幹部編 第10話 前 不死者でございますか?
「待って、魔獣を追わなくでいいのか?」
「追えなくでいいよ。撃退すればいい。魔獣の記録によると魔獣は結構臆病で、撃退されたら人型の生物に出会うと逃げてしまうの」
「そうか、それは良かった。これでリリーナちゃんの角を取ってもらえる」
あっ…。そうだった。どうしよう?
「あのね、えーと…。この角、取れなくなってしまったの」
「え、どういうこと?」
「ユアンさん、落ち着いて聞いて欲しいんですけど」
「うん」
「実は、先輩はもう死んでいるんです」
「はぁ? 何言ってんの?」
「さっき、先輩が切られて…」
「リリーナちゃん、変な冗談は…よせ」
「本当だ。僕はもう死んでる」
「ヴァン!? だって、リリーナちゃんが回復薬を飲ませたんだろう」
「ユアンさん、ごめんなさい」
「お前らいい加減にしろよ! これ以上ふざけたら怒るぞ」
先輩は勇者の手を握った。
「ほら、冷たいだろう」
「嘘だろう?」
「本当だ」
「リリーナちゃんの角を取ったらヴァンは死体に戻る、そう言いたいのか!」
「ごめんなさい…。先輩は私を庇って…」
「リリーナちゃんのせいじゃないよ。謝らなくでもいいから」
勇者って、結構優しんだね。ちょっと見直したかも。
「どうなっているんのかちゃんと説明してくれ」
「何処から説明すればいいでしょう」
「何故死んだはずのヴァンがここに立っているのか」
「そうですね。私、死霊術使えますから」
「え? 何故リリーナちゃんが死霊術を使えるんだ?」
「私は魔人に改造されたから。死霊術を使えるんのです」
「むごいことするね、魔人は」
「そうね。でも私達は魔人を責める資格なんてないわ。魔人の臓器で魔法石を作るから」
「それは…」
「まあ、先輩の話に戻ろう。この角を埋めてた魔人の話によると、先輩は人間としての機能を失う代わりに…」
「人間としての機能が失うって!」
「代わりに! 私の魔力を体の中に循環させながら、先輩自身の魔力を取り組んで体を動くんのです。しかし、やはり人間とは違うのです。例えば、体の中に血が流れていないので体温維持機能はありません。力加減も出来ません。でも、首が斬り落とされでも行動出来ますし、首を繋げばまた動けるようになります。ですが、先輩は決して不死身ではないんです。私の死霊術魔力が循環させるのは心臓だから、心臓がやられてしまたっら動けなくなっちゃいます。あっと、魔力が切れでも動かなくなっちゃうので気をつけましょう。それと、間違っても聖剣に触らせてないように」
肉体はそれだけかな。先輩は感情を失って私の命令にしか動かないことは黙っておこう。




