六十六話
グランラミス冒険者ギルド
朝、グランラミス冒険者ギルドから使いの者が来てギルドに呼び出された明日奈はその使いの者と共にギルドにやって来ていた、そして現在は明日奈は待合室で呼び出した張本人を待っている
「やぁ無の巫女様」
コンコンとドアをノックする音がするとドアが開き水の国シラーラのギルドマスターが入って来た
「・・・えぇこんにちは」
明日奈はもう明日奈が無の巫女だと分かっている事を隠そうともしないこの男に呆れたが何も言わない事にした
「それでタチの町の本部からこのグランラミスにギルドマスターであるあなたがわざわざ来たって事は歌の事で何か分かったの?」
「いや?」
明日奈はこの男がわざわざグランラミスまで来たのだから歌の事で何か分かったのであろうと思い歌の事で何か分かったのかと質問したが、ギルドマスターはあっさりと違うと言った、明日奈は違うのかよと椅子から落ちそうになった
「それじゃ何の用なのよ?」
「あぁ君を呼んだ理由は・・・」
ギルドマスターはわざわざグランラミスまで来て明日奈をギルドに呼んだ理由を話し始めた
「今の話を要約すると、そのラデガ山の頂上に急に観測された強力な魔力反応が何なのか私に調査をして欲しいって事?」
「そうだ」
ギルドマスターの話によると数日前タチの町にある冒険者ギルド本部の魔力観測士がラデガ山の頂上に急に強力な魔力反応が現れたとギルドマスターに報告した、ギルドマスターは早速その魔力反応の調査をする事にしたのだが
ラデガ山はSランクの冒険者でないと入ることすら許されない危険な山でありしかもタチの町の本部には丁度ラデガ山に向かわせる事が出来る程の実力を持つ冒険者は居なかった、なのでギルドマスターはSランクである明日奈にこの調査を頼みに来たのだ
「やってくれるかい?」
「えぇ良いわよ」
明日奈はこの調査依頼を受ける事にした、何故こんなにあっさりと受ける事にしたのかと言うと、このギルドマスターには何の代償もなくSランクにして貰った恩があるからだ
「そうかそれじゃ頼む、それとラデガ山には神である君一人で行った方が良い、君達はこの緊急事態だからSランクに昇格させたが正直君以外はSランクの実力を持っているとは言えないからね、だから余計な犠牲を出さない為にも君一人で行くんだ」
「・・・気に入らないわね、ウィリアムやメリアやシュルクや白花が弱いって事?」
仲間を弱いと言われ明日奈は怒った、ギルドマスターの言葉は明日奈には仲間を弱いと馬鹿にされたようにしか聞こえなかったのだ
「あぁ、今は弱い、しかし私の目が確かなら彼らは将来的に確実に強くなる、私はその目を失いたくは無いだから君に一人で行くように言ったんだ」
「分かった・・・」
明日奈はギルドマスター言葉がこの先にある戦いを含んだ言葉だと思いここは引き下がる事にした、勿論ギルドマスターが言った事に納得はしていない
「それじゃ頼むよ、ラデガ山はここから西に行った先にある山だ、地図も渡しておく」
「・・・えぇ、ありがと」
ギルドマスターから地図を受け取った明日奈は立ち上がると部屋から出る為、ドアに向かい部屋の外に出ると少しドアを強く閉めた
宿
「という事で私一人でラデガ山の調査に行ってくるわね」
「本当に一人で大丈夫?」
一人で行くと言う明日奈の言葉を聞いてメリアが心配そうな顔をして本当に一人で大丈夫かと聞いて来た
「うん、大丈夫、プラチナモードも使えるようになったしね」
明日奈は心配するメリアを安心させる為に優しく彼女の頭を撫で大丈夫だと言った
「明日奈、必ず帰って来いよよ」
ウィリアムは明日奈の頬に触れつつ必ず帰って来いよと言った
「うん」
明日奈は頬に触れるウィリアムの手に触れながら必ず帰ると頷いた
ラデガ山
前日笑顔で手を振り送り出してくれた仲間達とのしばしの別れを済ませた明日奈はプラチナモードを発動させ地図を頼りにこのラデガ山の近くまで飛んで来た
前日はもう暗かったので川を探し見つけた川の近くで野宿をし、現在はその翌日の朝であり、かなりの標高がある山を金色の九尾は見上げている
「尻尾がバチバチする・・・強い魔物の魔力を尻尾が感じているのね」
強い魔物の存在を尻尾を通じて確認した明日奈は気を引き締める、そして何時でも全力が出せるように尻尾を九本全て出すと山に足を踏み入れた
「ホワイトローズ、どんな反応でも良い、サーチで魔物の反応の確認をして貰える?少しでも魔物が私達に近付くようならすぐに知らせて欲しいの」
『了解です、マスター、サーチを常時発動させます』
ホワイトローズのサーチは魔力をそれなりに喰うがこの危険地帯ではこのサーチがあるのと無いのでは危険度が違う、何時でも魔物の接近を予測できるようにしておけば命を失う可能性を減らす事が出来るだろう
「それじゃ、お願いね」
『Yes』
明日奈は警戒しながら山を登って行く、頭の上の耳を澄ませ気配を探り尻尾のバチバチ度にも注意を払う、そうして歩いている明日奈の頭の中にホワイトローズの声が響く
『マスター下からの攻撃が来ます!前か後ろに飛んで避けてください!』
「了解!」
明日奈はホワイトローズに言われた通り前に大きく飛んで下から来るという攻撃をかわした、そして明日奈がいた位置から緑色の触手が飛び出して来た、触手は明日奈を捉えられなかったと判断すると再び土の中に引っ込む
「なにあれ?」
『さぁ?しかし止まっていればあの触手の餌食です!さぁ!走って下さい!』
「何かあんた最近偉そうね!」
明日奈は山の頂上に続く道を全力疾走で走り始めた、そんな明日奈の背中を追い掛けるように触手が地面から飛び出して来る
「イヤァァァァ!どうしたら良いのよこれ!」
明日奈は涙目で追い掛けるように地面から飛び出して来る触手から逃げる
『マスター、このまま逃げても一生追いかけられるだけと予測します、なので勇気を出して振り向きあの触手を掴んで下さい』
「ええー・・・嫌よ、あんなのを掴むの、気持ち悪い」
『掴んで下さい、一生追いかけられているつもりですか?』
「分かったわよ・・もう」
明日奈は勇気を出して急停止し振り向くとその良く聞こえる耳を澄まして触手が飛び出して来る位置を予測すると後ろに少し飛んだ、すると明日奈がいた位置から触手が飛び出して来たので明日奈は意を決して触手を掴んだ
「やっぱりベトベトしてる・・・」
明日奈は嫌なベトベトした感触に狐の耳をペタンとさせる
『身体強化、筋力を200%上昇させます、それではマスター!その触手の主を土の中から引っ張り上げてやるのです!』
「・・・やっぱり何か偉そうねと言うか何か昔より感情が豊かになってない?あんた」
『私は進化する剣の魂です!感情面も常にアップデードしております!』
「そう」
明日奈は掴んだ触手をグッと持つと身体強化により上昇した筋力で触手を思いっきり引っ張った、思いっきり引っ張ると触手の主が土を割り開きながら飛び出して来た、明日奈はそのまま触手の主を地面に叩き付ける
「でっかいね・・・ホワイトローズ」
『そうですね・・・』
物凄く立派な姿をしている触手の主に引いている明日奈とホワイトローズと触手の主の戦いが始まった




