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 そして地獄で何回も聞いた輪廻転生(りんねてんしょう)の話。これも夢の中の話だったのだろうか。

「輪廻の輪に戻ったあの人は、現世では赤ちゃんとして生まれる訳だから、きっと記憶はリセットされて、私の事は覚えてないよね」

 あれは夢だったと思いつつも、学校の図書館でちゃっかり輪廻転生を調べていたりする。

 由希子は地下鉄の駅への階段を下りる。

「地獄もこうやって自由に行き来できればいいのに」

 勝手都合な事を考えながら階段を下りていると、視界の端に白のシャツと青いジーパンが映った。由希子の瞳は見覚えのあるシャツとジーパン姿の男を見据える。

「あ!」

 階段を下りる由希子の足が早くなる。

「夢じゃないかも」

 男の胸には翡翠の曲玉もある。

「夢じゃない」

 由希子が男の前に来た時、男は笑顔で口を開いた。

「よう、久し振り」

 出会った時と変わらない姿の青年が壁にもたれて立っていた。

「なんでここに?」

 青年は苦笑いを浮かべる。

「オレに刑を科したある明王が、事もあろうに厄介(やっかい)な悪鬼を現世に逃がしてしまってね。本来なら輪廻の輪に加わるべきオレだが、明王の依頼でその悪鬼を捕まえに来たって訳」

 由希子の顔に笑顔が戻る。

「それ本当なの?」

「何を喜んでるんだよ」

 青年の顔が険しくなる。

「オレが捕まえに来た悪鬼はあんただよ」

 青年は由希子の腕を掴む。

「え!」

 由希子の喜びが一変して恐怖に変わる。

「まあ、捕らえるのは涙鬼になって悪さをしてからだが」

 青年は由希子を引き寄せると抱き締めた。

「それまでは、由希子を見守ってやれってさ」

 由希子は青年に言われて眼に涙を浮かべる。

「そういう事は先に言ってよ。お願いだから」

 全身の力を抜くと青年に身を委ねた。


  終

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