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獣人編 第1話 スパイでございますか?

「リリーナに何の用? 言っとくけど、リリーナはスネーク家の養子になった。もうあなたの命令を聞く必要はない」

 「そう。それは残念だ。けれど、リリーナちゃんを命令した覚えがないわ。リリーナちゃん、今度もお願いしていい?」

 「すず、相手にしないで」

 「とりあえず話だけ聞いてみるよ」

 「聞いてくれるのか。嬉しいな。リリーナちゃんは本当に優しいいい子だ」


 セレンは嫌いじゃない。話によっては手伝うかもしれない。


 「実は、戦争をさせようとしてる魔人達がいるの」

 「魔族と人間?」

 「そう」

 「魔族は人間より平和を好むと聞いたけど」

 「それは…。実は魔人と言っても獣人だからね。まあ、獣人達の気持ちも分からなくもない。現状としては、獣人の多くは人間に奴隷にされている。しかし、人間は自分の国では奴隷は禁止されてるんだから奴隷はありえないと言い張る。魔界が介入したら戦争になりかねない。私達は何もできないわけ。当然のように、獣人達は私達に失望して、獣人だけの組織を組んで、人間の国でテロを起こすの。奴隷商人を襲うのはいいけど、王宮に忍び込んで自爆するのはやめてほしい。そこで人間達は私達に責任を負わせた。テロをやめさせなければ戦争するってさ。本当に困ったわ」

 「え? 話を聞く限り、私が出来ることなんてあるとは思わないけど」

 「それがあるの。テロを止めるにも、何処が襲われるのが分かんない。襲われそうな所全部護衛をつけたいところなんだが、魔人の部隊を人間の国に送るわけにもいかないのよ。そこで、リリーナちゃんをスパイとして獣人の組織に送り込むという策を思ついた」

 「どうして私? 勇者の時は人間語が話せるだけで…」

 「それは、リリーナちゃんが角生えてるからよ。鹿の半獣人として潜入して欲しいわけ」

 「なるほど。でも、私じゃなくても、獣人のエイジェントに頼めば…」

 「それがないのよ。獣人は何処にいても目立つから獣人エイジェントはありえない。それに、獣人達の絆はとっても強いんだから、今私達の命令を従う獣人なんて1人もいいないのよ」

 「うーん、スパイということは、そうね。テロを止めるには、獣人を粛正するのが一番手っ取り早いだけど、流石にそんなわけにもいけないよね。リーダーを殺すのも獣人を怒られるだけ。そこで、テロの時間と場所を把握できれば対処できると言う一時しのぎにしかならない策に出たわけね」

 「そうよ」

 「そんなのダメよ。すずが組織に入った途端テロの時間と場所がバレっててすずが疑われる。そうなったらすずが危ない目に遭うよ」

 「それだけじゃない。時間と場所が分かったところで、こっちらの兵を人間の国に送れない以上、テロを止めるのは無理なのでは?」

 「私1人で出向いて獣人達を止めるの。私の声は生物を操れる」

 「毎回?」

 「そう。だから、私はリリーナちゃんだけ危険な目に遭わせてるわけじゃないの。お願い、リリーナちゃん、力を貸してはくれないか」

 「ちょっと、考える時間が欲しい」

 「分かった。いい返事を待ってる」


 面倒なことになった。まあ、面白そうなことにもなったけど。


 「ドラゴンさん、ごめんなさい。もうちょっと待ってて」

 「えーっ?」

 「お願い」

 「リリーナ、何処に行ったの?」

 「アサ、私達の国でも獣人を奴隷にするのは普通?」

 「うん。獣人は人間より力強いし、獣人の魔石も役に立たないから奴隷にすることが多い」

 「ちっ、人間って…」

 「アンタだって元は人間じゃない」

 「今は違う」

 「リリーナ、人間であるあなたのことも嫌いんだって」

 「ち、違う! それに、今のすずは魔人だ。私が嫌うのはお前だ」

 

 前世は同じ人間だけど、今はもう違うのね。それぞれの立場があるんだね。


 「アサ、獣人に関して知ってること全部教えて」

 「うん、分かった。そうね、どこから話せばいいのか。前にいた世界もあるでしょ、人種差別。同じ人間でも違う国であれば差別が起こる。それが違う種族だったら?」

 

それなら、人間と距離を置いて生活すればいいのに。あ、分かった。


「獣人は魔人であって、魔人と違って食事を取る必要がある。だから、魔人とより、人間と住みたがる。気がついたら人間に奴隷にされたってこと?」

「その通りよ。実は獣人達は人間に反乱を起こす前に魔人に助けを求めた。でも、獣人は魔人より人間に近いと考える魔人も少なくない。なのに、人間どもは人間以外の知性を持つ種族を全部魔人に分類する。自らが招いたことの責任を私達魔人に押し付けたわけ。でも、はあ、人間は嫌いけど戦争まで発展したくない。魔王様もまだ眠っておられますし」

「本当に戦争になるの? 人間は戦争したいの?」

「したいじゃない? 魔石沢山取れるし」

「人型で知性持つ魔人の臓器をよく取る気になったな。人間はやはり野蛮だ」

「所詮人間と魔人は相容れない存在なのよ。そうよね、リリーナ」

「そうなの? 昔人間と魔人が仲良かった頃もあったらしいし。女神の像で揉めたらしいけど。胸のサイズなんてどうでもいいじゃないか」

「どうでもいいわけないじゃない。私達魔人は授乳する必要がないから胸も必要ないの。なのに女神様の胸を大きくしたら女神様は人間だけの神様になっちゃうじゃない?」


どっちに属するのが曖昧な獣人、私と似ってるね。私は今、人なの、それとも、魔人? まあ、どっちでもいい、私は私。そして決めた、やってみるよ、スパイ。


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