序章 第10話 ケーキでございますか?
あれ以来、わたくしは、お小遣いの全部を、セバスチャン13にあげ、民の為に使う、わたくしはきっと良き王様になれるわ。
「姫様、国王陛下のお呼びです。」
父上が?何の御用かしら?
「ニーナ、よくお聞きなさい」
「はい、父上。」
「わしの貴族粛清計画が、各領地に送ったスパイの報告が戻ってきたことにより、始まる。あのくそ貴族共の罪証が揃った、今に見よ、あの寄生虫共を蹴散らしてくれるわ」
良かった、これで、民たちの生活もきっと!早くセバスチャン13に教えなくちゃ!
まあ、本を読んでいらっしゃる、ちょっといたずらしようかな~
セバスチャン13の目をあたしの手でふさぐ。
「あたしは誰だ?」
「アスカ?」
「違う!」
「レイ?」
「誰それ!」
「姫様だろう。」
「もう!わたくし、怒ったわ!」
「ごめんなさい、姫様」
「許しません!」
「姫様、お許しを!」
「あっ、そんなことしてる場合ではありませんわ、父上の貴族粛清計画、遂に始まったわ!」
「え!?こんなに早い!」
「貴族共の罪証が揃ったわ、これで、貴族共を一掃し、民が安心で暮らせる国が作れるわ!」
「そう・・・ですね」
その晩、セバスチャン13は姿を消した。
一ヶ月後、民が、ここまで攻め込んた、わたくしと父上が、牢屋に閉じ込めた。
「これが、あの王女か?」
「あぁ、そうだ、あのケーキ王女だ!」
え!?ケーキ王女ってなに?
「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃないだって?くそが、死ね!」
あの言葉、そんな、まさか、待って、待って、おかしい、いやいやいや、ええ!?いや、なんの間違いでしょう。だって、セバスチャン13との付き合いはもう三年以上あるよ!
では、なんて突然いなくなったの?
セバスチャン13・・・
この夜、一睡もできなかった。
そして、あの人が来てしまた。
「ご無沙汰しています、姫様、良く眠れたか?まぁ、姫様がこんな牢屋で眠れるわけないか」
「外にいるということは、裏切ったな、セバ・・・」
「その名で呼ぶな!おれはマル・B・K・バゼルだ。」
なんで牢屋の中に入った?わたくしが逃げても簡単に捕まえられるからか?
「バゼル公爵にはご子息はいないはず」
「それがいるんだよ、このおれが!」
「なるほど、わたくしがあなたにあの事を言ったから、こんな事になったのね」
「相変わらず理解が早いお姫様ね、そうだよ、あなたがあの事を俺に言った後、俺は罪証を盗んで、バゼル公爵領まで逃げた。罪証を貴族達に見せて、謀反させた」
「そう・・・か・・・」
「そうだよ、あなたは実にバカだった、俺はスパイなのに、何でも教えてくれるから、笑いを我慢するのは辛かったよ!」
「・・・」
「どうした、ケーキ王女様、その名前、気に入った?」
「・・・」
「知ってるか?今、あなたと国王が、悪い者扱いされている、国王は王都を繁栄させる為に、他の領地から富を搾り取る暴君、あなたは民の苦しみを知らぬケーキ王女なんだよ!貴族達のやったことは全部国王のせいにしたよ」
「・・・」
「あなたから貰った金も、革命の資金になった!」
「・・・」
「一番信じる人に裏切られる気持ちはどう?」
「・・・」
「何とか言え!」
「ねぇ、一緒に過ごしたこの三年、全て、偽りだったの?」
「も・・・勿論だよ、この三年間、全てが、あなたに俺を信じ込ませる為にあったんだ、あぁあ、遂に、芝居から解放か!」
「・・・」
「国王もバカだったな!こんな娘に何もかも教えるとはな!親子共々バカだ!」
「・・・」
「また黙り込むのか!」
「・・・」
「これ以上は時間の無駄か、ではな姫様、死刑台でまた会おう。」
死刑台、わたくし、死ぬの?
わたくし、何も悪い事をしてないのに、死刑・・・
何処から間違っていたの?
冗談でパンがなければ、ケーキを食べればいいじゃないと言ったから?
いや、違う、多分言わなくても、こうなったでしょう。
やはりセバスチャン13に父上の計画を教えたのがいけなかった。
でもさ、わたくし、セバスチャン13の事が、す・・・いえ、お兄さんだと思っている、セバスチャン13を信じられなければ、わたくし、誰を信じればいいのよ!誰と話せばいいのよ!
セバスチャン13、裏があって、わたくしの執事になったの?気つけるはずない!だって、いい王様になる為に色々を教えてくれたもの!全てが演技だったねぇ!
これから、誰も信じないわ!これから・・・わたくし、まだ未来があるの?
この日が来てしまった、怖い、首が絞められる!足の震えが止まらない!
「昨日は暴君、今日はケーキ王女か!」
「死ね、死ね、殺してしまえ!」
「毎日ケーキ食べてる?こっちはな、一度もケーキを食べた事ないんだよ!」
これは自業自得です、わたくしが悪い、わたくしはバカだ、人を信じるからこうなった!幽霊になっても、もう誰も信じない、民も所詮バカ、簡単に騙される、皆信じるから騙されるんだ!信じた方が悪いんだ、バカだから。
そして、思い出した、あたしの名前は鈴川すずしろでした。
あれ?前にもこんな事があったような・・・
「もう大丈夫だよ、すずちゃん、我があなたを助ける。」
「誰?なんて泣いているの?」