九十一話
五つ目の遺跡5階
メリアから離れ黒いロボットを見据えるアリーシャ、薄く微笑むと黒いロボットの右腕が突然燃え上った。
「チッ!」
黒いロボットは慌てて右腕を切り離すとすぐにその場を離れる、数秒後右腕は爆発した。
「!」
そして黒いロボットが前を見るとそこには既にアリーシャがおり、アリーシャは上から強烈な踵落としを食らわせる。
「ふふ」
地面に降り立ったアリーシャは次に左手に炎の剣を出現させると、黒いロボットの両足を斬り裂いた、足を斬られた黒いロボットは前のめりに地面に落ちて行くが、そこに槍状の火柱が上がり黒いロボットの胴体を貫いた。
「まさか俺の機体が壊されるとはな・・・」
機体を破壊される前に脱出していた黒いロボットの中にいた黒い人形はそう言うと腰に装備している剣を抜く。
「出来れば見逃して欲しいのだが」
勝ち目は無いと判断している黒い人形は出来れば見逃して欲しいとアリーシャに言うが
「それは無理なご注文ですわね、私の生まれ変わりつまりは私である、この子の体を汚した者の仲間であるあなたを許したりしませんわ」
アリーシャは拒否する。
「そうか、ならば戦うとしようか!」
「ふふふ、精々私を楽しませて下さいな」
そしてアリーシャと黒い人形は同時に斬りかかるがその真ん中に白と金色のロボットが降り立ち邪魔をする。
「あら?私の戦いの邪魔をするなんて無粋ですわね、消え失せなさい?」
楽しい戦いの邪魔をした事に怒ったアリーシャは白と金色のロボットに手を向ける、すると白と金色のロボットが居た場所が爆発した。
「・・・」
しかし白と金色のロボットはアリーシャの強力な爆発魔法に無傷で耐えていた、そして黒い人形の方に向くと彼に話しかける。
「行って、あなたじゃこの人には勝てない」
「何者だ」
「良いから早く」
「・・・分かった」
黒い人形は白と金色のロボットに言われた通り転移して行った、それを見たアリーシャは目の前にいるロボットを睨み付ける、戦いの邪魔をした事に本気で怒っているのだ。
「怖い怖い」
白と金色のロボットはそう言うとアリーシャに向けてビームを放つ、アリーシャは軽く弾く、すると目の前に白と金色のロボットの右足が迫っていたので軽く左手で受け止める、そして右手で炎の槍を出現させると人型が居そうな胴体に火の槍を投げるがその攻撃も装甲に弾かれる。
(さっきの者達には私の攻撃は通じたでもこの者には効かない、ならば)
アリーシャは右手に次弾として出現させていた火の槍を消すと取り敢えず近くの左手で受け止めている、右足を右手で殴った、すると
「くっ!」
白と金色のロボットの右足が消し飛んだ、どうやら物理攻撃は効くようだ、そして右足を破壊された白と金色のロボットは立っていられず地面に倒れた、それを見たアリーシャはゆっくりと白と金色のロボットの元に近付いていく。
「あーあ、折角の新品なのになぁ」
白と金色のロボットのコクピットが開くと内部から少女の声が聞こえた、中に居る者はコクピットの外に出るとアリーシャを見据え銃を構える。
「!?」
そしてその者の顔を見て驚いた表情を見せたのはメリアだ、その者に向けて手を向けるアリーシャの元に走ると
「待って!」
アリーシャの手を取り攻撃を止めさせた、そして白と金色のロボットの胴体にメリアは飛び乗る。
「アリア・・・アリアなの!?」
中から這い出して来た者の肩を持ちメリアは大声で話しかけた。
「ふふふ、そうだよぉ〜久し振りだねぇお姉ちゃん、どう?この姿似合う?」
そして中に居た者はメリアの手を払うと自身の姿をメリアに見せ付けるように一回転した。
「何でそんな姿に・・・何があったの!アリア!」
そんなアリアにメリアは何があったのか聞く。
「教えな〜い、一つだけ言える事は私はお姉ちゃんの敵って事かな」
そう言うとアリアはメリアに向けて剣を振り下ろす、メリアは盾で受け止めて、更に言葉をアリアに掛ける。
「どう言う意味なの?」
アリアが何を言っているのか分からないメリアは妹に説明を求める。
「はぁ、お姉ちゃんって相変わらず馬鹿だね、簡単に説明すると、私は機械の兵士達に誘拐されました、そしてこの体に改造されちゃいました、そして私は機械の兵士達の仲間になって人間を皆滅ぼすつもりです、こーんな所かな?」
「・・・人間を滅ぼすって、どうしちゃったの?アリア、あなたはそんな事を言う子じゃ無いよ!」
妹アリアの事を良く知るメリアは妹がこんな事を言う少女では無い事は良く知っている、だから何がどうなっているのかさっぱり理解出来ないのだ。
「ただ、こーんな事を言う子になっちゃっただけですよー」
「アリア!」
このまま姉妹で話させていても何にも進展しませんわねと思ったアリーシャは、自分も白と金色のロボットの胴体に乗った。
「げっ!お姉ちゃんみたいな雑魚はともかく、あんたはマジでヤバイ!、それじゃまたね!お姉ちゃん!」
アリーシャがすぐ側に来たことに明らかに焦った表情を浮かべたアリアは姉にそう言うと、逃げるようにして転移して行った。
「・・・」
「何で、アリア、どうして・・・」
アリアが転移して行った後には何だ戦うんじゃないのかと残念そうな表情を浮かべるアリーシャと、手を地面に着き何故妹があんな事になっているのかと絶望するメリアが残されていた。
ワールドセイバーベースキャンプ
メリア達ワールドセイバーはあの後歌を無事回収した、しかしベースキャンプのとある部屋には椅子の上に顔を下に向け三角座りで座るメリアと、足を組んで偉そうに座りシュルクをまるで小間使いのように扱うアリーシャと言う光景があった、シュルク以外の仲間達はただこの訳の分からない状態にボーゼンとするしか無い。
「メリアは今は話せそうに無いし、取り敢えず明日奈だ、お嬢さん単刀直入に聞くぞあんたは誰だ?」
メリアは暫く駄目そう、ならば先に話せるのはアリーシャだと判断したギルダーツは取り敢えずアリーシャに何者なのか聞いた。
「ん?私?私は誇り高き魔神アリーシャ・メル・ベリクリオスですわ!安心なさい!あなた達は私の奴隷として丁重に扱ってあげますわ!」
何者かと聞かれたアリーシャはよくぞ聞いてくれましたと誇らし気に胸を張り名乗った、そして問題発言もした、ギルダーツはそれなりに素直な元部下である明日奈がなんか面倒な奴になったぞと思い頭痛がしたので頭を押さえる、そんな時明日奈の刀神月から声がした。
『全く・・・やはり明日奈ちゃんの中に居て、そして復活したのですね・・・アリーシャ』
仲間達は突然言葉を発した明日奈の刀に驚き一斉にそちらを向く、そんな中で一番驚いた表情を浮かべているのはアリーシャだ、良く見るとその体は震えている。
「そ、その声は・・・まさか桜!?」
『はい、私です、桜です、相変わらずですねあなたは』
刀は震えるアリーシャに近付いて行くと、その鞘で思いっきりアリーシャの頭を叩いた。
「痛い!何をするのです!」
『何をするって全く反省してないあなたに怒っているのです!あの時あれだけ反省するように言ったでしょう!』
「あなたに体を刀で刺し貫かれて死にかけの状態であなたが何を言っていたのかなんて聞こえてる訳がありませんわ!」
仲間達はアリーシャの言葉を聞きそりゃそうだと思う。
『フン!聞いてないあなたが悪いのです!』
「・・・」
アリーシャは桜の物言いに呆れ何も言えなくなった。
『まぁそんな事よりも魔界には自身に勝った者の言う事を二つだけ聞くと言う制約があるそうですね』
「ええ、まぁ、そうですわね」
『ならばあなたはこの者達を奴隷では無く仲間として扱いなさい、そしてこの者達をあなたの力を使い守りなさい、以上!』
二つの決まり事を約束されさせそうなアリーシャは露骨に嫌そうな顔をするが、アリーシャは魔界の制約を尊重するタイプであり嫌とは言えない。
『良いですね?』
「ええ、分かりましたわ、嫌ですけど分かりましたわよ!」
アリーシャはかなり嫌々桜との制約を了承した。
『それでその体は明日奈ちゃんの物、返してあげて下さいな』
「それは無理ですわ、あの子は今物凄く良く眠っていますわ、だから今は返してあげる事は出来ませんわ」
ちなみに明日奈が眠っているのは本人の願望を忠実に再現した超高級ベッドだ。
『そうですか、ならあの子が起きたら体を返してあげて下さい』
「・・・ええ」
アリーシャは少し微妙な反応だが桜の頼みを了承する。
『さて、それでは私はまた眠ります、ご機嫌ようです、アリーシャさん』
「ええ、ご機嫌よう桜」
そして刀(桜)は地面に落ちた、アリーシャはその刀を持つとへし折ろうとしたが、刀から殺気を感じたのですぐやめる。
「それではかなり不本意ですけど、あなた方に協力してあげますわ、取り敢えず美味しい食事、綺麗なドレス、広い部屋を用意なさい、それならばあなた方の言う事を少しは聞いてあげますわ」
アリーシャは仲間達の方に向き直るとかなり偉そうに言う事を聞いてやる条件を言い放った、その顔は何故か誇らし気である。
「わ、わかった用意しよう」
ギルダーツは仕方無しにアリーシャの言う事を聞く事にする、と言うかこのタイプは言う事を聞いておかないと面倒な事になるのは分かりきった事などで素直に聞いた方が良いのだ。
「よろしい」
ギルダーツの言葉にアリーシャは満足気に頷くと黙る、もう喋る事は無いらしい。
「次はメリアだ、あれは誰だ、お前の何だ、言ってみろ」
次はウィリアムがメリアに質問する、ウィリアムに話しかけられたメリアは顔を上げるがその顔は涙に濡れている。
「あ、あの子はね私の妹なの、でも機械の兵士になっちゃってた、何であんな事になってるのか私、分かんない」
そしてメリアはまた泣き出す、アリーシャはそんなメリアを黙ってジッと見ている。
「そうか」
ウィリアムは泣くメリアの頭を優しく撫でる。
「・・・」
ワンワンと泣くメリアにアリーシャはスタスタと近付くと、その涙に濡れる顔を上に上げさせ、そして
「!?!?」
キスをした、そんな光景を見て仲間達は唖然とする。
「泣いてる男にも女にもキスが一番ですわ、ほら涙は止まっていますわ」
そしてアリーシャはメリアから離れると椅子に座りまた偉そうに足を組む。
「・・・」
アリーシャにキスをされたメリアは他の仲間達同様唖然としていたが、やがて気を取り戻すと頬をパンパンと叩く。
(以外と優しい人なのかな?)
メリアはアリーシャの方を見てそう思いつつ立ち上がる、そして
「私アリアともう一度会う!そしてもう一回話をする!だから皆、あの子に会う為に力を貸して!」
メリアは仲間達に手のひらを向ける自分一人では恐らく妹を会う事は出来ないだろう、しかし仲間達と一緒ならまた会える気がする、だから仲間達に手のひらを向けるのだ。
「あぁ」
まずはシュルク、そして白花、ウィリアム、ギルダーツ、ミランダが順番にメリアの手のひらに手を合わせた。
「皆ありがと」
「良いさ、仲間だからな」
「うん!」
メリアは自分に笑いかけてくれる仲間達を見て微笑み返す、そして決意する、妹に何があったのかは分からない、しかし何があったとしてももう一度妹と話をすると。
「・・・」
アリーシャはそんな人間達の様子に目もくれずただ窓から外を眺めていた。
ここから暫くの間主人公がメリアに変更となります




