七十三話
明日奈の自宅
朝、玲狐が明日奈の自宅にやって来た
「明日奈様、桜様がお呼びです、至急桜様の館に向かって下さい」
と言うなり玲狐は帰って行った
「・・・いきなり何なの?」
ソファに座り雑誌を読んでいた明日奈はいきなり現れて言いたい事だけ言って帰って行った玲狐を見てポカンとしていたが、取り敢えず桜の館に向かってみる事にした
天上界
天上界に転移した明日奈は桜の館に向けてのんびりと歩いている
「ん?」
明日奈は後方から何かが飛んで来る音がしたので振り返る、そこには
「・・・」
看板だけが動力も無さそうなのに何故か空を飛んでいるという光景があった、明日奈はそれを見てまた例のアレが来たのかと呆れた表情をしている
看板だけで飛んでいる面白物体君は明日奈の真上にまで来ると急降下し地面に突き刺さった、これで本来の看板の姿になったのである
「さてと、壊すか」
明日奈は例のアレが喋り始める前に破壊しようと拳を振り上げるが、看板はそうはさせまいと変形を開始した
ピーと地面に突き刺さった看板から音がしたと思うと、四方から何やら追加パーツらしき物が飛んで来る、そして四方から飛んで来たパーツ達は突き刺さっている看板を爆破するとピカーと光り合体を始めた
『看板合体!』
「突き刺さった看板は一体何だったのよ!」
四つのパーツは頭、腕、脚に変形すると一つに合体した、合体したその姿は巨大な戦隊ロボットに似ている、そして合体し現れた身長20メートル位のロボットは剣を抜き、腹にあるモニターに文章を表示した
『久し振りだな!お嬢ちゃん!俺だ看板君MK-178だぜぇ!今日こそはお前を倒してやるぜぇ!』
例のアレとは看板君の事であった、看板君とは明日奈が天上界にやって来ると何故か必ず喧嘩を売って来る看板であり、何故か明日奈を一方的にライバル扱いしている
「・・・ホワイトローズ?ほーりーぶらすたーじゅんび」
『いえす』
モニターの表情を見た明日奈はやる気が無さそうな声でホワイトローズをプラスターモードに変形させ、ホーリブラスターの準備をホワイトローズにさせる
『待て待て!お嬢ちゃん、熱い戦いをしようぜぇ?』
「・・・」
熱い戦いをしようと言う看板君MK-178の表示を無視した明日奈はホーリブラスターを発射した
『こんな物かわしてやるぜぇ!』
看板君MK-178はそう表示すると背中のスラスターを吹かし飛ぼうとするが、明日奈は看板君MK-178が空に飛び上がる前にシールドを槍状に形成した物を飛ばし、看板君MK-178の足に突き刺し地面と足を固定し看板君MK-178が飛べないようにする
『ちょっ!これ飛べないぜぇ?酷いぜぇ?お嬢ちゃん!』
飛べなくなった看板君MK-178は迫るホーリブラスターを胴体に喰らい、ドカーンと大爆発した
「さてと、行きましょうか、ホワイトローズ」
『Yes、あの・・・マスター、私もああ言う物に変形してみてもよろしいですか?』
ロマンを追求するタイプのホワイトローズは巨大合体ロボットというロマンを看板君MK-178を見て感じ、明日奈に同じような感じのロボットに変形してみても良いか聞く
「やめて」
『Yes』
だが明日奈は勿論ホワイトローズの提案を拒否し、ホワイトローズもそれを承諾し、明日奈はまたのんびりと桜の館に向けて歩いて行く
桜の館
桜の館の前までやって来た明日奈は玄関のドアをコンコンとノックする、するとすぐにドアが開き館で暮らしている住民に抱き締められた
「良く来てくれましたね、明日奈ちゃん、お婆ちゃんは感激です」
「こんにちは、お婆ちゃん」
桜に抱き締められている明日奈は嬉しそうな表情をしている
「それで今日は一体何の用なの?お婆ちゃん」
そして明日奈は早速桜が自分をここに呼んだ理由を聞く
「ふふふ、それは中に入ってから話すとしましょう、さぁこっちです」
「うん」
明日奈は桜に手を引かれ桜の館の中に入って行った
桜の館、客間
明日奈を客間まで案内した桜は明日奈に座布団の上に座るように言うとお茶を持ってきますねと言い客間を出て行った、そしてお茶とお菓子を乗せたお盆を手に持って客間に戻って来ると用件を話し始めた
「それでは今日ここに可愛い孫を呼んだ理由を話すとしましょうか」
「うん」
「明日奈ちゃんをここに呼んだ理由は明日奈ちゃんの中に存在する、無の巫女としての力の事について話す為です」
「私の無の巫女の力の事?」
「はい」
明日奈は良く考えてみると自分の無の巫女の力の事についてほぼ何も知らないので集中して桜の話を聞こうと思った
「一つ目は無の巫女の声には癒しの力があると言うこと」
「癒しの力?」
「そう、例えば傷付いた人の怪我を治療したり、病気を治したりなどです」
「私の声でそんな事が出来るの?」
「ええ、怪我や病気を治したい人物に触れながら正しい歌詞を歌えば、その人の怪我や病気を治す事が出来ます」
「ふぅん」
明日奈は思った、その力があればアンダーワールドへ戻った後の戦いで怪我をした仲間が居たとしたら何時でも治す事が出来そうだと
「二つ目は無の巫女の声は使い方によっては人を傷付ける事も出来るという事」
「それも正しい歌詞を歌えば発動するの?」
「はい」
覚醒した無の巫女が正しい歌詞を敵を攻撃すると言う目的で歌えば、敵を害なす力が発動する、例えば火の属性を持った歌詞を歌えば火の攻撃が発生する
「三つ目は無の巫女の声は強固な守りの力を発動させる事も出来るという事」
「それも同じ事だよね?」
「はい」
覚醒した無の巫女が守りの意思を持ち守りの力を持った歌詞を歌えば、強固な盾が現れ無の巫女が守りたいと思った物を確実に守る事が出来るだろう
「そして貴女達、無の巫女の歌は人々の心を癒す事が出来ます、明日奈ちゃんこれから人々が混乱し収拾のつかない事態となった時、暖かい心を持って歌を歌ってご覧なさい、貴女の歌によって人々は平静を取り戻し混乱は必ず収まるでしょう」
「暖かい心か・・・」
明日奈は暖かい心と言われ過去の様々な暖かい記憶を思い出す、そしてレビィやウィリアム、これから産まれてくるお腹の中の子供達、そして大切な仲間達を思うと自然に心が暖かくなった、これなら人々の希望となる歌が歌えそうだ
「これが無の巫女の力、理解出来ましたか?」
「うん」
「ふふふ、それではこれから貴女に歌を教えるとしましょう」
「お婆ちゃん、無の巫女の歌を知ってるの?」
「はい」
「そっか、ならよろしくお願いします」
「貴女がアンダーワールドと言う世界に戻る前に出来るだけ多くの歌を覚えましょう」
「うん!」
こうして明日奈は桜に無の巫女の歌を教えてもらう事となった
明日奈の自宅
桜の家を後にし地球に帰って来た明日奈が玄関を開けて中に入ると部屋の中から二人の少女の声が聞こえて来た
「C1ちゃん!なんで私のプリン食べちゃったの!?」
「良いじゃんまた買ってくればさ」
「良くない!お姉ちゃんと一緒に食べようと思ってたの!」
ちなみにレビィが買って来たプリンとは数人で食べる事前提のキングサイズのかなり大きなプリンである
「C1ちゃん!今から買って来てよ!」
「ふーんだ、しーらなーい」
「あらら」
このままだと大喧嘩になりそうだなと思った明日奈は早速無の巫女の歌の力を試してみる事にした
リビングに入った明日奈はレビィが初めてお姉ちゃんと呼んでくれた日の事を思い出し、その暖かい記憶を暖かい心に変え優しいメロディを歌う、すると明日奈の歌を聞いた言い合いをしていた二人が落ち着きを取り戻して行く
「ふふふ、落ち着いた?」
「うん」
「ん」
明日奈は落ち着いたと頷く二人の少女の頭を撫でると二人の手を引き立ち上がらせる
「さぁプリンを買いに行きましょっか、ね?」
「うん」
「はーい」
そして明日奈達三人はキングサイズのプリンを買いに家を出たのであった




