六十四話
怪しい建物
黒いネズミのロボット達がチューチュー言いながら迫って来る、明日奈はプラチナローズを構える
「ハッ!」
プラチナローズを抜いた明日奈は先陣を切って走って来ている二体のロボットを斬り伏せた、三体目のロボットは顔を殴り飛ばすと顔がもげ彼方に飛んで行った
しかしネズミロボット達はこの施設の奥の方からゾロゾロと迫って来る、それを見て面倒臭くなって来た明日奈はプラチナローズをブレイカーモードに変形させる
『ライトニングブレイカー』
「発動!」
明日奈は大剣に変形させたプラチナローズに雷撃を纏わせると横向きに振るった、横向きに振るわれたプラチナローズからは雷撃の斬撃が飛びネズミロボット達を一網打尽にする
「良し、次行くよ」
『Yes』
黒いネズミのロボット達を倒した明日奈はロボット達が出て来ていた、扉に向かって歩いて行く
扉を越えて奥に進むと何やら管理室のようなモニターが沢山ある部屋に続いていた、途中下に降りる階段も見つけたが、この部屋が見えていたので明日奈は先にこちらの部屋に来る事にした
「ふーん、ここで遊園地に居る人を監視してたのね」
『そうみたいですね、私達が歩いて来た遊園地の様子が映っています』
モニターには明日奈が見て回った核施設が映っている、恐らくは先程のネズミ達がここで監視していたのだろう、この施設の前の様子もモニターに映し出されている
『マスター、コンソールが有ります、見てみたら何か分かるかもしれません』
「そうね、見てみましょう」
明日奈はプラチナローズに言われた通り、この部屋の中央の机の上にあるコンソールを調べてみる事にした、コンソールの前にある椅子に座ると電源を起動させる
「・・・」
明日奈はコンソールに書いてある内容を見て眉を顰める、コンソールには書いてあった内容が酷いものだったからだ、その内容とは
一つこのダンジョンは歌を手に入れに来た冒険者を監禁する物である、二つこのダンジョンは冒険者達にこの遊園地の夢を見せる、三つこのダンジョンは特有の催眠音波を流しており冒険者達に催眠をかけこのダンジョンから出ようと思わせないようにする、と言うものであった
「つまり私も夢を見せられてるって訳ね」
『今計測してみると確かに音波を計測できました、しかしマスターの神の力のおかげでその音波はマスターが正気を失わない程度に収められているようです』
つまりこの場所にシュルクやメリアがやって来たら見事に催眠されていた可能性が高い、ウィリアムは明日奈が神の加護を施した剣を持っている為効かない可能性が高い、しかし幾ら加護があると言えど長い時間ここに居れば催眠に掛かってしまうだろうが
「それでコンソールを調べてみたら、親玉はさっきの階段を降りた先に居るみたいよ、歌もそこに有るみたい」
『行きましょうマスター、人々をこんなふざけた夢から解放してあげないと』
「ええ」
明日奈は二度とこの部屋が使えないようにとモニターやコンソールを剣で全て破壊すると地下に降りる階段にまで歩いて行き、地下に降りて行った
怪しい建物、地下
明日奈が地下に降りてくると突如スポットライトが灯り明日奈を照らした、そして奥の方に居る者もスポットライトで照らされる、その者は黒い悪魔である鋭い爪を持ち、背中から羽を生やし、尻からは尻尾を生やしている
「やぁ、良くここまで来たね」
「あなたがこのふざけた世界の持ち主であり、歌の守護者ね?」
「そうだよ、僕の名前はララファ、このダンジョンに沢山の人間を閉じ込めている張本人さ」
やはりこの者がこのダンジョンの支配者であるようだ
「そう、ならあなたは私が倒させて貰うわ」
明日奈はこう言うと人々を閉じ込めている張本人であるララファを倒す為、剣を抜く
「出来るものならやってみると良いよ」
「やってやる!」
明日奈はダンジョンの守護者ララファに向けて斬りかかった
明日奈はララファに斬りかかる、ララファは左爪で明日奈の斬撃を受け止める
「プラチナイレイザー!」
剣をララファの爪で受け止められた明日奈は全てを消し去る能力を持った光の斬撃で受け止められた爪ごと左腕を消滅させた
「ッ!ヤバイね!その技!」
腕を消滅させられたララファはすぐに失った左腕を再生すると、今度は自分から攻撃を仕掛ける、まずは爪で斬りつけると明日奈に思わせフェイントをかけると、フェイントに引っかかった明日奈の首を尻尾で絞める
「どうだい?首を絞められるのは苦しいだろう」
「そう、ね!」
首を絞められている明日奈の顔は苦しそうだ、しかし明日奈はその苦しさを我慢しララファの腹に全力の蹴りを放った
「グホォ!」
腹を蹴られたララファは苦しそうに腹を抑え後退する
「ゲホッゲホッ、これ、で終わりよ!」
明日奈は咳をしつつララファに近付くと剣を振り上げララファを仕留めようとする
「ぐっ!」
仕留められそうになったララファは明日奈に向けて手をかざした
「お姉ちゃん」
ララファがかざした手が光った途端そこには白い少女がいた、その少女は明日奈を見ると涙を浮かべる
「・・・」
「お姉ちゃん!」
そしてレビィは明日奈に抱き付いた
「やっと会えた、ずっと探してたの、お姉ちゃん!」
「・・・」
明日奈は悲しそうな表情を浮かべずっと探していたと言う妹を抱き締める
「さぁ、お姉ちゃん、お家に帰ろ?美味しいハンバーグを作ってよ!」
レビィは明日奈から離れるとその手を引きいつの間にか変わっていた地球にある自宅のキッチンにへと明日奈を導いて行く
「今日は私も手伝うからね?お姉ちゃん」
「ええ、そうね、あなたは私が作るハンバーグが一番好きだったわね」
明日奈は今にも泣きそうな声で妹の好物の名を言った
「うん!私、お姉ちゃんのハンバーグ大好き!」
「ごめんね・・・」
明日奈は涙を流しながら妹に背を向けそして
「ララファ!」
このまやかしを見せている者に対して叫んだ
「おや呼んだかい?」
「・・・呼んだよ、私を本気で怒らせたお前の名をね!ホワイトローズ!プラチナブラスターァ!」
『・・・Yes』
今明日奈が一番大切にしている者それはレビィだ、ララファはそのレビィを使ってこんなまやかしを見せた、それは一番やってはならない事である、それをやってしまったララファは明日奈の本気の怒りを買ってしまったのだ、そして明日奈が本当にレビィを大切にしている事を知っているプラチナローズも怒っている
「ヒッ!」
ララファは本気の怒りを見せた明日奈にたじろぐ、恐ろしいまでの怒りを受けたその体は勝手に震え出し全く動かない
「消え失せろ!プラチナブラスター!」
『フルドライブ!』
そして怯えるララファに向け最大出力のプラチナブラスターを放った、怯えるララファは全く動く事も出来ずにその砲撃に呑まれ消滅し、プラチナブラスターはこの怪しい施設を半分程消し去った
「お姉ちゃん」
偽物のレビィは悲しそうな顔で明日奈を見つめている
「レビィ・・・」
明日奈は涙を流しその頬に触れる
「本物の私は私達のお家でずっと待ってるよ?だから早く帰ってあげてね?」
そう言うと偽物のレビィは笑い、小指を伸ばす
「ええ、約束する、絶対に早く帰る」
明日奈はレビィが伸ばした小指を自身の小指と結ぶ
「うん、大好きだよお姉ちゃん」
「私も大好きよ、レビィ」
こうして偽物のレビィは光となって消えた、明日奈は光となったレビィを見送ると膝を着き大声で泣いた
明日奈の自宅
本物のレビィは寂しそうな表情を浮かべアルバムに写る姉との思い出の数々を眺めている
「お姉ちゃん・・・」
レビィは泣きそうになる、しかしグッとそれを堪えるとワールドセイバーに向かう為の準備をしようと椅子から立ち上がる、その時だった
「えっ?」
レビィは確かにその手に姉の暖かさを感じた
(私は必ず帰る、だから頑張りなさい)
「お姉ちゃん・・・うん!私頑張るね!大好き!」
レビィはそう言うと元気よく家を出てワールドセイバーに向かった
明日奈は膝を着き祈っていた、責めて妹に自分の暖かさを届けようと
「うん、私も大好きよ・・・レビィ」
明日奈は涙を拭き立ち上がるとララファの魔法が解けただの遺跡となったこの場所の奥にある台座の元に向かう
「これが歌・・・」
明日奈は暫く手に入れた歌を眺めていたがバックパックの中に入れると大きな扉に向かった
第三十二遺跡
大きな扉を開け外に出ると広場に出た、そこには沢山の人々が居た、恐らくはララファに閉じ込められていた人々であろう、明日奈は人々が無事解放された様子を見て安堵した表情を浮かべる
「明日奈!」
明日奈が人々の様子を眺めていると急に何者かに抱き締められた
「メリア」
明日奈は抱き締めてきた者の名前を呼ぶ
「大丈夫だった?いきなり落ちちゃうから、心配したよぅ」
メリアは本当に明日奈を心配していたようだ、その顔には涙の跡がある
「うん大丈夫、心配かけてごめんね?メリア」
「そうだよ、本当に心配したんだからぁ」
メリアはそう言うとワンワンと泣き始めた、明日奈はそんなメリアを優しく抱き締める
「明日奈、俺は心配してなかったぞ、なんせお前だからな」
シュルクはそう言うと拳を突き出して来る
「ええ、ありがと、シュルク」
明日奈はそう言うとシュルクと拳を合わせた
「明日奈」
ウィリアムはただ明日奈の名を呼ぶ
「メリア、ごめん」
「あっ、うん」
明日奈の胸で泣いていたメリアは空気を読むと離れた
「ウィリアム」
明日奈もただウィリアムの名を呼び、彼に抱き付き涙を流す
「何かあったのか?」
ウィリアムは泣く明日奈の髪を優しく撫でながら何かあったのか聞く
「うん」
明日奈はウィリアムの言葉にうんとだけ答える
「そうか、明日奈顔を上げて俺の顔を見ろ」
「?」
ウィリアムに顔を見ろと言われた明日奈は首を傾げつつ顔を上げる、そしてウィリアムは泣いている明日奈に優しくキスをした、明日奈は少し驚いた様子だったがすぐに目を閉じ受け入れる
「涙止まったな」
「うん、ありがと」
 




