六十七話
ラデガ山
誇らし気に触手をユラユラさせている触手の主、体の至る所から触手の大元の本体はハエトリ草のような姿をしており、恐らくはその触手で明日奈の体の何処かを捉えたら直ぐ様捕食するつもりなのであろう
「さて・・・やるか」
明日奈はフゥと息を吐いてからスゥーと息を吸い込み意識を戦闘モードに切り替えた、そして剣を抜くと走り出した
触手の主は明日奈が動きに反応したのか触手を明日奈に向け放った、明日奈は迫り来る触手を掻い潜りながら接近し十分に距離を詰めると触手の主に突き刺した
「・・・」
剣を突き刺した所からブシュブシュと緑色の液体が漏れ出して来ておりかなり臭いが明日奈は全力で見なかった事と臭わなかった事にし、剣を突き刺したまま技を発動させる
「バーニングブレイド!」
見た目が草っぽいこの触手の主には火が効くだろうと思った明日奈は火属性の技を発動させた、すると剣を刺した部分から触手の主は燃え始める
「効いたわね」
『Yes』
燃え始めた触手の主から明日奈は離れる、触手の主は火に苦しんでいるのか触手をビタンビタンと暴れさせる
しかし中から燃えているのにも関わらず触手の主はまだ倒れないようだ、明日奈に燃えていない部分の触手を放って来た
「ホッ!」
だが明日奈はそれを横に飛んでかわした、次に左右から同時に迫るがそれはしゃがんでかわす
「ふふん、楽勝ね!」
触手の動きは明日奈にとっては遅いものだ、なので簡単にかわせる、その為明日奈は油断しており地面から触手が迫る音を聞き逃していた
「ヒャッ!?」
地面から飛び出して来た触手に明日奈は手足を絡め取られてしまった、明日奈はどうにか触手を外そうともがくが触手はきっちりと明日奈の手足を捉えており外れない
そして触手の主は一応弱点だったらしい火の攻撃をした明日奈に対しかなりの怒りを感じているようで痛そうなトゲトゲが付いた攻撃用の触手を明日奈の方に向けている、恐らくはトゲトゲの触手で明日奈を刺し貫くつもりなのだろう
「ッ!」
トゲトゲの触手を見た明日奈はどうにか触手から逃れようと更に激しく暴れるが触手は外れない、そして触手の主は明日奈に向けてトゲトゲの触手を放った
『シールド!』
トゲトゲの触手はホワイトローズが張ったシールドによって防がれた、しかし触手の主はシールドを破壊しようとガンガンとシールドにトゲトゲの触手をぶつける
(ヤバイ!ヤバイ!早く抜け出す方法を考えなきゃ!)
明日奈は慌てて触手からどうやって抜け出そうかと考えている、そして一つの方法を思い付いたので実行する
「・・・こう言う魔法は自信ないけど!ファイア!」
明日奈が考えた方法とはファイアで触手を焼き切ると言う方法だった、ファイアは焼こうと思った場所をピンポイントで焼く事も出来るので、右手を捉えている触手を焼き切り自由になった右手で持つ剣で触手を斬り拘束から抜け出すつもりだ
『マスター出来るだけ早く焼き切って下さい!シールド早く長くは持ちません!』
「分かってる!でもこう言う魔法は苦手なの!」
明日奈は弱くなったり強くなったり突然発動しなくなったりするファイアの魔法に四苦八苦しながら触手を焼いている
そしてシールドにヒビが入った所で触手を焼き切る事が出来、手足が自由になった明日奈は手足を拘束する触手を斬り裂いた、手足の拘束が解けた事により明日奈は重力に従い地面に落ちる
「ッ!」
明日奈が落ちた地点に触手の主はトゲトゲの触手を放つ、明日奈はそれを剣で弾くと手に光を灯した
「ホーリーレイ!」
ホーリーレイは圧縮された細い光のレーザーだ、触れた物を消滅させながら突き進み敵を殺す、圧縮された光のレーザーは一瞬で触手の主を貫く、明日奈は更に触手の主を包囲するイメージでホーリーレイを発動させ四方八方から触手の主を攻撃した
四方八方からホーリーレイに貫かれた触手の主はドーンと音と共に倒れ動かなくなった、どうやら倒す事が出来たようである
「ハァー、勝ったね・・・」
『Yes、かなり苦戦してしまいましたね』
「そうね」
触手の主を倒した明日奈は触手の主がまた動き出さないかと狐の耳を澄ませながら山を登って行く
触手の主を倒してから五分後、明日奈は飛んで頂上まで行ったら良いんだと思い、プラチナモードを発動させ空を飛んでいた
「うん、初めからこうすれば良かったね」
『ですね』
暫く飛んでいると、下からヒューンと音がした
「ん?」
その音に反応した明日奈が下を見るとそこには、何やら赤く点滅した岩がこちらに飛んで来ていた
「よっと、何あれ?」
『さぁ?』
明日奈は点滅する岩を軽くかわし飛んで行く岩の行く先を見守るすると、ドカーンと岩は大爆発した
「・・・」
明日奈とはその余りにも激しい爆発に驚き硬直する、そして硬直する明日奈を狙ってか連続で先程の岩が飛んで来た
『マスター固まっている場合ではありません!動いて下さい!』
「ハッ!」
明日奈はプラチナローズの声を聞き気を取り戻すと下から飛んで来る岩をかわしながら山の頂上に向けて飛ぶ、しかし明日奈が岩をかわせばかわすほど岩の弾幕は激しくなり、遂には前には飛べない程の岩の弾幕が張られ明日奈は下に降りざるを得なくなってしまった
「よっと」
地面に降りた明日奈はすぐに近くの少し周囲より低くなっている地面の人一人入れる位の地面の窪みに身を隠す、そしてそこから少し顔を出し辺りの様子を伺う
「・・・あれか」
明日奈はこちらに岩を撃って来ていた者の姿を見付けた、その者は岩に体を覆われた亀であり背中に砲台のような者が付いている、その名はウチオトースガメである
「私を探してるね」
『Yes』
明日奈は速い速度で森の中に飛び込んだ、その為ウチウチオトースガメ達は明日奈を見失ったようだ、ウチウチオトースガメ達は縄張りに入った明日奈を逃すつもりは無いようで明日奈が降り立ったこの周囲を探し歩き回っている
「うーん、あの砲台上にしか撃てないみたいだし走って抜けちゃおっか?」
『大丈夫でしょうか?』
「多分ね」
明日奈は地面の窪みから飛び出すと走り始めた、ウチウチオトースガメ達は明日奈が走る音を聞き付けこちらに向かってズンズンと歩いて来るがその足は遅い
「よし!これなら逃げ切れる!」
逃げ切れると確信した明日奈は頂上に向けて走る、走っていると目の前にいるウチウチオトースガメが急に横向きになったのを明日奈は見た
「なっ!?まさか!」
ドーン、横向きになったウチウチオトースガメはそのまま岩を明日奈に向けて発射した、しかも他のウチウチオトースガメも同じように同時に岩を撃ち出したのだ
(逃げ切れない!?)
四方八方から迫る岩に明日奈は退路を完全に断たれてしまう、この状況に対し明日奈が取れる行動は
「シールド!」
『Yes!』
シールドしかなかった、多数の岩は明日奈に迫ると次々と爆発する、明日奈のシールドは暫くは爆発に耐えていたが割れてしまった、激しい爆発の中明日奈は意識を失った
激しい爆発の後、一体のロボットが明日奈が爆発に巻き込まれた地点にやって来た
「!、まさかこんな所で目的の一つを見つける事が出来るとはな」
ロボットが見付けたものそれは明日奈だった、明日奈は爆発により酷い怪我をしてしまっているが、何とか爆発に耐え切り生きていたのだ
「この者をここまで傷付けた者はあれか、・・・俺でもあの数は不味い、ここは引くか」
ウチオトースガメを相手に戦うのは分が悪いと判断したロボットは気絶している明日奈を抱きかかえるとその場から飛び去った




