表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/300

序章 第1話  強運でございますか?

 天使はどうして白いのでしょう? 悪魔はどうして黒いのでしょう? 人の為に犠牲になって、ボロボロになった天使はきっと黒く見えるでしょう。悪魔は無邪気を装う為に、きっと白くなっていると思う。

 けれと、天使は白い、いや、白いのは天使だと、人々は信じている。だから、あたし、リリーナ・ナナリーは白い悪魔になる! あっ、連邦の白い悪魔じゃないよ。

                  序章 第1話

                強運でございますか?




 自分で言うのもあれなんだけど、あたしは結構完璧な人間だと思う。綺麗な顔、悪くないスタイル、成績もいいし、そして、何より、あたしは凄く優しい人なんだよ。


 お父さんの顔は一度も見たことがない、あたしが生まれる前に亡くなった。


 お母さんがあたしを一人で育てくれた。だから、お母さんのことをとっても大事に思っているよ。


 昔はよく男の子にからかわれた。気持ち悪い虫を見せられたり、スカート捲られたり、リコーダー舐められたりした、本当に大変だった。でもね、これはみんなに愛されている証拠だってお母さんが言ったのだ、暖かい笑顔で返せばいいよって。


 人を助けるのも好きよ!まぁ、困った人に肩を貸す、お金や食べ物をあげるくらいけどね。


 友達はあまりいない。あたしが本を読んでいる時は近寄り難い雰囲気を出しているって親友の桜子に言われたことがある。


 委員長としてもよく働いているって先生からも褒められたし、お母さんを少しでも楽するために、一生懸命にアルバイトをしでいるし。


 欠点らしい欠点はない。


 そんなあたしだけど、ある日を境に運がよくなった!


「ねぇ!桜子、あたしはね、最近運がよくなったの」

「へぇ、あ!口に付いているよ。もう!あたしが居ないと本当にダメなんだから」


 桜子があたしの顔に付いているアイスを指で取った後、食べた。


「ちょっと、恥ずかしいよ、教えてくれれば自分で取るから」

「で、運がどうだって?」

「おみくじを引いたら必ず大吉が出るの、商店街の宝くじも必ず一等賞を当たるし、まぁ、ハワイに行ってもしょうがないけどね。あとは、財布を忘れた日に、必ずお金が拾えるくらいかな」

「へぇ、凄いじゃん!」

「でもね、あたしはそういうのあまり好きじゃないの。そう簡単にお金が手に入るなら、今までの努力はどんな意味があったの?アルバイトも、勉強も、貯金も、これら全部の意味も、喜びもなくなる。だから、あたしはもうおみくじを引かない、どうせ必ず大吉を引くから。あっ、お金を拾ったら、あたしがちゃんとお巡りさんに届けるからね」

「もったいないけど、すずらしいねぇ」


 そんなある日、クラスメイトと出かける予定があった。


 出かける為に着がえている途中でアルバイト先まで来るようにと連絡があったので、あたしの代わりに、桜子が誘われた。


 アルバイト先に到着したあと、連絡していないって言われた。変なの、と思ったけど、その時は別に気にしなかった、桜子のお母さんから桜子が交通事故で死んだと連絡が来るまではね。


 聞いた時はその言葉の意味がわからなかった。いいえ、多分受け入れたくないだけ、一瞬で頭が空っぽになった。


「いやいや、何言ってるの、そんなことある訳ない、あっていいはずがない、あってたまるもんか、だって、昨日も楽しく話をしたのに、あり得ない!」


 そうだ、桜子の携帯に電話をかける!


  「ねぇ!返事して!寝たの?早く返事してよ!!」


 冷静さを失ったあたしはすぐに家を飛び出した。


 桜子のお母さんに会って、これは嘘ではないと知った。そしたら、涙も、体の震えも止まらない、腰が抜けたみたいで、そのまま床に座り込んだ、立つ気も、その余裕もなかった。頭の中で桜子との思い出が何度も再生された。


 そして、いつの間にか、あたしは桜子の家で寝てしまった。


 桜子が亡くなって、あたしが学校に行けなくなってから、どれくらい時間が経っただろう。


 桜子の葬儀からの帰り道はいつもより静かだった。


そういえば、こんな時間で外にいるのなんて初めて。そうだ、これからは一人で下校するんだ。隣にうるさい桜子はもういない。一緒に弁当を食べる人も、カラオケに誘ってくれる人も、体育の授業であたしとペアを組む人ももういないんだ。


 横断歩道を渡る時、突然、、体が動かない、別に死にたい訳でも、悲し過ぎる訳でもないけど、体が動かなくなった。


 そして、体が動かない理由はなんとなく分かった、だって、こっちに向かっているトラックの運転席に、運転手なんていなかったから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ