロリストであって、ゲリラじゃない。私達だって、ずっとあそこを監視してたわけで」
「…」
私、どうかしてる。私はスパイで、別にあの豚に何かをされた訳でもないし。なのに、この気持ちは一体…。ああ、きっとアイと呼ばれて、奴隷の状況を目にしたから、前世のことを思い出したのでしょね。八つ当たりしちゃったかな…。ごめん。
「そんなの知らない!」
と、13歳の女の子に相応しいことを言ったあと私はロッティとの部屋に戻った。
「アイちゃん、どうしたの?」
「ロッティ、ロッティはライオンズハートに入って何がしたいの?」
「私は人間に復讐したい」
「他の獣人を救いたいわけじゃないのね」
「もちろん救いたいよ」
獣人も魔人も同じ、未来を考えてないんのね。このまま奴隷商人の拠点を襲えばいずれこの国の軍隊に根絶やしされるのが落ち。魔人もそうよ。獣人を説得できるなんて本気で思ってるのかしら。
まあ、トップなんてこんなもんよ。前にいた世界もそうだ。自分のことしか考えない人が殆どだから多数決はだめだと思う。だから少数のエリートによる支配、そのエリート達を監視し、弾劾できる組織がついてる形が一番だと思ったが。まあ、そもそも、イエス! 魔法戦隊ファイブは戦闘力に優れてるだけで、魔人も皆平和ボケしてるし。ライオンズハートのリーダーも先代の座を受け継いだだけ。期待するだけ無駄か。
じゃあさ、自惚れてる私が何かいい案あるの?そうね、私だったらまずはこの国で無視できないような混乱を起こす。例えば、魔獣をこの国に誘き寄せるとか、他の国と戦争させるとか。魔人と戦争するところじゃなくなるくらいの混乱を。
「アイちゃん?」
「うん?」
「どうしたの?」
「何か皆を救える方法はないかなって」
「そんなの、人間達を倒せばいいのじゃない」
「この国の人間全てを、ライオンズハートの皆だけで?」
「じゃなくて、奴隷商人を。それに、歩き出せないと何も始まんないよ」
獣人は皆脳筋っぽい。私がどうにかしないと。でも、私は本物獣人でもないし。どうしようかな?




