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 今度は美形が四人。地面に素足がつくと早速由希子に近づく。

「この()ですか」

「巫女にも見えませんね」

 青年は口を開いた。

「おい明王、どういう事だ」

 空から降りてきた四人は明王達のようだ。

 童子(どうじ)の一人がどすの利いた声で言う。

「呼び捨てるとは、なんと無礼な!」

「よい」

 明王の一人が手を肩まであげて、童子を制止する。

「いや不動君がね、この娘の事を言うのでね」

 四人の明王はそう言って顔を見合わせる。

「あなた方は、私の決定が気に入らないのですか?」

 と、今度は空から声がした。

 由希子はまた空を見上げる。その声の主は一人で空に浮き、また光に包まれて降りて来る。

「あれが不動明王だ」

 青年は由希子に言う。

 由希子は地面に素足をつけた不動明王を見て「キャー、カッコイイ」と心の中で叫んだ。

 不動明王は由希子に近づく。

「実は弥勒君から君を現世に戻すように頼まれまして。でも君はここにいる事を望んだ訳ですし、私達の間で君を現世へ戻すかどうか意見が分かれてね」

 由希子が半信半疑で聞いていると、不動明王はにっこり笑顔になる。

「いろいろな意見が出ましたが、結局、ぼくが現世に戻すって決めちゃった」

 四人の明王が不動明王の横に並ぶ。

「いつもの事ながら、その不動君の強引さ。なんとかして頂けませんか?」

「僕は不動君と同意見だよ」

「彼女を戻すなら、せめて地獄での記憶を消してからでないと」

「地獄に来た者を、輪廻の法則に反して、現世に戻すのはどうかと」

 四人の明王は、まだ不動明王に意見している。

 由希子は目が点になった。明王といえば威厳に満ちた神の姿が思い浮かぶ。だが、目の前にいる明王は美形のアイドルにしか見えないからだ。

 神父が由希子に言う。

「あなたは、我が(しゅ)だけでなく、ほかの神からも愛されているのですね」

「え!?」

 由希子は神父の顔を見る。

「もしかして、私はパパとママの所に戻れるの?」

「そうみたいです」

 神父は由希子と眼が合い微笑む。

「由希子さん」

 今度は不動明王に呼ばれ、由希子は見上げる。由希子に不動明王の手が近づく。不動明王は、今から由希子を現世に戻すつもりのようだ。

「ちょっと待って。戻る前に、私、聞きたい事が」

 だが、由希子の意識は遠退(とおの)きはじめる。由希子は手を伸ばして不動明王の納衣(のうえ)を掴んだ。

「お願い待って」

 この言葉を最後に、由希子は気絶した。

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