表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の九尾ll アンダーワールド  作者: ブレイブ
四章三部アンダーワールドよ!私は帰って来た!
80/267

七十九話

サムロット王国ミミッチ村

朝、目を覚ました明日奈は気持ち良さそうに伸びをした、そして机の上に出していた地図などの自分の持ち物を全てバックパックに仕舞うとバックパックを腰に付け、寒冷地用の服を着込み部屋の外に出た。


部屋の外に出た明日奈は朝食を食べてから宿を出た、現在はミミッチ村の南側の門に向けて歩いている。

南門に向けて歩いていると南門の周辺に集まる住民達の会話が耳に入って来た、明日奈は立ち止まりその会話に耳を傾ける。

「どうする?みんな昨日から帰って来ないぞ」

「しかし剣も扱えない俺達ではあそこまでは行けんよ、どうしたものか・・・」

話を聞くと住民達は何かお困りのようである、明日奈は取り敢えず住民達に何があったのか聞いてみる事にする。

「どうしたの?」

少しぶっきら棒な聞き方である。

「あんたは?」

「こう言う者よ」

住民に誰だと聞かれた明日奈は自分の冒険者カードを住民に見せた、これで明日奈がどういう人物なのか住民達に分かるはずである。

「冒険者か、それで?俺達が助けてくれと言ったら助けてくれるのかね?」

「ええ」

「報酬は?」

「無料でいいわよ」

現在お金には困っていないので報酬は無料で良いと言った、お金に困っていたとしたら勿論ちゃんとお金は貰う。

「・・・少しこちらで話し合いをせてくれ」

「うん」

そして住民達は明日奈から少し離れて話し合いを始めた、恐らくは彼等の困り事を明日奈に任せるかどうか話し合っているのだろう、明日奈は彼等が話し合っている間、尻尾をユラユラと揺らしつつミミッチ村の風景を眺める。

「こちらの話は終わった、あんたにうちの村の冒険者の救援依頼をしたい、頼めるか?」

「勿論」

「ありがとう、それでは依頼内容を話う・・・」

住民の一人の男は明日奈に依頼内容を話した。



リリッチ地方リハ平原

住民達から依頼を受けた明日奈はリリッチ地方リハ平原を歩いていた。

住民達が明日奈に依頼した内容はリハ平原の東側にある洞窟にミミッチ村の冒険者達が鉱石を取りに向かったのだが帰って来ないので様子を見に行って貰いたいとの事だった。

地図に洞窟の大まかな場所を記してもらった明日奈はその洞窟に向けて一直線に向かっている。


「やん!」

可愛らしい悲鳴が雪原に響く、まだ深い雪の中を歩くのに慣れない明日奈が顔から雪に向けて転けたのだ、転けた明日奈は非常に不機嫌そうな顔をしつつ立ち上がると顔や服に付いた雪を払ってからまた歩き始める

「本当歩きにくいったらありゃしない!」

と文句を言いつつ洞窟に向けて明日奈は歩いて行く、たまに感じる魔物の視線を無視し、こちらに魔物が近付いて来る気配を感じると思いっきり魔力を発する事で追い払いつつ明日奈は前に進む



「・・・」

そして不機嫌な顔をした明日奈はようやく辿り着いた目的地である洞窟を見付けると、中に入って行く。

『光よ、私の尻尾の先に光を灯しなさい、光の歌』

洞窟の内部は暗い、明かりが欲しくなった明日奈は尻尾の先に光を灯し松明代わりにする事にした、この光は暗い洞窟でも10メートル先まで見えるようになるので非常に便利である、反面かなり明るいので洞窟の中に居る魔物にこちらの存在が確実に気付かれるようになるだろう。

「ガァァ!」

早速洞窟の中に居るアイスウルフが襲って来た、狐の耳で足音を捉えていた明日奈は落ち着いてその攻撃をかわすと、歌を歌う。

『鎖よ!私の敵を捉えなさい!拘束の歌!』

明日奈が拘束の歌を歌うと、アイスウルフの足元から鉄の鎖が飛び出しアイスウルフを拘束した、飛び出して来た鎖はかなり強固であるようで、アイスウルフが必死に暴れても壊れる事は無いようだ。

「この洞窟を出る時に解放してあげるわ、それじゃまたね」

明日奈はまだ脱出しようと暴れるアイスウルフにそう言うと、洞窟の奥に向けて出来るだけ早足で進んで行く。



道なりに進んでいると戦闘の音が聞こえて来た、恐らくはミミッチ村の冒険者達だろう、明日奈は走って音が聞こえる方向に向けて走る。

「もう駄目だ・・・」

夜通し戦い体力が尽きた者から戦えなくなって行くという状況の中最後まで戦っていたミミッチ村の冒険者の一人が力尽き倒れた、ミミッチ村の冒険者達に勝利した六匹のオーク達は五人いる冒険者達を殺そうと斧を振り上げ近付いて行く。

「シネ!」

オークの一匹が最後まで戦っていた冒険者に向けて斧を振り下ろした、しかしその斧はカン!と音と共に見えないシールドのような物に阻まれる。

「盾の歌よ、オークさん」

そして不思議そうに見えないシールドに首を傾げるオークの後ろに着いた明日奈は、剣をオークの背中に突き刺した、背中から刀に刺し貫かれたオークは血を吐き倒れ絶命する。

「キサマ!ヨクモナカマヲ!」

「コロス!」

仲間の一人を殺されたオーク達は明日奈に向けて怒りの言葉を発した、明日奈はその言葉に怯む事は無い、ただ静かに刀を構えオーク達の動きを見つめている。

「ウオォォォ!」

オークの動きを見つめていると、オークのうちの一匹が明日奈に向けて突進して来た。

「・・・」

明日奈は落ち着いて迎え撃つ、突進する事で猛烈な勢いを付けたオークはその勢いのまま明日奈に向けて斧を振り下ろした、明日奈はそれを左に回転しながら回避し、回転したままオークの首を斬り落とした、そして再び静かにオークの様子を見据える。

「ナ、ナンダコノニンゲン」

「マトメテカカッタホウガヨサソウダ」

「ソウダナ、マトメテイクゾ!」

明日奈をかなりの実力者だと判断したオーク達は一斉に斬りかかってきた、それを見た明日奈も剣を構え四匹のオーク達に向け走る。


まずは戦闘に立つ一匹目、首を狙った斧による斬撃を少し屈む事でかわした明日奈は刀を首に刺し込む事で殺した

「ウオォ!」

二匹目のオークはいきなり斧を投げて来た、明日奈は斧をかわすと殴りかかって来るオークの拳を左手で受け止めた、そして一度剣を仕舞うとまずは右ストレートをオークの顔に浴びせ、そして次に左膝による顎に向けた一撃、次に左フックを加えた、その三発の攻撃によりオークは気絶し倒れた。

「次」

三匹目のオークは思いっきり地面を蹴り砂を撒き散らす事で明日奈の目を潰そうとした来た、だがそれを予測していた明日奈は目を瞑る事で目潰しから目を守った、しかし目を瞑る事で隙が出来てしまう、その隙を突き明日奈のすぐ側まで接近したオークは明日奈に向け出来て斧を振り下ろした。

「ガ!?」

しかしオークが斧を振り下ろし切る前にオークは脳天を銃弾に撃ち抜かれ絶命した、明日奈の魔法銃に脳天を撃ち抜かれたのだ、目を瞑っていても明日奈はその優れた狐の耳で敵の大まかな場所を把握していた、後は敵が居るであろう場所に腰に装備している魔法銃を撃ち込むだけで良い、しかし頭にその銃弾が当たったのはたまたまである。

「キサマァ!」

仲間を全て殺され怒り狂っているオークはその怒りに身を任せ全力で斬りかかってくる。

「仲間を殺した私が憎いの?でもね、私も怒ってる」

明日奈はそう言うと振り返り倒れる五人の他に三人の絶命した冒険者達を見て悲しそうな表情を浮かべる、そして斬りかかって来るオークに手のひらを向ける。

「思い知りなさい!死んで行った人達の痛みを!光よ!私の手に集い敵を焼き尽くせ!光の歌!」

光の歌を歌った明日奈の手のひらから光のレーザーが発せられた、そのレーザーはホーリーブラスターに似ている、そしてレーザーは迫り来るオークを飲み込むとオークを消し炭にした。

「・・・ふぅ」

オーク達に勝利した明日奈は一度息を吐き息を整えてから倒れている男達に近付いていく。

「大丈夫?」

「あぁ・・・大丈夫だ」

「そう、ごめんなさい間に合わなくて」

「あんたは謝らなくて良い、あんたが来てくれたお陰で俺達は五人生き残る事が出来たのだからな」

男はそう言うと耳をペタンとさせ顔を伏せている明日奈の頭を撫でた、明日奈はそれでも顔を伏せたまま悲しそうな表情を浮かべている。

「さぁ洞窟を出よう」

「ええ・・・」

男達五人は死んでしまった仲間を背負うと明日奈と共に洞窟の出口に向けて歩いて行った。



洞窟の外に出た明日奈は冒険者達にこのまま次の町に向かうと伝えた、男達は明日奈に手を振り見送ってくれるようだ。

「お嬢ちゃん!ありがとう!」

次の町に向けて歩いて行く明日奈に冒険者達は感謝の言葉を伝えた、それを聞いた明日奈は振り返り手を振り返す。

「命を全て救う事なんて出来るわけないのは分かってる、でも辛いものは辛いね・・・」

降りしきる雪の中、明日奈は死んでしまった三人の冒険者の冥福を祈り、祈りを天に捧げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ