幹部編 第10話 後 不死でございますか?
あの人間のせいだ。あの人間が来なければ私は彼女が来るかもしれないことに期待しなかったのに。来たり、来なかったり、私を弄んで! 許さない! 彼女は私のたった一人の友達だと言うのに、私は彼女の数多くの友達の中の一人でしかないのだ。私はここでひとりぼっち、彼女は外で楽しいことをする。憎い! 憎い! 彼女を殺して、私の側に置いておく! そのためにも、彼女が来るまで部屋の壁にぶつかり続ける。
ようやく来た彼女にブレスを構えて、放つ!
「ドラゴンさん、独り言がお好み?」
「何を言ってる?」
「死霊術を使って分かったの。死霊術で蘇った亡骸は人形でしかないことを。例え私を殺したとしても、ドラゴンさんの寂しさを埋めることは出来ないって、ドラゴンさんもちゃんと分かってるくせに」
「じゃあ、どうすればいいと言うの? こんな牢獄に閉じ込まれて、誰とも話すことが出来なくて。私の気持ち、君がわかるはずない」
「よくわからないけど、ここから出だところで、見える景色が少し変わる程度しか…。だって、ほら、この世でドラゴン語を話せるのは、ドラゴンさんが最も嫌ってるあの黒いドラゴンと、ドラゴンさんを選べなかったクレスと私くらいしかいないから。ドラゴンさんに寂しい思いをさせるのはこの部屋でも、クレスでも、私でもなく、ドラゴンさんの永遠の命だと思う」
「死なないだからしょうがないじゃないっ!」
「そうね。私ならドラゴンさんを死なせるかも」
ありえない。私は不死な存在。例え殺されたとしても、すぐ蘇る。私を死なせるなんて決してありえない。その証拠に私は幾星霜も生きてきた。魔王も、勇者も、死を司るあいつも、私を殺すことは出来なかった。
「実は、私はドラゴン語を話せないの。ただ、相手が分かるように言葉話せるだけ。だから、ドラゴン語を話せる人がいなければ私はドラゴン語を話せない。これが私の能力の一つ。そして、私のもう一つの能力を使えば多分ドラゴンさんを殺せる」
「嘘、よね? 私を殺せるなんてありえないだから。今まで私を殺せた存在はいくつもあったが、私を死なせる存在は一つとしていなかった」
「そうね。必ず死なせるとは言わないよ。では始めましょうか」
ちょっと待って、もしかして、本当に私を殺せるの?
「いや! ちょっと待って、死にたくないよ! 私はただ友達が欲しいのに! どうして?」
「そうか。死にたくないのか。それは良かった。準備して置いたゲームが無駄にならずに済みそう」




